表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/36

P33

 中間テスト期間で、いつもより早い下校時間、再び駅で千尋と、あの、東野とかいうヤツと会った。相変わらず何と戦っているのやら、いきなり臨戦態勢で鬱陶しい事この上ない。


「啓徳も中間テスト? 期間中は勉強が気になって落ち着かないな」


「そうだね、努力は、とりあえずしないよりした方がいいよね。どの階級でも。

 僕もさらに上を目指すのが人類のためっていうか。これは、テストの成績に限らず、だけど」


 うっぜええええええ。なんだよ、人類のためって。どんだけの重責を背負って生きているんだよ。


「戸川君。と、あれ? 東野君?」


 かけられた声に振り向くと、佐倉がにこにこと笑いながら立っていた。

 東野は、誰だ? なんで自分の名前を知っているんだ? というような、不審そうな目で佐倉を見ていた。


「佐倉、コイツ、知っているの?」


「東野君? うん、中学が一緒だったから」


「佐倉」


 東野が佐倉の名前を呟く前、小さく「げ」と言ったのを聞き逃さなかった。

 へえ、同じ中学。言われて思い出したけれど、文化祭あたりに佐倉は長かった髪を切り、それまでとがらりと雰囲気を変えた。中学卒業以降会っていないのだとしたら、一見して気付かなくても不思議はないのかもしれない。

 俺は千尋と佐倉に、簡単にお互いを紹介した。

 ん、そういえば、文化祭、といえば。

 心の中に、アメリカアニメの悪役の、どす黒いニヤニヤ笑いが浮かんだ。


「紹介しろ、なんて、元々知り合いだったんじゃないか」


 俺の言葉に、三人の視線が集まった。佐倉が不思議そうに首をかしげる。


「紹介、って?」


「文化祭で、佐倉の事、あれ誰? 紹介しろ、って言っていたよな?」


「東野君が? 蓬泉の文化祭、来てくれていたの?」


「佐倉となんて、会っていないだろ。会っていたとしても、紹介しろなんて」


「もしかして」


 千尋がおずおずと言う。


「佐倉君、水色のワンピースを、着ていた?」


 その時の、東野のカオ。佐倉は、けろっと、ああ、と納得したように頷いた。


「あれは、アリスの恰好なんだよ。クラスの子が作ってくれて。

 はじめは女の子の格好なんて、ちょっと恥ずかしかったんだけれど、みんな褒めてくれて、とてもよくしてくれて。

 ああ、そっか、あの時も今も、眼鏡かけていなかったから、東野君、僕だってわからなかったんだね」


 いや、眼鏡だけの問題じゃないだろ。文化祭の時は長い金髪のウイッグに目をひくドレス、薄く化粧までして、フルモデルチェンジしていたじゃないか。なんで眼鏡限定なんだよ。マジでこいつの脳内構造が知りたい。


「あ、あれはだね、男のくせに女装なんて、低俗な輩が、どこのどいつか知りたかっただけだよ!

 まさか、同じ中学出身の奴だったとはね。僕の脳が、判断を拒否したのもしょうがないな」


「あはは、そんなわけないじゃない。東野君の脳って、おもしろいねえ」


 佐倉、全否定したあげく、ヒトの脳をおもしろい扱いするのはやめてやれよ。東野、軽く泣きそうじゃないか。俺にとっては佐倉の脳の方が摩訶不思議だよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ