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行き遅れ令嬢の婚約  作者:
一章
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衣装①

 早速調べてくれたのだろう。ノエルさんからの手紙がお茶会をしてから二日後、上司殿によって手渡された。

 会議に行った際に、ノエルさんに呼び止められ、渡されたらしい。

 上司殿から手紙を受け取る際、微妙に呆れ顔だったのが気になった。



 それはさておき、早速休暇を取り、手紙に記されている服飾店に向かった。



 店舗は大通りから少し外れた場所にあり、店構えも小さめだ。

 だが、質は良いのだろうと外観からも感じた。

 窓に嵌ったガラスも透明度が高く、ゴミが少ない。それに、店内にある商品がガラス越しでも大体わかった。

 ガラスは高価で、特に純度の高いものほど値がはる。

 それを惜しげもなく使えるのだから、それなりの品質が保証されていると見ていい。


 扉を開けると、ベルの音がした。

 店内の奥にいた店員が振り向いた。


「いらっしゃいませ。どのような物をお探しでしょうか」

「なるべく質のいいドレスを一着見繕ってほしい。オーダーメードする時間がないから、既製品で良いものはないかな?」

「サイズはわかりますか?」

「最近、測ってないから、それも頼みたい」


 それから数コンマ間が空いた。

 女性の表情が見る間に曇っていく。

 何かおかしなことを言ってしまったのだろうか。気まずくて、ちらりと横を見ると、店内に置かれた鏡に自分の姿が映っていた。

 うーん。これは無しだわ。

 ()()()()()()の大きめの白シャツと大きめのズボンを着ていた。体格がわからないし、この国でズボンを履くのは殆ど男性だ。例外として騎士や兵士、傭兵などはいるが、まずそれらの職に就く女性が圧倒的に少ない。

 男が女物のドレス、しかも自分用を買いに来たといったら、あんな表情になるのも頷ける。


「縁談に着ていけるようものはないかな。()()()()()に悪印象を持たれない程度でいいんだけど」

「失礼いたしました。近頃何故だか男性のお客様が自分用にと買われることが多く、またその手合いかと早合点してしまいました」

「何故男性がドレスを?」

「私には計りかねます。少々お待ちください、針子を呼んできますので」


 そう言って、奥の部屋に向かっていった。

 女性の背を見ながら首をかしげる。

 何故、男の人がドレスを着用するのだろう。

 もしかしてノエルさんの知り合いも、男なのにドレスを着る趣味がある人なのだろうか。

 いや、そうなった場合、わたしもそいつらと同類だと思われていることにならないか? 普通の女性に女装癖のある男と同じ店を勧めないだろう。

 …………。やっぱりノエルさんの知り合いは女性の方なんだ! そうでなければプレゼント用!

 流石にそんなおぞましいことはない、はず。


 でも、一応後日ノエルさんにそれとなくわたしは女だと伝えたほうがいいだろう。



「おまたせいたしました。こちらへどうぞ」


 先ほどの女性が、仕切りのある角に手招きをする。

 わたしがいくとそこには、若い少女二人がいた。


「この子はロアンヌ、こっちの子はソフィアです。お客様の採寸を担当させていただきます」

「ソフィアと申します」

「ロアンヌと申します。お体に触れますがよろしいですか?」

「ああ、お願いする。服を脱いだ方がいいのかな?」


 自宅で採寸した時は下着になった記憶がある。

 それに今回は大きめの服を着ているし、このままではサイズを測れないのではないだろうか。


「お嫌でなければ、シャツだけお願いしてもよろしいでしょうか」


 ソフィアは少し思案してからそういった。

 下はズボンのままでいいのか。

 たしかに、今の流行りはパニエでスカート部分を膨らませることだ。

 タイトなドレスと違って、長さだけわかればいいのかもしれない。


「では、測ります。ヒールはどれくらいの高さのものを履かれるご予定ですか?」


 ロアンヌは全身の高さを測りながら、紙に数値を書き込んでいた。そんな質問をされたのは、今日履いていたものがなだらかな布靴だからだ。

 ヒールを合わせるなら、身長があと少し伸びる事になる。

 でも、わたしの身長だと物によっては、相手の身長を越してしまう。

 いや、ローヒールの時点で男性の平均身長を越すことになる。


 でも、ドレスに合わせるなら履かないという選択肢はないし。


「二インチくらいかな。それとももっと高さを落とした方がいい?」

「スラリとしてますから、男性に気後れされるのはわかりますが、最近の流行りは高めのヒールです。それ以上落としてしまわれると、悪目立ちしてしまいます」


 そう言って、ロアンヌは紙にヒールの高さも書き込んだ。

 それからしばらくして腕の長さや胸囲、腰回りと当日のコルセットの有無を確認された。

 そして、採寸結果を書いた紙を店員さんに渡し、ロアンヌとソフィアはその場から立ち去っていった。

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