パパ行方不明 2
今とにかく走ってる。どこへって?自分でも、よく分からないよ。
う~ん、でも、さっき変な人が「市立図書館へ行け」って言ってたから、とりあえず行ってる最中。まーでも、知らない人の言う事は本当は聞いちゃいけないだけど、なんかパパに関係してる口調してたんだよね。だから、無視出来なかった…わたしがただ単にパパの事を気になっているから、そう思っちゃただけなんだろうけど。
上を見上げれば、曇り空。雲が太陽を隠していて姿なんか見えない。少し風が強いせいか雲がドンドン移動していく、その時。厚い雲の隙間から零れる太陽の光。…なんて綺麗なんだろう。もしパパやママが見てたら喜んで、きっと写真を撮りまくるだろうね。
スニーカーの靴ひもがほどけて邪魔になってたのを思い出して直した後、走るのをやめた。あと、それに、わき腹が痛くなって辛くなって走れなくなったから。
数分後、市立図書館前の公園前に立っていた。…公園と言っても図書館が立ってるせいか昔の貴族が住んでいたような大きな庭のようにも見える。
図書館の入り口までグリーンアーチが続き、左右や上まで緑色。まるで迷路みたい。今どこら辺に立っているのか、よく分からない。
しばらく歩くと、赤、ピンク、黄、紫…色とりどりの花が緑の森を着飾っていった。しかも、必ず花の中心に寂れた石像がおいてある。人はもちろん、動物、よく分からない物体…様々な黒い石像。
…たぶん図書館まであともう少しだろう。
しばらくして立派な噴水が見えてきた。水の中に色んな石像が立っている。ここにも石像…どんだけあるの?人の他に動物なんかもある。どの石像も先程見たものと違い、すべてが白い。それに、今にも動き出しそう。生き物をそのまま像にした…ような像。
不意に足元を見ると、何かの矢印。よく見れば、方向を示す矢印だった。そこで、さっき変な人がいってた方向…『東』を思い出す。その方向を探しても、『赤い瞳の獣』がどうも見つからない。…やっぱり、イタズラ電話だったのかな。
お腹が減って一旦帰ろうかなと思った時、太陽が雲から顔を出した。金色に似た太陽の光が目の前の石像に当たる。ハッとして電話が言っていた言葉を思い出す。
「…え、えっと…『金色の光を浴びた獣』」
様々の石像の中、忙しいで動物の形をした物を探す。今ここにある石像の中、動物の奴はたくさんある。でも、その中で東を向くのは4体。カラス、鹿、ライオン、孔雀。
あとの条件は…えっと…何だっけ。リアの頭はめまぐるしく動き始めた。
「あ!赤い瞳!!」
焦ってて眺めているうちに、ドンドン太陽がまた雲に隠れていく。戸惑いつつも、噴水の塀に立った。本当はいけないんだけど、この際、どうでも良い。4体の目の前に立って、それぞれの瞳を覗き込む。…4体すべて、赤い瞳だった。
「これであってるハズなのに!?」
思い出せ自分!!
金色…太陽を浴びた獣。
それは赤い瞳。
東を向いて…
…なんか忘れてる。
頭をフル回転させて、やっと思い出した。……そうだ!!『上』だ!!
「…上って…どれ~!?」
パニックになりそうな頭。情けない事に何だか涙が出そうになる。慌てて袖で目元を擦った。その濁った視界の中でー…
「あ、あったーーーー!!
カラスーー!!」
思いっきりジャンプしカラスの石像に着地…出来なくて噴水の池に落ちた。でも、すぐに立ち上がって石像を見上げる。石像の少女の頭に行儀良く座る白いカラス。リアは石像に謝りながら、人目を気にしながら、石像に登る。それで、カラスの石像の瞳を覗き込む。
…あれかな?
近くで見ると、他の4体の石像と違う事がよく分かる。赤は赤でも、血のように赤い色をしているカラスの左目。恐る恐る、手を伸ばし、そっと左目を触る。微かに、左目から何か音がした。まるでドアを開ける時みたいな音。適当に、ちょっとずつ左に傾けると、カラスの石像から左目が落ちた。右手にずっしりとした重さ。よく見ると、自分の手に収まる大きな赤い石…。カラスの左目だった所は、目が無くなっていた。
何故か罰が悪くなり、忙しいで石像から離れ、噴水の縁から飛び降りる。
赤い石を握り締めたまま、市立図書館前まで走り、重いドアを開けて、中に入る。人の気配の無い館内。聞こえるのは自分が歩くと軋む床の音だけ。赤い石をズボンのポッケットに突っ込む。
図書館独特の臭いが部屋に充満してる。どこもかしこも、古い本が本棚にきちんと並んでいる。そんな時、目の前に頭から足元まで黒いマントで身体を隠した者が立っていた。顔も隠しているのに、それが誰だかすぐにわかった。パパのお姉さん…わたしから見れば伯母さん。
「…おばさん?」
その人は返事する変わり、フードを脱ぎ、わたしと目を合わせた。
「そうよ」
伯母はそう一言だけ言い微笑んだ。だが、次の瞬間、その笑みは消えた。
「時間が無いから、よく聞いて、リア。協力してくれて、ありがとう。何から話たら良いのか分からない。
貴女のお父さんと私達はある事をして、ある人達に殺されそうになってるの。家族を巻き込む訳には行かなくて、貴女のお父さんは1人で行動してるわ。帰ってくるのは、たぶん遅いわ」
服の上からぎゅっと鍵を握った。
ねぇ、つまりこういう事?ある時まで家族は誰1人帰ってこない。わたしの家族は何か悪い事したらしい。なら、関わりない方向が良いじゃないか。何故、そこまでして変な事に付き合うのか、理解出来なかった。それに迷惑かけるから単独行動するんじゃなくて、迷惑かけて皆で助け合うーーなんて事ダメって誰が決めたの?ちょっと…いや、かなりイライラする。ずっと前、こういう事を学校で聞いたのを覚えてる。私達の国では「人に迷惑かけないように生きなさい」といつも教えられる。でも、隣国は「あなたは他の人に迷惑かけて生まれてきた。精一杯、自分らしく輝いて生きて行きなさい」と言われるだって。だから…。
「リア」
いきなり伯母に声をかけられ、慌てて我に返る。
「な、なに?」
「色々と考えてるようだけど、あなた悩みする時間が多すぎる。それは良い事もあるけど、サッサと行動する時間が少なくなるわ。
…それから、今から貴女も家に帰れなくなった」
「どういう事?」
伯母は返答せず、ただ私の頭を撫でてきた。
「あと数時間しかない。早くカルミア町から逃げないと。じゃないと、貴女も殺されてしまう。
いいこと?私は貴女一緒に逃げられない。だから、1人で隣国の国立図書館に逃げて。そしたら、迎えにいくわ」
「また図書館なの?」
げんなりした。…わたし、図書館好きじゃないんだ。皆が読んでて、好きな時に読めないから。
「図書館は私達の基地のようなものよ」
そう言ってウィンクした伯母。こういう仕草をとると、なおさら年齢不詳に見える。
「わかった…何とか外へ出るように頑張ってみるよ…捕まらないように頑張る」
伯母は静かに頷く。
「…ただし、今の世の中は変だから気をつけること。ほら、前あったでしょ?密売とか人売りとか。あまり夜の行動は控えなさい。…それと、明日になる前に必ず、この国から出なさい。さっきの品物と鍵を持って。いいわね?」
「はーい。…おばさん達こそ、変な事してるんじゃない?だって、子供にこんな事させるなんて」
皮肉ぽっく呟くと、伯母はただ困ったように笑った。
「ごめんなさいね」
「いいよ。その変わり、1つ教えてよ。伯母さん達は何してるの?」
「それは言えない」
即答された。
「ただ言えるのは、そーね。貴女は普通の子供じゃないって事」
「え゛」
…って事は良い子じゃないって事?いや…でも、少しは頑張ってた気がしてたんだけど。
「変な風に受け取らないで。
…貴女のお母さんは…翡翠色の人魚よ。人間であるお父さんと貴女のお母さんが出会って、貴女が生まれた。貴女は、人間のルールや人魚のルールを破って生まれた子供。…お父さんとかに聞かされてなかったの?」
頭が真っ白になった。
わたしが人魚と人魚の子供?
昔、人魚がこの世界にいたとは知っていた。だけど、人間のせいで絶滅したと言われてる。まさかまさか、自分が半人半魚なんて…。もし、みんなが知ればわたし…どうなってしまうんだろう?
「貴女の出生や私達の事情で、貴女も追われる身になった事…お父さん達の代わりに謝るわ」
金の短髪がさらりと揺れ、亜麻色の瞳を瞑る伯母。
「…でも、わたし…水嫌いだよ?溺れるから、でもお母さん…水泳うまかった」
伯母は吹き出して笑った。
「だって人魚だもの。貴女が人魚の一族としての力が出るのはいつの日か…楽しみだわ」
「泳げないからって馬鹿にしてるでしょ!?良いよ、浮かべられるように頑張るもん!!」
見事に膨れた姪を眺め、辺りを見渡す伯母。緑色の薄い冊子を姪に押し付けた。
「隣国に行く時にコレを使うように、パスポートよ」
最初からこういう風に書けば良かったな~
今回の「人に迷惑~」の所は、インドの名言を変えて使いました~
本来なら「お前は人に迷惑かけて生きているのだから、他の人を許してあげなさい」です。
が、自分がやりたいように変えました~




