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閑話
荒れ狂う嵐の中に身を置いているような。
そんな感覚でしか無い自身の力に、夜行は小さく息を吐いた。
ミサには散々に文句を言われたが、顔にも文様が出来てしまっている。
他に荒魂を入れておく場所がなかったからだ。
あと、一つ二つは入るだろうが、限界だろう。
苦痛が酷くて、最近は眠ることすらできない。
冴羽が夜行の元を出て〈十指〉に入ってから、三か月が過ぎた。
その間に一切の情報を手に入れることは出来ないまま、時間だけが過ぎている。
〈十指〉の行動も全く掴めない状況で、夜行は策を練りあぐねていた。
正面からぶつかるのは、今の自分でも危ない気がしたからだ。
しかし。
これ以上悪戯に時間をかけても仕方が無い。分かってはいるのだが夜行は行動を起こしかねている。
三か月も離れていて、最悪の結果以外に訪れる幕切れは無いと夜行自身にも分かっているのに。
それでもまだどこかで、考えてしまう。
以前の冴羽さんが居て、笑って過ごせる未来があるのではないかと。
あの人が死なない結末もあるのではないかと。
「…おとぎ話だな。」
そんな結末などない。
あるのはただ、〈十指〉の壊滅のみ。
青い空に強い風が吹いている。
その風に、夜行は身を預けるしかない。
せめて、最後は。
俺の手で。




