鍵穴
あれから、どれくらい経ったんだろう?
え…っと、見回りが12回以上来たから12時間以上くらいかな…途中、寝ちゃったなから、よく分からないけど。む…赤髪の少年にも手伝ってもらって何回か挑戦しているが結果、ここぞという時に限って毎回、見回りがくる。あーもう、彼らはわたし達が脱走しようと知ってるじゃないの!?
……よく考えれば、そうだね。じゃなきゃ、見回りは毎回来ないもんね…。バカだ、わたし。
先ほど見回りが持ってきた食事…というか餌みたいな食べ物を見る。もう人間が食べられる物じゃないわ!なんなの!この扱い!!人間以下よっ!!出てきたのは腐った野菜や果物、食べかけの残し物!!こんな酷い事、わたしの国は無いわ!!しかも、身1つで荷物も無い中大変!!…文句なら、いくらでも出そう。でも、文句言うヒマあるなら、一刻も早くココから出なきゃ。
なのに、あの赤髪の少年はまた呑気に見回りの人と普通に話している。彼らを遮る檻さえなければ、まるで普通の親しい友人と話している光景なんかに見えてくる。…わたし達はその話している人に酷い仕打ちを受けているのに…何故?何故、普通に話せるの?
よほど顔に出てたのだろう。見回りと話終わった彼はこちらを見て、悪戯ぽっく笑った。
「…あんた、やっぱりバカだね~。俺がなんで、こんな事しているのか分からないんだろ?」
それで頭に来た。なんなのよ!!この人、初対面なのにバカとか…失礼な人!!
人が怒っているのをよそに、少年は飄々(ひょうひょう)と笑った。あと、なんなの!!よくこんな場所で笑ってられるのか、わたしには理解出来ない。
「情報収集だよ、収集」
「……なんの…為に?」
「ココから出る為に」
「でも、彼らが教えてくれる訳…」
「あるんだなぁ~それが」
頭の中がハテナマークで埋め尽くした。
「当然、教えてくれる訳ないさ。でも、彼らの言葉にはヒントがある。今、その鍵穴に付いて重要なヒントを得た」
そこで黙り込む彼。
結構、沈黙が続く。
「な、なに??教えて」
「その言葉の続きになんの動物がくるの?サルか?カバか?サイか?さて、なんだ?」
「…え?」
訳分からない。わたしが戸惑っていると、彼はつまらなそうに唇を尖らせた。
「だ・か・らっ!!
教えてくだサルか?教えてくだカバか?教えてくだサイか!!どれだ!!」
いや…そんな真顔で見られても…。真剣な顔つきに思わず笑いそうになってしまった。それは…それは…は、はぁ…なるほど。
「なら…教えてくれだサイ」
「オーケー」
…今時、不思議な人もいるんだね…。言わないで心の中にしまっておくことにした。
「今、俺初めて聞いたんだけど。
あ、さっきの人、新入りらしくて…。まー…そんな事どうでもいいや。
とにかく鍵穴、3つあるだろ?」
「う、うん。あるね、全部、手に届きにくい所にあるね」
「しかも、何故か檻に鍵穴が埋められている。でも、それをいじれば開けられそう」
彼が何言いたいのか、分かるような…分からないような…。そんな事を考えていると、彼はいきなり爆弾発音をした。
「あれ、どうやら意味無いらしい。だって、飾りだもん。本物は別らしい」
ちょ、ちょっと待て。
「それだけは言っていたよ、今の人。あれは飾りだとハッキリ言っていた。つまり、今まで俺達が頑張ってきた事は、すべてムダだった」
「じゃ、じゃあ、どうやって…」
自分の顔から血の気が引くのが、よくわかった。
どうやって出るの?出方が分からないなら、わたし達どうなるの?
そう言いかけて、なんだか眠たくなってきた。というか、頭がぼーっとする。風邪引いた時みたいな感じ。視界が歪んで、景色が灰色のマーブル一色に見える。そのせいか、目の前にいた少年の姿が見えなくなってしまった。
これ…さっき鍵穴開ける作業初めて今までこんなような事が二回あった。初めはもっと軽かった…二回は頭痛がして…でもこんなに重いものじゃなかった。さっきから気のせいだと思ったんだけど、こんなの変だ。そう気がついたのに、もうわたしは目を開けられなくなっていた。
…かすかに、檻の外から沢山の足音と…金属の引きずる音がしたのは……多分、気のせいじゃないと思う。
あの…金属の音は……わたし達がつけている金属と同じ音がしている。




