六話 依頼報告
俺は木で造られた簡素なスイングドアを押し開き、その中へと入った。
中は数個の丸テーブルとそれに机が配置されていて、奥のカウンターでは一人の女性が受付のような振る舞いを見せている。
「――」
ざわざわと、中にいる男たちの声が鼓膜を揺らす。
誰も俺の方を見る素振りも見せない。
「……」
俺は黙って端にあった掲示板へと足を向けた。
掲示板を見上げながら、俺は目的のものを探す。
「……あった」
掲示板の一番右端。
そこに、目的のものはあった。
『
討伐対象:リンガーヴェルスライム
出現場所:リンガーヴェル洞窟
討伐期間:5日間
―― 討伐済み ――
討伐者:スレイト・グラファース
使用武器:剣、銃
ランク:カパー
』
そしてその下に。
『
※緊急※
討伐対象:ウル・ミノタウロス
出現場所:リンガーヴェル洞窟
討伐期間:指定無し
―― 討伐済み ――
討伐者:不明
使用武器:剣、銃
ランク:カパー
』
上下合わせられるようにして貼られた二枚の紙。
俺はその両方を剥がし取る。
すると、
「――おいおい、あいつの腰と背中見てみろよ。剣と銃だ」
「――しかも今、あの依頼書を剥がしたぞ? もしかして……」
「――ああ、ひょっとすると……」
そんな声がちらほらと聞こえてくる。
中には、昨日俺をここで嘲笑ってくれた奴もいるようだ。
「……討伐依頼の報告でしょうか?」
俺は剥がした二枚の依頼書をカウンターに置く。
「……では、箱の方をお預かりします」
懐から小箱を取り出し、女性に見せた。
すると女性は一瞬目を見開き、
「リンガーヴェルスライムの生命核と……ウル・ミノタウロスの牙、確認しました」
その声が響いた瞬間、背後の方でざわめきが強くなった。
『おい、やっぱり例のカパーじゃねぇか!』
『カパーでミノタウロス倒すなんて、常識じゃ考えられねぇ……』
『一体、どんな手を使いやがったんだ?』
背後で好き勝手に話す男たち。
どうやら女性も未だ驚きを隠せないでいるようだが、
「念の為に、使用武器とプレート、それからお名前を伺ってもよろしいでしょうか」
言葉に従って俺は背中の剣と腰の銃を取り出し、首に掛けたカパーのプレートとともにカウンターの上に置いて言い放った。
「……スレイト・グラファース。ランクカパーだ」