檻
…やっと復活出来た!!
おばさんはあの後すぐに突然、霧のように消えてしまった。まるで映画に出てくるお化けみたいに。…わたしがお化けニガテなの知ってるくせに。ひどいよね、おばさん。何アレ?言いたい事だけ言って逃げる人って、正直とても困るわ。
…そっから、とりあえず、まず隣国の入国ゲートに行くまでが大変だった。支度してパパからもらった鍵で戸締まりしたのは良かったけれど、道に迷って隣国じゃない方向に向かってしまった。そのせいで、結構周り道して大変。わたしは方向音痴なんかじゃないだけどね。…たぶん。
何個かの信号機を左右に行って、道端の人に聞きまくり、やっと隣国への入国ゲートに到着。入国審査を受けて、入国審査の結果を待つ列に並んでいる。
なかなか進まなくて結構、疲れる。眠たくなる顔を少し叩いて、目を覚まそうとするけど、全然意味が無い。うぅ…やっぱり冷水浴びなきゃいけないのかな…。
あれから随分、時間が立つ。空を見上げれば、夕暮れ時。
あと数時間しか無い。もう時間無い。早く外へ逃げないと。時計の針が回りきれば、もう明日だ。明日までにはココから出なければ。
「はぁ~」
それにしても眠たい。物凄く眠い。
そして、遅い。何が遅いかというと、もう何時間も経つのに全くと言って良いほど列が進まない。遅い。眠たい。
あー……。重い目蓋をこすり、パチパチさせる。何もする事が無いので(だって、面白い事ないんだもん)、流れゆく雲をまた、ぼーっと眺める。雲の形を見て、あれはアイスクリーム、向こうは猫だとか、想像しながら見ていた。結構、想像するって案外、面白い。雲のおかげで、眠気が晴れてきた……かも知れない。うん、そんな気がする。
しばらくして、軍服を着た受け付けの男性から入国許可証をもらい、やっと施設から出れた。清々しい空気が身体を抜けていくのが分かって、気持ちいい。今まで、ずっと湿気籠もったよどんだ空気ばかり吸っていたから、本当にすっきりする。
…パパが失踪し、変な人から電話かかってきて、(本当はしちゃいけないのに)その人の話を鵜呑みにし、変な物を発掘してしまった(しかも、なんと公共物を壊して!!…絶対、バレたら叱られる)。そしてパパのお姉さんに会って、パパのこと言われて、わたしが人魚のハーフだと爆弾発言された「今日」(だって、そんな事をみんなが知ったら、わたし絶対に研究所とかに送られてしまうよ)。でも、わたしが人魚なんて…今だ信じられない。嬉しいけど、何だか怖い。
…そんな事より。これから、わたし、どうしたら良いんだろう?まー…とりあえず、何とかなるよね!うん、きっと。やるべき事を考え、近くの時計塔を見上げる。えー…と、え!?も、もうこんな時間なの!?
時計の針は、6時ぴったし。普通、この時間はもう閉館時間。それに、初めて来た土地で、すぐに目的地に着けるとは思えない。もうダメかも知れない。こうしている間にも、時間は進んでる。
でも、おばさんと約束したから…。……でも、ベストを尽くすべきね。だって、やってみなければ、わからないよ。きっと、やってみれば、何か変わるかも知れないし。
目を細めて、何か手掛かりになりそうな物を探した。
ちょうど目の前、時計塔の下に街案内所があり、その戸口に沢山の無料地図が飾られていた。走って近くまで行き、その地図を一枚抜き取って、忙しいで国立図書館の場所を探す。国に1つしか無い図書館だから、すぐに見つかるハズ。でも、なかなか見つからない。
あった!!
プチ観光地として有名場だったらしく、大きく見出しがあった。ここから遠過ぎない、むしろ、結構近い。
街案内所の横に止まっていた黄色のタクシーを捕まえて、目的地まで飛ばしてもらう。しばらくして、目的地に到着した。お釣りはいらないと言って荷物を担ぎ、タクシーの戸を思い切り閉める。
目的地である図書館は、まだ閉館時間じゃなかったらしく、まだ開いている。
古びた赤レンガが特徴の隣国の国立図書館。その建物の入口にある金色のドアノブを引き、中へ入る。茶色と赤の広い空間を、慌ただしく走る。近くにいた人達が不愉快そうに、わたしを見る。…まー…確かにルール違反だけど、今のわたしは約束を守らないと。
茶色の木製螺旋階段を駆け上がる。3階まで飛ばして行き、ヨタヨタしながら最上階の4階を目指した。最初に飛ばし過ぎて疲れた。でも、約束守れば、もう終わりだし…。やっとこさっとこ4階まで上がると、図書が並んだフロアではなくて、全面透明ガラスのひらけたフロアに出た。今までの赤と茶色だけの空間とは違い、……灰色のフロア。
所々に椅子と机が設置してあり、様々な年代の人達がそこでそれぞれの行動をしている。図書館だからなのか、みんな静かだ。
そんな中、静かに歩くのだが、おばさんはなかなか見つからない。…わたし、おばさんの約束を守ったのに、彼女がいない。あの人、自分から約束してきたのに、自分で約束破った。
でも…もしかしたら何か事件が起きて、それに巻き込まれて、来れないのかも知れないし…。それに、たまたま、わたしが来るの早かっただけかも知れないし。
よし、次はちゃんと連絡取れるようにしよう。そうすれば、こんな嫌な思いしないハズだ。閉館時間まで待ってみよう。あの人の事だから、きっと、またヒョコリと顔を出すに違いない。
そう思って、近くにあった椅子に座る。今、仮に外出たとしても、わたしはやる事が無い。なら、ここにいた方が良い。
すでに夜の色に染まっている空には、星が瞬き始め、全面透明ガラスを通って星の光が入ってくる。
結局、閉館時間が来ても、おばさんは来なかった。何故来なかったのかな?わたしには理由がわからない。だけど、きっと何かあって来られないだけだろう。
それより、とりあえず、どこか泊まる場所を探さないと。黄色のタクシーを一台捕まえ、運転手に安い宿屋を教えてもらい、そこでチェックインした。小さな部屋の窓際で、椅子に腰掛け外を眺めている最中。
「…ふぅ~、何だったのかな…今日って」
売店で買ったばかりのオレンジジュースを一気に飲み干して、パパがくれた変な形の鍵を見つめた。
「…わたしには分からないよ、パパ。なんで、いきなり消えたの?ママもママよ。あと、おばさんも。なんで、みんないなくなるの?」
鍵なんかに問いかけても帰って来ない。だって、答える口なんていないんだから。でも、何故か言いたくなった。…なんか、もう訳分かんない!もやもやした頭を抱えて、自分に腹が立った。
そんなわたしをなだめるように、鍵がキラリと輝いてみえた。イライラして鍵をベッドに放り投げた。
ポケットに入れたままの石を取り出して、ライトにかざしてみる。それにしても綺麗な石。
鍵
パパ
失踪
赤い石
人魚のハーフ
自分の周りで色んな事が起きている。渦中にいることは分かるのに、渦が大き過ぎて飲み込まれてる気がする。
などと、また真っ黒な空を見上げて、うっすらと光輝く星達を探した。




