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異世界で奴隷になったからご主人様を王にする  作者: 九番空白
第二章 はじまりの迷宮
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第17話 『装備する』とはどういうことか

 シオンたち一行はレッテンの街へと入った。


 迷宮攻略は時間のかかるものである。

 何ヶ月、あるいは何年かかるかわからない。

 よって拠点としては家を買ってしまったほうがいいかもしれない。

 が、すぐに探せるものでもないのでとにもかくにも宿を探した。


 その日は見つけた宿で旅の疲れを癒した。


 そして翌日。


 シオンはこのレッテンの街をジェットとルリと三人で歩いていた。

 サツキは男性恐怖症ゆえ、あまり人が多い場所へは行きたがらないようで、宿に残った。


「シオン、ルリ、これから装備品を買いにいく訳だが、そこで質問だ。武器や防具を『装備する』とはどういうことか、知っているかな」


 ジェットは一八〇センチ強という身長とめずらしい赤銅色の肌が多少の衆目を集めていたが、レッテンの街は人種のるつぼ(・・・)ゆえ、すぐになじむことだろう。


「普通に持ったり着たりではないのですか?」


 シオンが答えるとルリも、ふんふん、と首を縦に振っている。


「それはただ、持ったり着たりしているだけなのだ」


 とジェット。


「物を装備する、ということは、その物に気を通して(・・・・・)はじめて装備したことになるのだ」


「気、ですか」


 MPのある世界だ。『気』があっても不思議ではない。


「パスを通すとも言うな。ステータスの『器用さ』の項目が高いほど、高級な材質、大きなアイテムにパスが通せるようになってくる」


 シオンは、そのアイテムが要求するステータスを満たさないと装備できないタイプのゲームを昔やった気がしたので、なるほどと思った。低レベルでいきなり最強の武器は装備できないわけだ。

 もっとも、現在のシオンの『器用さ』はかなり高めらしいのだが。


「パスを通すと、そのアイテムは気によって頑丈さ(・・・)が増す。モンスターなどの硬い皮膚を攻撃すると、銅や鉄の剣などはあっという間にボロボロになってしまうだろうが、パスを通している剣なら大丈夫だ。もちろん、いつまでも傷つかないわけではないが。そして当然、良い材質の方が長持ちするぞ」


 シオンは、思いもよらぬところで名作RPGゲームをやっているときにも思っていた疑問に答えが見つかったな、と思った。


「そしてアイテムの装備にもっとも大きな影響を与えるのが、クラスの違いだ」


 ジェットは解説を続ける。


「まず、最もパスを通すのが得意なクラスが、『戦士』だ。剣や槍、鎧、盾など、さまざまな武具を扱える。……次に『騎士』だな。防具は得意だが、あまり大きな武器は無理だ。……その次が『僧侶』で、こちらも防具は得意だ。しかし、鈍器や棒状のものはいいのだが、刃を持つ武器は難しい。気を尖らせることができないのだ。仮に剣を装備しても、敵を斬っているうちに刃が無くなって棒になるだろう。……『狩人』は特殊で、パスを通した武器が身体から離れても、ある程度頑丈さを保てる。弓や投擲武器が得意だな。防具も身動きがしやすいものがいいだろう。……『魔術師』は固い防具は一切不可能だ。パスを通さずに鎧を着れないこともないが、すぐに壊れるだろう。敏捷も損なうだろうし、素直に布のローブを装備した方が防御力がありそうだな。武器も杖など刃のないものか、刃があるものだとナイフなどの軽くて小さいものだな。……『格闘家』はほとんど身にまとうものしか装備できない。体内に気を通すクラスなのだ。ほとんど体外には気を放出できない。ナックルなど、身体に密着するような武器はかろうじて装備できるくらいだ」


「そういうことだったのですね!」


 シオンは、ゲームやアニメに出てくる魔術師などが剣や鎧を装備できない理由がわかって感動していた。


「なるほどですー」


 シオンとルリの納得顔にジェットもご満悦だ。


「さて、理解してもらえたところで、君たちの装備を選ぼうじゃないか」


「「はい」」


 

 シオンは『狩人』として、弓とダガーを与えられた。

 シオンは、MPが増えたことにより≪魔法収納≫の大きさも広がったので、矢や投擲ダガーなどの、武器の残弾(・・)が問題となる『狩人』としては適正が高いと言えるだろう。

 それと近接にも回る遊撃ポジションでもあるので、『戦士』あるいは『騎士』としてのスタンダードな剣と革の胸当ても購入した。


 ルリは魔術師としての杖とローブ、僧侶としてのメイスを与えられた。身体が小さすぎて、合う鎧はすぐには見つけられそうになかった。


 そして忘れてはならない、シオンはC.C.CとC.C.Dも購入してもらった。

 念願のベルト型であった。

 シオンはこれでも男の子(・・・)でもある。

 その日は興奮してなかなか寝付けなかったのは言うまでもない。

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