四話 目覚め
開いた窓から軽く日差しが差し込む。
外から聞こえる小鳥のさえずりがまどろみに戻ろうとする俺の意識を引き止める。
「ん……」
俺は横になっていた身体を起こした。
木で出来た簡素な硬いベッドに手を付いて、起こした上半身を支える。
「もう、朝か…………っ」
左腕に激痛が走った。
見れば、左腕の肘から肩の間にかけて白い包帯が丁寧に巻かれていた。
「これは……」
同時に、昨日起きた出来事を思い出す。
スライムを討伐するために、初級ダンジョンであるリンガーヴェル洞窟に赴き、そこで……
そこまで思い出したところで、
「……おはようございます。と言っても、もうそんな時間でもありませんけど」
緑色の長い髪にカチューシャを付けた女性が微笑を浮かべながら部屋に入ってきた。
掛け時計に目を向けると、針はちょうど15時を示していた。
「ああ……俺、どのくらい寝てたんだ……?」
「大体、丸一日くらいですかね。……覚えてないんですか? スレイトさん、一応自力でここまでやって来たんですよ?」
女性はトレイの上に乗せた器を俺に差し出す。
「とりあえず私が作ったこのおかゆでも食べて、今は治療に専念してください」
「あ、ああ……」
俺は生返事で返しながら、おかゆを受け取り、スプーンで掬って口に運ぶ。
噛む必要のないほどまで柔らかく煮込まれた白米からほんのりミルクの味がする。
「……美味しい」
「本当ですか? それは良かった」
女性はそう言って、にっこりと笑ってみせた。
「あ、あの……!」
俺はそのまま立ち去ろうとした女性を引き止めて、
「その……ど、どうも、ありがとう……ござい、まし、た……」
ぎこちなく、つっかえながらもそう言った。
するとドアに手を掛けた女性はこちらに振り向いて、
「――いつもの話し方で構いませんよ。それと、まだ自己紹介をしていませんでしたね。私はミルレアっていいます。この宿で働いています。良かったら覚えていてくださいね」
そう言って、ウィンクを一つ残し、部屋から去っていった。