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針金

「……これは…一体…どういう事??…」



 現在、わたしは頑丈そうな鉄の檻に閉じ込められている。見る限り、檻の隙間から抜け出す事はまずムリ。だって、横の間隔隙間がたったの3センチぐらいしか無いんだもんっ!!それに縦の隙間はほぼ無いのに等しい。半分涙目になりながら、無我夢中で檻の柱を揺らしてみるけど、びくともしない。周り見渡すと、同世代ぽっい人がちらほら。しかも、結構汚れている服を着ている。その人達はこんな場所に閉じ込められいるのに、目に光が無く、ただ天井を見上げてボッーとしている。見上げても何もない、冷たい鉄の棒がいくつも張り巡られてるだけなのに。彼らはソレを見続けている。話かけても返事は来ない。そんな人達ばかり。…正直とても怖い、そして気味悪い。

 と、とりあえず…今、誰か!わたしの身の回りに起きている事を教えてっ!!



「…だっ、だれかっーー!!開けてくださいっ!!わ、わたし、悪い事してません!!」



 …何度しても同じ。沈黙が続いている。誰も反応しない。振り返っても、反応ナシ。

「だ、だれかっ!!お、おねがい!!開けて!!」

 やっぱり同じ。沈黙。ついにパニック状態になってきた。と、とりあえず…お、おちつけっ自分!!深呼吸して息を整える。

 分かるのは、つい昨日まで宿屋にいて寝てただけ。気がつけば、ここにいたという事だけ。今、朝なのか昼なのからはたまた夜なのか、それすら分からない。そんな事より、早くココから出なきゃ。なんか良くない事が起きる気がする。…いや、もう起きている気がする。

 ぐるぐると思考が頭の中を巡る。そんな時、後ろから物音がした。慌てて振り返ると、薄汚れてた人達の中から1人の少年が立っていた。埃とゴミで汚れている赤毛の短髪と、少し光を宿した黄色の瞳。なかなか見ない人種。痩せこけた身と着ている粗末な服が、どこかに飾られている綺麗な石像に見えた。


「…あんた、叫んでもムダ。

何してもムダ。

どうせ誰も人の話なんか聞かない。まだ分かんないの?あんた、分からず屋?」


 カサカサのひび割れた唇が声を紡ぐ度、赤く染まっていく。……きっと血なんだ。あれは結構、痛そう…。

 じゃなくて、人が話した!別に対した事じゃ無いんだけど、ココに来てから人はいるのに話さなかったし。それに瞳に光がある人、ココにいなかったし。つい…。

 その前になんなのよ、この人っ!!こんな状況なのに焦ってないなんて!!


「…人がせっかく話したのに無視かよ」


 自分と同い年もしくは少し年上の少年は溜め息つきながら、奥へと消えていこうとしていた。


「あ、あぁ!ご、ごめん!!

ねぇ!これは一体…どういう事なのっ!?」


 少年は自分の首をさすり、銀色に鈍く輝く首輪と手錠を見せつけてきた。

「…あんたも、同じの付いてるよ」

 言われて、すぐに首をさすると少年と同じものが自分にも付いていた。あんまりにも服装は昨日のままだったし、思ったよりもパニック状態ので今まで分からなかったらしい。

「俺もそうだった。ただ旅して宿屋に止まっただけなのに、ココにいた。それでこれだぜ?ココにいる奴、みんなそう」

「…な」

「なんで?知らねーよ。俺も聞きたいぜ。

 俺はココに結構いるが、なんでココにいるのか訳分からん。知るか。知ってんのは、ココは密売、奴隷倉庫だって事だけ」

 …ん?今、妙なコトバが…。

 ……。

 その意味を理解するのに、少し時間が

かかった。

「え、えっーー!!ウッソーー!!」

「いやいや、ホントホント。だって、俺聞いたし。前、ココにココの関係者が放り込まれてネタバレしてて、そんでどこかへ連れて行かれたぜ。あのおっさん、今頃何しんのかな…」

 人が真っ青になりながら聞いているのに、彼はケロリとしていた。まるで、そんなの平気だという感じ。  

「……」

 何も言えず、目の前の檻を見た。一か八か。やってみない事より、やってみる事が大切だろう。覚悟を決め、檻の柱に近寄った。

「何すんの?何してもムダなんだぜ?」

 振り返れば少年は呑気に胡座を掻いていた。そんな言葉を無視して、わたしは鍵穴を探した。昔、パパに教えてもらった事がある。鍵が無くても鍵穴を開ける方法。…犯罪に使われる事が多いが、この際なんのその、緊急時だ。きっと大丈夫。うん、きっとそのハズ。

 わたしは昔から靴の下に渦にされた針金が付いている。これは、おばさんが雪の日とかに効くんだって言ってた。こうすれば、スパイク変わりになるからって。もう季節ハズレだけど面倒くさくて、外すのは忘れてたんだ。でも、今、好都合。貧乏人臭いけど。靴から器用に針金を外していく。

 ふと突然、思った。…もし、出れたら可愛い格好したいな…と。スカートとかワンピースとか着たいなぁ~なんて。でも、わたし…パパとかにお願い出来ないや。だって恥ずかしいもん。何も言わないから、パパが決めた物を着ている。今だってシャツにジーンズ。男物ばかり。別に嫌いな訳じゃない。モデルとか綺麗な人が着ているのと同じだから。でも…一度くらい、また可愛いの着たい。というか、女の子ぽっい事したい。

 物欲捨てて、針金持って探し当てた鍵穴に突っ込む。薄暗い中、手元を操るのは凄く大変。てか、普通にやったら、これ犯罪。あ、でも、ココ自体もう犯罪行為なんで、もう正当防衛だと思っていいよね?ね?もう、いいよね?…なんか、自分が正しいのか正しくないのか、よく分からなくなってきた。

 とりあえず、わかった事がある。ココは危険だ。ただ、それだけはよく分かる。






 もう少しで取れると思ったのに、檻の外から足音が聞こえて忙しいで針金を隠した。…少年いわく、一時間にいっぺん見回りに来るんだって。……わたし、この作業するの初めてなんだけど?だ、だって、いつもしないし…いくら機械いじり最近するようになっても上手じゃないし。大体、一時間で開けられる訳無いでしょっ!!だって、鍵穴1つじゃないんだよっ!?何個あると思う!?

3個よ!!3個っ!!しかも複雑で素人が開けられないようになってんの!!こんなの素人が一時間で出来る事じゃないわ!!今だって一個も開けられないんだから!!今度こそ泣きそうになりながら、ただ見回りに来た男が立ち去るのを待っていた。




 ……ママ、パパ…。わたし、頑張って外に出てみるよ…。そして、おばさん…なんでいなかったの?おばさんさえ来れば……。マイナス思考を中断して、今やるべき事を考えた。見回りに来た男はいなくなった。とりあえず、まず制限時間は一時間。








 さて、どうするか?

 そんなの…。

 答えはとっく昔に、もう決まっている。

 隠していた針金をポケットから取り出した。



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