31.レストラン
ホテルを出て、海岸に向かう。
「この辺は人が多いね、健」
「そうだな、大翔」
海辺につながる大通りを歩いていると、いくつかのレストランが目に入った。
「あ、あそこはどうかな? テラス席が空いてるよ」
大翔がこぎれいな一軒のレストランを指さした。
「レストラン『浜辺の宴』か……入ってみるか」
俺たちはレストラン『浜辺の宴』に入ることにした。
レストランに入ると、すぐにウエイターが来た。
「こちらへどうぞ」
俺たちはテラス席に案内された。
「やったね。海が見えるよ」
「ああ、月もきれいだ」
「メニューです」
ウエイターがメニューを二つ置いて行った。
「何にする? 健?」
「そうだな、この店のおすすめは……『宴のディナーコース』か」
「僕、それにしようかな」
「じゃあ、俺も同じものにしよう」
ウエイターを呼び止め、注文した。
「『宴のディナーコース』を二人分頼む。あと、トロピカルジュースも二つ」
「はい、少々お待ちください」
トロピカルジュースを持ったウエイターがすぐにやってきた。
俺たちはジュースを飲みながら、波の音を聞いた。
「気持ちいいね、健」
「ああ、海からの風が心地いい」
月を見ていると、ウエイターが料理を運んできた。
「お待たせいたしました」
葉物野菜のサラダと、焼いた魚がテーブルの上に並べられた。
「いただきます」
「いただきます」
サラダは水っぽく、魚はなんだか変に苦かった。
「うーん……ジュースは美味しいんだけど」
「まいったな」
俺が焼かれた魚をつついていると、大翔が笑った。
「健、眉間にしわが寄ってる」
「そりゃ……この味じゃ……」
大翔は肩をすくめた後、魚を食べた。
「……明日のホテルの食事は美味しいといいね」
「そうだな」
俺たちは料理を食べ終えると、ジュースをお替りしてからレストランを出た。
「海辺を散歩してから帰らない?」
「いいな」
海辺を二人で並んで歩いていると、大翔が俺の手を取った。
「手をつないでもいいよね」
「ああ」
二人で歩いていると、海からの風が心地よかった。
「健の手、あったかいなあ」
「大翔だって、あったかいぞ」
浜辺を歩く人たちの影が、ゆっくりと動いていた。
散歩を終えてホテルに戻ると、俺たちはすぐに眠りについた。
清潔なベッドは気持ちよく、海の音が優しく響いていた。




