時期尚早につき何故自己実現
前からあるんですけどリクエストされたから
「わたくしは誇り高く勇壮なバルバッツァ国の一人となる事をとても嬉しく、また幸せに思います。民族や慣習の違いはあり、それらが時には障害となる場合もありますが、それを愛と理解で持って越えていきたい、バルバッツァ国王陛下や臣下の皆さん、また国民の皆様
に満足いただけるよう真摯に王族としての務めを務めていきたいと思っています」
グリセルダは完璧なカーテシーで持って、この皇国の皇帝、バルトロメイに礼をした。
がたたっ
バルトロメイを除く全員が立ち上がる。
「あっ、なっ、あっあっ」
レヴァンが声に出そうとして息が詰まった。卓にある水差しを掴むとグラスに移さず一息に飲んでからようやく声が出た。
「あんた自分が何言ってっかわかってんのか!?妖精を嫁に迎えるだと!?」
「よく考えてのことだ」
「考えてねぇよ!身の程を知りやがれ!」
「そうだ!そんな羨ましいこと!」
「何夢見てんだ国王!そんな!大それたこと!」
「俺達と妖精達の体格差考えてみろ!許されるわけ無い!」
「嫌われるぞ!絶対!遠くで!そっと!憧れているのが俺たちにはお似合いだ!」
「すまん、皆・・・昔からの・・・俺の夢なんだ」
バルトロメイの絞り切るような声音に皆が黙った。
――― 夢ってそんな・・それを言えば俺たちだって・・・
武の国バルバッツァ国・・・
陸においては無敵を謳われ、海においては無敗を誇られる戦う王国である。
しかし彼らはその戦いに特化したような見た目と違い、
―――可愛いものがすっごく好き。
な一面を持っていた。
そして彼等の中では可愛いものが凝縮されたような世界に唯一の国がある。
細くて小さな白い手足、薔薇色の小さな唇に潤んだ大きな瞳。柔らかそうな頬やたゆたう艶やかな髪。という評判のコルテーゼ国に多大な憧れを抱いていた。
おまけにコルテーゼ国は煌びやかなで可憐な
そういう所もマニアの心を擽る。
もう好きすぎて憧れ過ぎて親交どころか声すら掛けられない。バルトロメイが10年前国王に就任した際、贈られてきた書状やお祝いの品は大切に美術館に飾って、国民に披露した。本当は個人的に所有していたかったのだが楽しみは皆で分かち合うものだろう。娯楽も少ないし。
「待て皆落ち着け。オッサンを罵っても始まらない。もう少し糾弾…じゃなかった尋問…でもない話を聞こう」
レヴァンが非難なのか懇願なのかよく分からない喧騒を一先ず抑え、座らせた。
「妖精を嫁に向かえるだなんて無謀としか言いようがないが、標的…じゃねぇ、相手はきまっているのか?」
「ああ」
えっうそ。
………………。
「だ、誰よ」
「…………」
「無意味に沈黙すんな!」
ディランがまたキレる。
「…………第二王女グリセルダ殿下なんだが」
―――しんかいちどういきをするのをわすれる―――
「では今日の会議はこれにて終了とする。各省各軍は議題に上がった問題点を次回の会議までに解決提案してくれ。じゃお疲れさん」
レヴァンはデスクの上の書類の束をトントンと整えて立ちあがった。
「お疲れ―」
「座りっぱなしだったから腰いてー」
「ディラン、お前の所で一度で害獣を仕留めた奴がいただろう」
「あールカだな」
「もう少し詳細が知りたいんだが」
「いいぜ。一杯付き合えよ。飲みながら話そう」
「さん、最近できた零下通りカフェのお菓子もう食べました?」
「まだ」
「俺今日も残業だよ」
「マジー?w過労死すんなよ」
「…彼女が好きなんだ」
バルトロメイが恥ずかしさに顔を赤らめつつ立ち上がって言った時、臣下一同がピタッと動かなくなった。
「……ろ」
「レヴァン?」
「いい加減にしろってんだよ!!」
レヴァンが突進してきて椅子を蹴散らしバルトロメイの襟元を掴むと壁に押し付けた。
「妖精国の妖精を嫁に向かえるってだけでも身の程知らずなのにグリセルダ殿下だと?俺はアンタの望みの高さが怖いぐらいだぜ。おい、悪い事は言わねぇ、思うだけにしろ。笑われてアンタが傷ついて終いだ」
バルトロメイはレヴァンの目に怒りと…気遣いを見た。この25歳のしっかりとした後継者は自分を心配してくれているのだ。だが。
「笑われてもいい」
「おい…」
「思うだけか…確かに傷つかないだろうな。そんなの俺だってわかってる」
「なら…!」
バルトロメイは襟元を締め上げる手をゆっくりと解いた。
「嘲られたっていい。死ぬほど傷ついてもいい。…頼む、」
バルトロメイはレヴァンの後ろに佇んでいるディラン達にも目を移して言った。
「やれるだけやらせてくれ」
………………。
「取り敢えずよ、お前等手握り合うのやめろよ。むさい男二人して気持ち悪いわ」
ディランの冷静なツッコミにレヴァンは思いっ切り手を振り払った。
国王のまさかの覚悟を聞かされた一行だが、事は両国の問題へと発展するだろうという事はわかりきっていたため(引きこもり民族だがそれぐらいは理解できる)冷静になるべく一端、休憩時間を設ける事にした。
そしてこの理にかなった頭を冷やす時間が却って混乱をもたらすことになった。
彼等は気づいた。
”あれ…俺等歴史に残る事してね…”
と。
「さて…再び集まってもらったわけだが…最初に言っておくがこの案件は秘匿中の秘匿だ。決して外部、そして身内にも漏らさないでくれ」
レヴァンはバルトロメイを担いで王宮の大窓から今にも投げ捨てようとしている集団を諌めた。
罵るの段階を行き過ぎている感も拭えないし、仮にも彼等の王を前にしての態度でもないのだがそこはいいらしい。
正真正銘国王なのに国王じゃない扱いをされたバルトロメイは元の椅子に座ると決意の程を次第を語り始めた。
後もありますけど頑張って上げますぅねー