#3-1
#3-1
長かった職員会議が終わり、時刻はもう11時を過ぎていた。
他の先生方は会議が終わり直帰したが、俺は提出しないといけない企画書が残っているので帰らないつもりだ。
暗い廊下を自販機の照明が周囲を明るく照らした。
その光に吸い込まれるようにして近寄り、缶コーヒーを買う。
パシュッと栓を開く音が、廊下中に響き渡った。
コーヒーを飲みながら職員室へ向かうと、そこには早苗先生がいた。
早苗先生はこっちを見るなり、軽く微笑んだ。
俺は口元の缶コーヒーを離して笑い返した。
「早乙女先生、こんな時間まで会議ですか?」
「はい、体育祭のことでいろいろと。思ったより長引きました。」
軽い会話が終了。すると、早苗先生は隣の資料室に消えていった。
自分の机のPCを起動させ、俺はもくもくと自分の仕事をし始めた__。
数分後
俺が再び自販へ行って缶コーヒーを買い、戻った時__
ちょうど資料室から出てくる早苗先生の姿に俺は、目を見開いた。
何と、資料室から出てきた彼女の腕は、とても高く積まれた資料の数々を支えていた。
か細い、華奢な腕には負荷がありすぎだ。
「早苗先生!俺、運びますよ。それ、貸してください。」
「あ、大丈夫ですよこれ位。どうってことないですから。」
どうってことないだって?
その細い腕に入っている筋から、嘘だと悟った。
「いや、運びますから、何処に運ぶんですか。」
早苗先生に持つ資料に手を伸ばす。
「ホントに大丈夫ですよ!心配ないですって。」
そう言った早苗先生は、それを守るかのにように体をひねり、俺の手が届かないようにした。
その一瞬__
早苗先生は足首をひねって…ぐらりバランスを崩した。
彼女から離れたそれらは、紙吹雪のごとく宙を舞う。
俺はその光景を見て、右手から缶コーヒーが離れていくのに意識が廻らなかった。
「……危ない!!!、」
早苗先生の背中を支えようと手を延ばした刹那____
部屋全体が一瞬で闇に包まれた。
都合が悪いな、
伸ばした手は真っ暗な宙を彷徨い、俺自身もバランスを崩し前方に倒れこんだ。
俺はその途中、何かに衝突してそれを押し倒すようなカタチで倒れこんで……
「きゃぁッ!!」
早苗先生の悲鳴が部屋中に響いた。
悲鳴のわけはいきなり暗くなったからなのか、はたまた___
考えろ、考えるんだ自分。
この状況、どう考えたって停電だ。
一時的な停電か、ブレーカーが落ちたのか…
後者だと、ブレーカーを上げなければならないのだが、暗闇をさまよってブレーカーのある三階まで行きたくないことは明らかだ。
それと、早苗先生の悲鳴。
停電ごときで悲鳴を出す29歳女性(笑)って有りえないだろ。
俺はその理由を次の瞬間知ることになる__