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恋人気分のレエゾンデエトル  作者: 棒王 円
〈十指編・術者誕生〉
28/31

改めて修行の日々・4





その後、中也君が言う通りに書いてある他の術も試してみる。

水、風、土。小さなものでも、手の平に出現するその滴がそよ風が土の欠片が。

俺には新しい世界の始まりで。


俺が呆然とワクワクと呪文を口にして、新しいものを手にしている間。

中也君は俺を眺めながら、ただ、煙草を吸っていた。

特に口出しするでもなく、じっとただそこに居る。


それが何故か夜行に似ていて。

俺はやっぱり気になって、中也君を見る。


「…中也君は、夜行に似ているよ。」


俺がそう言うと、中也君は驚いたように目を開き、それから、泣くんじゃないかって顔で笑った。


「…元の俺は、夜行の兄弟子だからな。」

「え!?夜行の兄弟子!?」


どおりで似ているはずだ。


「ああ、小さい頃だけど。」

「夜行って小さい頃はどんな子だったんだ?」

「うーん、今とあんまり変わらないかな。正義感が強くって自己犠牲をいとわない、おせっかいの頑固者。」

「子供時代からそれか。」


筋金入りのお人好しだな、夜行。


「それに見合う力を手に入れることには、貪欲だったけどな。」

「え?」

「他人を守るためには、自分が強くなければならないっていうのが師匠の教えだったから、それを忠実に守ろうとしていたなあ。」

「…へえ…。」


俺は自分の手の平を見つめる。

小さな土がころりと転がる。他人を守ると言うほどには小さすぎる力。

それでも今まで何の力も持っていなかった俺が初めて手にした力だ。

ギュッと握ると、確かに感触があって。

俺は目を閉じて更なる前進を誓う。

お前のために。


左近家に帰ると、すでに小夜子ちゃんが帰って来ていた。

俺を見ると嬉しそうに笑う。

何だろうな、俺ってそんなに信用される口でもないのに。


「少しは出来るようになったのか?」


あたるくんが聞いてくるので、朝に貰った紙を見せる。


「お!?」


眼鏡の奥から、驚いたように見開かれた瞳が見えた。


「なんだ、やれば出来るじゃないか。」

「冴羽さんってやれば出来る子だったんだね。」

「…これなら成長も早いかも知れないなあ。」


それぞれに言われて、俺は苦笑いする。

まだ手初めのことしか出来ていないのに。


だいたい、今日聞いた事の中で一番実用的だったのは、中也君に聞いた事で。

あたるくんや親次くんが言ってきた概念的な物は、俺の中で定着していない。


それは何故か、右近家と左近家の違いに思えた。



「あのさ、親次くん。」

「ん?なんだい?冴羽さん。」

「左近家と右近家って実質的に何か違うのか?ええと、人が違うとか以外に。」

「術式が違うよ。」


親次くんが笑って答えてくれる。


「術式?」

「左近家、うちは術式がメインなんだ。右近は武器がメイン。戦い方が違うから扱う術もかなり違う。それぞれできない訳じゃないけどね。」

「へえ。」


こっちが術式メインなのか。確かに人美ちゃんや小夜子ちゃんは、まあ、武器を振るってる姿は想像できないかもなあ。術を扱ってる姿も想像が難しいけど。

普通に生活してますって感じが強くて、どうも術者には見えない。


…どんな術者がいるとか、そんなことも分からない。

知り合いの術者なんていなかったし、人脈すら作ってないし。夜行が所属を紹介してくれるとは言っていたから、そこで知り合いが出来たかもしれないけど。


帰ったら、紹介してくれるだろうか。




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