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星を見る

 私は山の近くに住んでいる。自分で建てた小屋に住んでいる。小屋の窓から通り過ぎる季節を見つめている。去年、定年退職したので、今は悠々自適の毎日だ。思うところあって、妻子とは別れ、一人でこの小屋に住んでいる。普段は読書をしたり、若い頃に聴いていたレコードを引っ張り出して聴いたりしている。

 そんな私だが、自分に課していることがある。毎晩の星の観測だ。毎晩屋根に昇り、夜空に光る星を眺めている。星を眺めていると、自分が夜空の中に溶けて行くようで、気持ちが良い。そんな風に星を見つめていると、若い頃のことを思い出すのだった。


 若い頃、私は宇宙の研究をしたいと思っていた。具体的にいつ頃かというと、高校生の頃だ。しかし、数学が苦手で、理系に進むことが出来ず、結局美術系の大学に進んだ。大学に入ってからはバンド漬けの毎日を送った。バンドではボブ・ディランなどの洋楽のカバーの他に、私が作ったオリジナル曲も歌っていた。オリジナル曲の中には、「夜空」という曲があった。夜空に飛んで行きたい、夜空の星のひとつひとつへ行ってみたいという曲だ。宇宙の研究が出来なかった思いを、「夜空」という曲に託した。そんな頃のことをふと思い出していた。


 「夜空」をライブで歌っていたとき、不思議なことがあった。歌っていると、ライブハウスの中にいるのに、夜空に浮かぶ星達がありありと見えるのだ。星と星の隙間からきらめく星雲のようなものが現れ、やがて消えて行った。あれはなんだったのだろう。もしかしたらまたあの星雲をみることが出来るかもしれない。そう思って私は、今日も屋根に昇る。


 

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