何処行くの?
海沿いの道を少し進むと、隣町になる。 海が見えないエリアに入った。
代わりに、道路に沿って小さな川が流れている。
両側に集落が立ち並んでいた。 左右に蛇行しながら国道は走っている。
交差点を抜けると、町中心部を抜け、集落が無くなった。
やがて、緑の多いエリアに入り、緩やかな上り坂になった。
左右に蛇行しながら、トンネルの多い峠道に入った。
「今日行く町には行ったことがある?」 運転に気を付けながら、彼女に聞いてみた。
「ないよ」彼女はそう答えた。
私は、仕事でその町に行ったことがあった。
私達が住んでいる町から、県庁所在地へ続く国道は、何度も行き来していた。
今回は、喜びと緊張が混ざりながらのドライブだった。
何度かトンネルを抜けると、道は緩やかに下がって盆地に入った。
平坦な道が長く続き、再び峠道に差し掛かった。
峠付近のトンネルを抜けると、遥か先の眼下に、盆地が広がっていた。
通ってきた所も、盆地であったが、標高差がかなりあった。
急激な下り坂に差し掛かった。オーバードライブスイッチをOFFにして、軽くエンジンブレーキをかけた。
急な下り坂の上に左右にカーブを繰り返す道、速度がオーバーにならない様に気を付けながら、長い下り坂を抜けた。
先ほど眼下に望んでいた盆地に入った。
平坦な道が長く続いた。
その町を抜け、しばらく走ると案内標識が見えた。目的の3桁国道は右手に分かれていた。
時折、2車線が無い道が出てきた。 嫌な予感がした。
そうである、山道はこんなところが多い。3桁国道には要注意だった。
上りの傾斜がきつく、離合に気を付ける必要がある狭い道が続いた。
(しまった)そう思った。
まだ新米の頃、山奥にある職場に出張することが何度もあり、大型クロカン4駆を運転する必要があった。
重いハンドルを操作しながら狭い山道を走り経験値を積んだ。車の運転は好きだった。
しかし、彼女とのデートで、いきなり山道だったので気を使った。
彼女からすると、(何処行くの?) という気持ちだったと思う。
やがて、目的地の町を通っている2桁国道に出ることができた。
やれやれ、私は少しほっとした。 2桁国道は道幅も広く、直線で走りやすかった。




