6.試食
レンは調理室に入ると、驚きの声を上げた。
「凄いわね! なんていう料理なの?」
大翔はレンの迫力に負けて小さな声で言った。
「これがチャーハン、こっちがポークソテー、最後にデザートのプリンです」
「へー。 よくわからないけど、食べていいの?」
「はい、お願いします」
大翔はそう言うと料理の並んだ台の前に椅子を置いた。
「いただきます」
レンがチャーハンを口に運んだ。
もぐもぐと咀嚼している姿を俺と大翔はじっと見つめた。
レンは、持っていたスプーンをたたきつけるように置くと立ち上がった。
「なによこれ!? これは本当に料理なの!? こんな美味しいもの食べたことがないわ!!」
俺と大翔は見つめあって、頷いた。
「こっちも食べてみてください」
俺はそう言って、イノシシで作ったポークソテーをレンに差し出した。
「まって、そう急かさないで……」
レンはフォークでポークソテーを突き刺すと、一口食べて身もだえた。
「はぁっっ。この味わい……」
レンが変な声を上げたので、大翔は赤くなってうつむいている。
「じゃあ、こちらも……」
「あ、プリンは食後に食べてください」
制止する大翔の声に反応して、レンがプリンに伸ばしかけた手をひっこめた。
「全部たべてしまっていいのかしら?」
「ああ、レンさんのために作ったものだからね」
俺が答えた瞬間、レンさんはチャーハンとポークソテーを一気に食べだした。
「あ、あの、お水いりますか?」
「……結構よ」
レンはあっという間にご飯を食べ終えると、プリンをじっと見つめた。
「それじゃ、デザートのプリンをどうぞ」
大翔が新しい小さめのスプーンをレンさんに渡した。
「いただきます」
レンはプリンをスプーンですくうと、そっと口に運んだ。
「んん!!!!」
レンは涙ぐんでいる。
「あ、あの!? なにかまずかったですか?」
慌てる大翔に向かって、レンさんは首を横に大きく振った。
「美味しすぎる!! こんな料理食べたことがない!!」
俺たちはそれを聞いてうれしくなった。
「それじゃ、宿屋の件は……」
俺がレンさんにたずねると、大翔がぎゅっと俺の手を握った。
「もちろん合格! 大合格よ!!」
「やった!!」
こうして俺たちは新しい住処を手に入れることに成功した。