閑話 へたれたバルトロメイと明日なき希望を胸に暴走しちゃった仲間達の軌跡2
「国王様、今日のスケジュールですが…何やら緊急の用とかで主だった方達が第一会議室でお待ちだそうです」
なかなか寝付けないなか、何とか短い時間寝た後、習慣からかいつも道り起床し、普段道りに見えるように朝食、身支度を済ませ向かった執務室。
両開きの扉を護衛の騎士達が開けた瞬間と言っても加減ない、補佐官の言。
―え?
「そ、そうか…わかった……ところでな」
「はぁ」
「…レヴァンから俺の事で…」
「何でしょう」
「あ、あのな、俺の事でそのう」
「………」
「…何か聞かなかったか?」
「いえ何も。聞いた方がいい事でもあるんですか?」
「…ない」
怪訝そうな秘書を尻目にバルトロメイはそそくさと執務室を後にした。
(朝には城中に広まってるのではないかと思っていたが…)
バルトロメイが危惧したような事態にはなっておらず、すれ違う皆、普通に挨拶をしてくる。注意深くその表情を見てみても昨日となんら変わってなかった。
本来なら国王の想い人云々な話など軽々しく吹聴して回るものではないのだが、ここバルバッツァ国では臣下と王の距離が近い。近すぎるほどだ。
特に近代の王バルトロメイは見た目はともかく、真面目で朴訥とした人柄で親しみやすいようだった。年下からもタメ口で話されるほど。かといって舐められているのではなく、身内のような深い信頼と尊敬を込めての意味合いで。
(どうやらレヴァンは内密にしてくれたらしいな。同情でもされたか。あいつから見ても俺の想いは不毛すぎるのだろな)
急に落ち込んできた。背中も自然と丸まる。恋をしてからというもの感情の起伏が激しい。お陰でそれを抑え込もうと常に無表情になってしまい部下達や秘書達に怪訝な目で見られている事に王女に夢中なバルトロメイは気付いてなかった。
第一会議場前、扉に着き、しばしの逡巡の後、バシバシと頬を叩いて気合いを入れ直すとバルトロメイは両開きの扉を開けた。
入ってすぐ異様な空気に気付いた。
臣下の中ででも最も重要なポストに就いている者達全員が揃ってバルトロメイを待っていた。その眼がなんかギラギラしてて怖い。バルトロメイは思わずとっていた戦闘態勢を解くと、恐る恐る聞く。
「ど、どうした。何か不測の事態でも起きたのか?」
「…陛下、お席にお着きください」
(――陛下!?)
国民の前やそれ相応の場でしか呼ばれない敬称を言われ驚く。というのも普段は「国王」や「バルトロさん」「バルさん」、ひどい時は「おっさん」等と呼ばれるからだ。
一体どうしたの何が起こってるのどうしたらいいの俺の立ち位置どうなってるのとマゴマゴしてる大柄屈強35歳独身国王にバッセルから永久凍土の風のような声音で言われた。
「いいから座れ」
「あ、うん」
バルトロメイが大人しく席に着き、一拍ほどしてレヴァンが立ち上がり、重々しくバルトロメイ以下重鎮を見回し低い声で言う。
「これより先は決して口外せぬよう制約として諸君に告げる。仮に万が一、――いや億に一でも漏れた場合即座に確定、標的となりその後の人生死んだ方がマシな処罰を与える。心して会議に当たるべし」
…え?
当惑が混乱に変わるバルトロメイを置き去りに
「応!!!」
と力一杯賛同する部下達。
――…何かがおかしいよな?みな普段とは明らかに違うよな?
絶っっ対おかしいよな!?有り得ないほどおかしいよな?
バルトロメイは自分以外全員が立ち上がり利き腕を高く上げ次に心臓の位置に掌を合わせた重臣に引く。ドン引く。
なぜならその動作は、バルバッツァ国では己の命と名誉を賭けて誓う、宣言の礼だからだ。
………………。
いやちょっと待て!本当におかしいからな!?俺の記憶が正しければそんな究極な結論が出なければならない事態は起こっていないはずだ!国の重要人物達がこぞって命を懸ける作戦なぞ!
「お、おお前達どうしたんだ?どこからか攻められようとしているのか?どこと戦争するんだ?ヒゼイか?まさかのデル・プレトか!?俺のところに報告書はきていないん」
「全省所全軍纏めとの宣言に続き、国王陛下の認によりこの国家プロジェクトを設立する事と相成った。
各々尊を持って事に当たるべし!」
全会一致的な事、撤回不可な宣言してるとこ悪いのだが。
俺、
認めてなどいないんだが
相成っていない
国家プロジェクトっていつの間に
尊(その者の生命)を持って当たる事態のそもそも根源すらわかっていないんだが
すごく遠い所へ置き去りにされたバルトロメイを尻目に、レヴァンから更に発せられる。
「まずは歴史に残りうるだろうこの国家プロジェクトの名を発表する。その名も
『建国以来憧れに憧れた妖精国に初めて接触出来る夢に夢に重ねた何か!喩え失敗しようとも我に悔いなし!
』…略してKYK!」
…最早どこからツッコンでいいかわからない。
取り敢えず、頭文字っぽいところか?
「いいか!失敗は許されない!事は我々バルバッツァ国の歴史に残りうる一代事業である!皆心して事に掛かれ!」
オオオォォオオ!!!
あ 俺の初めての恋慕とか
どうでもいいんですねそうなんですね要は俺を出汁にあわよくばコレを切欠に妖精達と自分達がナニガシカ仲良くなれたらなー的なもんなんだな?
あーよくわかりました。
ああ、んじゃ俺も好き勝手していいよな?いいよね?
という結論に至ったバルトロメイは黄昏れ、悟り…
密かに暴走を始める。
申し訳ない。閑話が続く。