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P20

 バタバタと教室に入ってきた女子が、近くにいた、普段いつも一緒にいるグループの女子に、ひそやかで、それでいて通る声で告げた。


「神崎君、来期五組だって」


「えっ、五組。って言うと、ぎりぎり特進か」


「普通進学クラスになっちゃったら、教科書も違うしね。もう、三学期だし」


 ざあ、と、背中に冷たい水を掛けられた感覚がした。当然の報いだ。香田の顔が過る。香田は、来期一組に戻ってくるだろうか。冬木は、入れかえに二組に行ってしまうのだろうか。

 こんな落ち着かないのは好きじゃない。もう、嫌だ。みんな、あいつのせいだ。あいつらの。

 ぐっと奥歯を噛みしめた時、ゆっくりと教室後方のドアが開いて、佐倉が入ってきた。さっきの女子生徒の会話は、比較的近くにいた俺たち以外にも聞こえていたのだろう、佐倉に教室中の視線が集まった。佐倉はそれに気づいて、すっと視線を落とし、最前列の自分の席へ向かって歩き出した。


「チビいから、せっかく必死に一番前の席、キープしていたのにな。三学期は俺の後頭部で、黒板みえづらくて大変だな」


 俺の発した言葉に、松井と冬木が、え、という表情で振り返った。

 三十二位なら、二十六位の俺の後ろの席になるはずだ。佐倉は眉をひそめて立ち止まり、ちらりと俺を見て、踵を返してそのまま再び歩き出そうとした。

 イライラが急速に膨れ上がる。何か言い返したらどうだ、佐倉。


「相方の神崎、来期五組落ちだって?」


 この言葉には、驚愕の表情を浮かべて振り返った。驚くような事かよ、当然の結果だろ。わずかに胸がすく思いで言葉を続けた。


「ま、二百十八位じゃ、特進落ちでもおかしくないけど。

 とりあえず今回は温情ってやつ? 副委員長は再選挙か、無責任な話だよなあ」


 無責任。本当にそうだ。ほとんど無意識に自分の口から出てきた言葉に、思わず納得してしまった。

 同級生にそこまでの責任を負わせるつもりはないが、仮にも副委員長という肩書をつけているのなら、本来、クラスをまとめ、導く立場のはずだろう。

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