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恋人気分のレエゾンデエトル  作者: 棒王 円
〈十指編・術者誕生〉
30/31

変容する日々





朝起きて、術を試してご飯を食べて寝る。

学校に行っている皆と話をしたり、暁さんに借りた本を読んだり。

そんなまったりした生活を続けて、三か月が過ぎた。


夜行と生活を続けていた時間よりも長く、ここにお世話になっている。


この生活で気になったのは、皆の性格がたまに変わっている事だ。

薬丸君が特に変わった気がする。

最初は俺なんて見向きもしなかったのに、一か月前からやたらと話してくるようになった。小夜子ちゃんに聞いたら、此処の皆には良くあることだって言われた。


人の性格なんて、そんなに変わる訳でもないと思うのだが。

豹変と言っていいほどの変わりぶりに、何だか変な気持ちになる。

何か術を覚えることで人格まで変わってしまうのならば、怖い。


俺は暁さんに話を聞いてみようと思い、久しぶりに二階の部屋を訪れてみる事にした。ドアをノックすると女性の声で返事が有った。


「入りたまえ。」


ん?

口調は確かに暁さんだけど、この声は女性でしかない気がする。

恐る恐る部屋に入ると、とんでもない美人が暁さんの部屋の椅子に腰かけていた。


腰まで流れる髪は艶やかで、大きな眼と魅惑的な唇が配置よく顔に収まっている。

スタイルも抜群で、胸なんて服から零れそうで。

あれ?暁さんは何処に行った?


「どうしたね?冴羽君。何か聞きたい事かな?」


落ち着いた口調は、やっぱり暁さんの物で。


「ええと。……暁さんですか?」

「うん?何を言っているんだね?」


自分でそう言った後に、女性は自分の胸元を見降ろした。

それから、ああ、と笑う。


「忘れていたよ。今日はこの形だったな。」

「…ご本人?」

「勿論。術式で変化しているだけだ。」


術式って。

性別かえられるって事か?中身まで変わってる訳じゃないよな?見た目だけだよなあ?


「勿論肉体全部が変わっているよ?」


俺の疑問なんて何時も通りお見通しの暁さんが笑って言った。


「ええと、じゃあ。」

「そうだな。一年この身体でいたら、子供は産めるだろうな。」

「げ。」


マジですか。


「しかし、この術を保つのは結構高等だよ?私も一週間が限度だろう。」

「そんなに大変なんですか…。」

「ああ。けれど、術者の中にはこれぐらい平気でやってのける者もいると聞いている。…夜行ならできるんじゃないかな?」


え。

夜行が、女性になるのか?

そ、それは、良いかも知れない。


「まあ、現在そんな事が出来るだろうって術者は少ないよ。夜行や玄九郎ならできるだろうが、他は私と同じぐらいしか出来ないだろうね。」


暁さんが肩を竦める。

知らない名前が出て来たぞ。


「誰ですか?」

「ん?玄九郎かね?…天狗の子だよ。確か夜行とはラブラブじゃなかったかな?」



……………………はい?



「おや?君は知らないのかい?…一か月では内緒にされていたかな?」


綺麗な微笑みで酷い事を言われている気がする。

確かにちょっとしかいなかったけど、夜行の周りってミサちゃんと武蔵って奴しかいなかったような気がする。

え、なにそれちょっと。

暁さんが分かり易くニヤニヤしていて、どうしよう。


「いや、本当はね。玄九郎が求愛しているだけで、夜行は断っていたはずだよ。…君が頑張る余地はあると思うがね。」

「え、いや、俺が頑張るって。」

「焦らなくてもいい。君は夜行を好きなのだろう?」


暁さんの目の奥が読めない。

からかわれているのは分かるが、話題を長く振られている時は何かこっちに感心事がある時だと、さすがにこの三か月で覚えた。

しかし、恋バナなんて気にする人だったかな。


「…敬愛という意味でしたら。」

「隠さなくてもいいのに。私は同性愛にも寛容なつもりだ。」


やめて。はっきり言わないで。

恥ずかしいでしょう!?


俺が下を向いてから、クスクス笑いが聞こえて術を使う気配がした。

顔を上げると何時もの暁さんが居て、少し安心する。

顔はまだニヤニヤしているのだが。


「それで?本当は何を聞きに来たんだい?」

「あ。ええと。」


今のを見せられた後で、質問がしにくい。

性別まで変えてしまう事が出来るのならば、性格が変わる事なんて当たり前のような気がして。


「…いえ、良いです。」

「そうか?何でも聞いてくれていいんだぞ?」


楽しそうに微笑まれた。

一緒に住んでみて分かったのは、どの子も暁さんが怖くて近寄らないって事。あの金髪の親一さんでさえ、父親を怖がっているのが分かった。

俺にとっては普通の美父なのに、皆は何を怖がっているのだろう。

確かに。

時々、得体の知れない気配をされることはあるけれど。


子供が全員近寄らないって、寂しいものじゃないかなあ?


「いえ。また何かあったらお邪魔します。」

「そうか。」


頷くと暁さんは椅子から立ち上がり、ベッドの方に向かった。

疲れているみたいだから、俺も部屋を辞退する。

…そんなに疲れる術式なのだろうか。それを駆使しなければならない事もあるのだから、術者というのは今の俺みたいに気楽ではないって事だ。




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