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第1話 ここは、どこだろう

チートが発現するのは第8話です。よければお付き合いくださいませ。

 シオンはいつもどおり、ネットカフェで目覚めた。両親は3年前に事故で亡くなり、親戚もいない現状、残された遺産をやりくりしながらバイトができる年齢になるまでここで暮らすことに決めていた。


 年齢的にそろそろ卒業するはずの中学へも、入学後しばらくも経たないうちに通うことをやめた。いや、やめざるを得なかった。土台無理な話であった。


 両手も広げられないほどの狭い個室は孤独感と安心感を与えてくれる。マンガやネットゲームは退屈をしのぐのに最適であったし、居心地は良かった。自堕落といってもいい。

 そんな日々に、突然ピリオドが打たれることになるなど、まったく想像もせずにいた。


 わずかな臭いが鼻につき、シオンは目覚めた。

 ヘッドホンからは「――パウロが発表したところによると……」とアナウンサーの声が聞こえてくる。アニメを見ながら寝落ちてしまっていたようだ。とっくにニュース番組に切り替わっている。


「なに、この焦げ臭いの」


 寝ぼけながら、厨房が料理でも焦がしたかと思っていると、だんだんと周りの喧騒が大きくなってきた。


「火事だ!」


 誰かが叫んだ。


 シオンは反射的に起き上がる。寝ぼけていた思考が一気に覚醒した。外の様子を探る。

 入り口は遠い。そしてここには燃えるものがたくさんある。

 火の手と悲鳴はいっきに広がった。非常口は、ととっさに思いつくが、それ以前にもうどこへも行けそうにないほど火に囲まれていた。古い建物で、散発的に設置された少ないスプリンクラーなど焼け石に水といった体であった。

 シオンは絶望しつつ、意識が遠のくのを感じていた。煙を吸ったのかもしれない。人々が叫んでいる。ああ、こんな終わりはイヤだ、と思った。



 階下から発生していたその火事からはそもそも、たとえ店外へ出られたとしても、建物の外へ逃げ出せたものはいなかった。生存者はおらず、身元不明の死体は出なかった。

 シオンのような孤児が死体も残さず消えようと、誰にも気づかれはしなかった。






「たすけて……?」


 意識が戻ると、そこは洞窟の入り口であった。結構広い空間だ。外から光が差し込んできているので、それなりに明るい。


「ここは、どこだろう」


 シオンは意識的に声を出す。少し自分の思っていた声量とは違ったが、すんなり出せたので安心する。続いて体を確認する。ケガはない。それに死後の世界というわけでもないらしい。証拠はないが。


 シオンは思考する。

 徐々に記憶が戻ってきた。そうだ、火事に巻き込まれたんだ。そして意識を失った。

 光の道を通ったような記憶もうっすらとある。

 誰かが助けを求めていたような気もする。

 そして次に気づいたらここに投げ出されていた。


「もしかして、異世界転移?」


 シオンはその手の小説やゲームもたしなんだことがある。だとしても現実に自分が巻き込まれるとは思ってもみなかったが。


「それにしても何か力をもらったりした風ではないけれど」


 ――こういう場合、神様がチート能力とかくれたりするものではないのか。


 ――いや、待て。なにか力が湧き出している気がする。


「おお」


 シオンの意識の中に器があり、そこに水のように力が溜まっている感覚。

 一応、神様は力をくれていたらしい。使い方もどんな能力なのかも説明はなかったが。

 


 仕方ないのでシオンは行動を開始した。まずは洞窟のチェックだ。光が差し込む入り口と思われる場所の逆側には、薄暗い道が奥へと続いているようだ。どう考えても今は行きたくない。


 なにせシオンは今、ほとんど何ももっていなかった。格好だってパジャマ代わりにしていたジャージの上下である。どちらに向かうかは自明の理であった。

 入り口が近づくにつれ洞窟の壁面に文字が彫られているのに気づいた。


 そこに書かれていたのは驚くべき内容だった。


「え、日本語?」

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