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断罪の夜と魔法少女  作者: XsINs
第1部 波章  断罪の夜更けと魔砲少女
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2−4 伝えたい、気持ち。

 背後に竜頭状の砲門を構成し、骨が焦げる火炎を放つ。私ごと、剣山めいた触手を焼き切る。そこで迷ってはいられない。引き合いに出す痛みがないならば、天秤に吊る必要もない。皮が縮み剥がれたのか、風を強く感じる。だから何だ。私はこれから、相対するモノを二度と風も感じられないようにするんだから、ただの等価交換。力と責任、罪に対する罰、その後者を前借りしている。つまり、それに合う力を発揮しても、罪を犯しても良い、その権利がある。義務がある。




「――――て――――――」




 放て、放て、死ぬまで放て。天使の金言と悪魔の囁きが一口に揃う。これを幻聴だと振るう喉があるなら、もろとも消して飛ばす。




「――ま行くから――――」




 ? 何……? 天魔が堕昇して…………来るの? 誰が喋って?




廻陸(かいろく)〜〜〜〜〜!!!」




 静電気が場をピリつかせた。義務を寄越さない、等価から過剰に再分類される痛み。



 何者か。叫ばれた名の主がいない。いなくなった。今の何者かが奪った。




「聞いて聞いて、さっき邪な悪趣味の魔法少女を一体殺したの!」




 声がしたのは後ろ、大道路ひとつ跨ぐくらい後ろからで、節々の緩いプラモデルのような烏舞(からすま) 廻陸(かいろく)を抱いて、まあ馬鹿みたく喋る喋る。




「それが気持ち悪い奴でね、過去に殺した男のアレを自分に移植してたんだ。自慢気に唾散らかしてさ、そいつで中学生を輪姦し回ったとか、男女無差別で。隙を与えれば与えるほども〜胸糞蛆虫這いずる気分。それとね、片神成も駆除できたんだよ! ついに三桁突入してさ、私がいちばん数少ないんだけど、最近になって発生数が増えたせいで――――ごめんね、いきなり変な話しちゃって。やっぱり、私は廻陸(かいろく)と一緒がいいから、でも一緒でいられなくなることもあるだろうから、その、マイナスから最後まで全部共有したくて、同じになりたくて…………だから、頑張って、丸一日かけてこっち側の(・・・・・)まで来たんだよ。でさ、ちょっと話変わるけど、ここしばらく悩み事がないの。なんか色々忘れっぽくなっちゃったのかな、色んなタイミングを廻陸(かいろく)と一緒に踏みたかったんだけど、私もあえてどっち側か言えば失敗だから、早く死んじゃうのかも……廻陸(かいろく)と死にたいって思うけど死んでほしいわけじゃないし、心配だなあ……あはは、あったね、悩み事。嘘吐いちゃった。あ! そうそう、廻陸(かいろく)の友達とか名乗る病気女がね、啓示(けいし)さんに会いに来たんだ。どうやって知ったのかわからないけど、自宅に、ってさ。それも、滅多に帰らない中たまたま帰れるようになった時に、わかってて狙ったように来たみたい。廻陸(かいろく)のこと聞きに来たんだって、何か知ってるだろって。追い返すにも力が強すぎて抵抗されて、ホコリ被った家具が壊れて、半抜けのコンセントから発火しだしてって…………感情の抜けた顔で言ってたの。ちょっとつらそうだった。でも何も言わなかったって、よく耐えたなって思って……私だったら殺してでも止めたいもん。そんなのが生きている(・・)なんて怖いし。駄目だよ廻陸(かいろく)、妙な奴に靡いちゃ。そうそう、久々にカード付きウエハース買ってさ、あれ食べる前が一番美味しいよね〜じゃなくってシークレットが出たんだよ!作品自体よく知らないけど……もし廻陸(かいろく)が知ってるのならあげようかなって。調べたら激レア! とか言うほどのものじゃなかったけど、プレゼントはする側もされる側も最低限気持ちいいものだからね。あーあ、本当なら今頃……ふたりで買い食いなんかしちゃってさ、気分が変わって夜ご飯二人で食べて、カラオケなんか行っちゃって……十時になったら公園でコンビニスイーツ食べて、ママから電話かかってくるまで話し続けて…………なんで、こんなことになったんだろうね……? 子供心に想ったような幸せな魔法じゃなくて、命のやり取りするための能力だとか、おかしいじゃん…………もっと何か、もっと別の、もっとも〜っと平和で優しいんじゃないの……? きうかさんは、廻陸(かいろく)を助ける魔法少女って、でも…………助けるって何……こんなの誰が望むの…………? やだよ、私、こんな、このままなんて、廻陸(かいろく)………………廻陸(かいろく)廻陸(かいろく)っ……! っあ、ふ、ははっ……何してるんだろ、私…………何、したかった……んだろう…………おかしくなりそう……もうなってるん、だ。まちがったんだ、どこか…………さいしょから………………わ……わた…………たすけて……廻陸(かいろく)…………………………廻陸(かいろく)……? どうかしたの?」



「本当に、よく喋る女」



「……誰、あなた。私はね、知りもしない奴と目を合わせたいと思ったことないの」



「同感、でもわかり合えない」




 戦場で話が通じないは敵、討つに限る。




「――――《髄銀填撃(ホーリーホーリン)》――――――」




 胸に込み上がる熱源が、小さなお天道様になって、闇も産ませない強烈な光撃(こうげき)になる。イメージするのは、持たれるこの男に一度向けた弾幕。恨み節の輝きが、とんでもない爆弾のように全方位へ放たれる。ここで振り切れ、私!




「――――射ァァァァァァーーーアッッ!!!」




 ――意識した初めての《能力》は、景の色がモノクロ基調に転するようで、少し気分が上がる風だった。




「はぁーっ……はぁっ…………初めて納得したよ、ヒュー・レゲノーツ…………これを肯定する気持ちが」




 私を中心とした輝跡、半径九人分を立体的に滅した。あいつを除いて。




「私は否定するよ、廻陸(かいろく)がいない世界なんて!!!!」



「クソッ話が交わらないッ!! コードと一緒に消え去れッンの部外者がァァァアアアアア!!! 《髄銀填撃(ホーリーホーリン)》!!!


 《私の砲哮で聴えて!(ホウゲエルロォーゥル)》!!!!!」




 大口開けた咆哮がそのままビームになって竜巻と化し、左手を構えた()の女の命を〆取る。と言うものの多分これでは死なないだろう。一度土に落ちた水は元のまま取り出せない、一生分の、いや転生分までも魔法をここでひっくり尽かす! 謂れごと散れ!! 総て!!!

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