66.新しい出会い
「キノコ、美味しいけど二人じゃ食べきれないんじゃないか?」
俺が大翔に言うと、大翔はちょっと考えてから言った。
「そうだね……。じゃあ、明日は食堂のランチメニューにキノコ料理を出そうか?」
「いいな」
大翔は袋に入ったキノコを見つめて少し考えた後、ぱっと明るい表情になった。
「よし! 明日はキノコオムライスとキノコソテーのキノコセットを作ろう!」
「オムライスか。なら、玉子がたくさん必要だな」
「うん。ホワイトソースもたっぷりかけたいから、牛乳もたくさんいるかな。今からもう一度市場に買い物に行こう!」
「わかった」
俺たちは大きなかごとカバンを持って、市場に出かけた。
市場で牛乳と玉子を置いているのはエイダの店だ。俺たちはエイダを見つけると急ぎ足で近づいた。
「エイダさん! 牛乳と玉子がたくさん欲しいんだけど、まだありますか?」
「あら、大翔くん。今日は市場に持って来た分は売れちゃったのよね……。街の店にはまだあると思うんだけど……」
大翔はそれを聞いて、俺の顔を見た後、エイダに言った。
「そうなんですか? じゃあ、そっちに行ってみます」
「私ももう市場はおわりにするところだから、一緒に行く?」
「はい! あ、よかったら荷物をお持ちしましょうか?」
「じゃあ、お言葉に甘えようかしら」
エイダは市場の店を閉め、使っていた荷物を二つの包みに片付けた。
「これ、持ちますね」
「ありがとう」
「じゃあ、こっちは俺が持とうか?」
「うん、お願い、健」
「あら、私が持つものがなくなっちゃったわ」
エイダは目を丸くして俺たちを見ると、楽しそうにフフッと笑った。
「それじゃあ、着いてきてね」
「はい」
「なんだかお姫様になった気分だわ」
エイダは機嫌よく、街の食料品店に向かった。
「ただいま。いつも店番有難う」
「おかえりなさい、母さん! あれ? 荷物は?」
「おじゃまします」
「!」
店に入ると、少女がじっと大翔を見つめている。
「娘のリンよ。リン、挨拶しなさい。こちらは大翔さんと健さん」
「はじめまして、大翔です」
「はじめまして……」
リンは俺たちよりも少し幼い感じに見える。14歳くらいだろうか? 薄茶色の目を大翔からそらさず、頬を染めている。
「荷物は適当においてちょうだい。確か、牛乳と玉子が欲しいって言ってたわよね?」
エイダが店の奥に行き、大きな声で俺たちに確認した。
「はい。牛乳は18本、卵は45個くらい欲しいです」
「あら、そんなに? あなた達二人で持てるかしら?」
エイダは、奥から牛乳と玉子を運んで玄関扉の近くの台の上に並べていった。
「あの、こんなにたくさんの牛乳と玉子、何に使うんですか?」
並べられていく牛乳と玉子を見て、リンが頬を染めたまま大翔に尋ねる。
「明日のランチメニューに使うんだよ。あ、僕たち街はずれで食堂をやってるんだ。よかったら食べに来てね」
大翔がにっこりとリンに微笑みかけると、リンは首をぶんぶんと上下に振った。
戻ってきたエイダが、大翔に言った。
「全部で銀貨一枚ね」
「はい」
大翔は財布から銀貨を出すと、エイダに渡した。
「それじゃあ、ありがとうございました」
大翔と俺はかごとカバンに牛乳と玉子を入れると、店を出た。
「こちらこそ、ありがとうね」
エイダの脇で、リンが顔を真っ赤にして大翔に言った。
「あ、あの、明日、食堂に食べに行きます!」
「待ってるね」
大翔は無邪気な笑みでリンに手を振っている。
大翔は玉子の入ったかごを抱えて、帰り道を歩き始めた。
「リンって子、可愛かったな」
俺がそう言うと、大翔は目を丸くして俺に聞いた。
「健って、ああいう子が好きなの?」
「いや……そういうことじゃない」
リンが大翔に一目ぼれしたような気がしたが、あえて言うことでもないと思って俺は口を閉じた。




