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プロローグ
「あぁ.....もうすぐ実家暮らしも終わりか.....」
荷物のすっかり無くなった部屋で、どこか寂しげな声が響く。
声の主は、床からゆっくりと起き上がり、手元にあった資料を手に取る。
【フルーリア大学入学案内所】と書かれたそれをしばらく眺め、また溜息を吐く。
「ほんとに俺なんかでいいのかなぁ...」
フルーリア大学。
アールシルト屈指の名門校であり、創立6000年を迎えてもなお世界中、また異世界からの留学生を毎年大量に迎え入れる、グローバルという言葉に留まらない大学だ。
アールシルトとは、つい最近存在が確認され、また、そちらからの訪問者が現れたのをきっかけにして、交流が開始した、いわゆる'異世界'である。
そして、先ほどの声の男は、その交流の一環に、第1回異世界留学生として選ばれた人間であった。
その選定基準は極秘、また全国の学生が応募も無しに選ばれた者であるため、この男のように疑問を感じている者も少なくなかった。
「まあ、深く考えても仕方ない、か」
こうして、この男、新堂渡は、引越しの準備を続けるのだった。