表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

一話 魔宮歴

 ――魔宮歴――

 この世に"魔族"と呼ばれる高位の生命体が生まれてから次第、時代はそんな呼ばれ方をした。

 それまで人々は互いに助け合いながら生き、小さな争いはともかく、戦争と銘打たれるほどの大規模な争いは起こりなどしなかった。

 だが、魔族がこの世に盛り始めると同時に、その状況は少しずつ変化した。


 ――魔宮歴、10年――

 魔族が活発的に活動を始めたのはこの頃からだ。理由は定かではないが、恐らく、魔族全体を指揮するものが現れ始めたからだと言われている。

 

 ――魔宮歴、15年――

 世界中に、洞窟(ダンジョン)迷宮(ラビリンス)遺跡(ルインズ)と呼ばれる謎のエリアが出現を始めた。

 恐らく魔族だけが持っている特殊な力、"魔力"を用いて魔族が出現させたのだろうと言われている。

 ダンジョン、ラビリンス、ルインズにはそれぞれ、魔物(モンスター)と呼ばれる、人々に害を成す生命体が蔓延っていた。

 モンスターは時折人々の住む街や村にまで進行し、酷い時には死人まで出したという。


 ――魔宮歴、17年――

 ダンジョンなどから出てくる凶暴な生命体、モンスターに、人々は衰退の一途を辿らざるを得なくなった。

 それまで力を合わせていた人々は生活の余裕が無くなったことで、他人とぶつかり、争い、かつての活気はなくなっていった。


 ――魔宮歴、20年――

 しかし、そんな人々の中から、数人の強者と学者が立ち上がった。

 彼らは、街の近くまで偵察に来ていたと思われる魔族一体を取り押さえ、合計数十人がかりで何とか殺した。

 何の特別な力も持たない人間が、魔力を持つ高位の生命体である魔族を仕留めた初の瞬間だった。


 ――魔宮歴、23年――

 初めて人が魔族を仕留めてから、3年。魔族を仕留めた集団にいた人間は皆から"勇者"と呼ばれ、その一族までも"勇者の一族"として称賛を浴びるようになった。

 そんな時、その"勇者"の一員であった学者たちが、殺した魔族の屍から、魔力のみを取り出すことに成功した。


 ――魔宮歴、25年――

 初めての実験は、勇者の一人である、ある青年が被験体となって行われた。

 その実験とは、"人間に魔力を内蔵させる"実験である。

 実験は無事に成功し、魔力を得たその青年は、人々から"真の勇者"と呼ばれた。

 学者たちはこの実験を皮切りにし、残りの勇者全員に魔力を内蔵させていった。


 ――魔宮歴、50年――

 時は移り、魔宮歴50年。

 "真の勇者"たちの子孫は、軒並み魔力を持ちながらこの世に生を授かっていった。

 だが、到底今の数では、出現したダンジョンやラビリンスなどを壊滅させるまでに至れない。

 実験を行う学者たちは、引き続き"魔力内蔵"の実験を盛んに行った。


 ――魔宮歴、65年――

 この年になって、初めて魔族が中規模の軍勢を引き連れて人々が住む地域にまで進行してきた。

 魔人戦争の勃発である。


 ――魔宮歴、67年――

 戦争は約2年続いた。結果は、戦いが長引くことを恐れた魔族軍が徐々に身を引き、辛うじて人間の勝利に終わった。

 だが、それによって受けた被害は尋常でなく、魔族軍と直接戦った勇者たちの中からは死者も出た。


 ――魔宮歴、70年――

 魔族軍は、先の戦争で全滅したわけではない。それどころか、被害総数で言えば人間側の方が圧倒的に被害を負った。

 いずれ再び、魔族軍は進軍してくるだろう。それを危惧した、全ての勇者が所属する"勇者連盟"は、勇者育成組織(ギルド)を立ち上げ、いつか来るであろう魔族軍の進軍に対抗しようとし始めた。


 ――魔宮歴、100年――

 そして――今。

 未だ二度目の魔族軍の進軍はやって来ていない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ