プロローグ
ある都市は市内におよそ20校もの高等学校をもつ。その多くは偏差値が高いことで有名である。『多く』ということは、もちろんそうでない学校も存在するということである。
俺、風間敬人は『多く』ない方の生徒だ。
だが、決して頭が悪いわけではない。校内の偏差値は62、テニス部では副部長を務めていた。
今は高3の9月、部活動を引退し受験勉強をしている。講習だらけの平日、模試だらけの土日を過ごしていたそんな日々のなかの9月5日金曜日の帰りのホームルーム。
「あしたの土曜日は模試はないが、うちのクラスだけ急きょ講習をすることになったからからみんな明日も学校来いよ!。」どこか焦ったような表情で担任が言った。
「えぇーーーーー!」
皆がブーイングを起こすのも無理ない。いくら受験の時期とはいえ急に休日がなくなったのだ。
しかし、二言目を発するものはいない。担任が去った後の教室では文句や不満が絶えない、が俺は友達と文句を言いながらも『サボる』という選択肢を選ぶ気はまったくなかった。そしてそれはクラス全員に当てはまることだった。
みな真面目なのだ。有名校にいく学力はないがバカではない。そんな連中の集まった学校であり、そんな学校の俺らのクラスは、
この日まで平和だった。