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第一章 ①何の変哲もない世界


二人は同時に後退り、ある程度の距離を保つ。

ギリギリ蹴りが届かない距離、もちろんパンチも。

この距離感は流石というべきだろうか。どちらかが攻撃を仕掛ければこの距離であるならカウンターを取るのはそう難しくはない。

戦闘慣れしている二人にとって、今の状況は先手を取った方が不利なのは明白だった。



「ああ、クソ! こうなったら、いくしかねぇだろうが!」


先手側が不利なのは承知の上で、突っ込んでくる。

――いいね、熱いじゃないか!


瞬時に俺の目の前へと移動し、地面に左手をつけ、重心を手に移動させる――下から蹴りをだすつもりらしい。

俺はその動きを冷静に見た上で、相手の足が届かないギリギリの距離を取る。

ここまでは相手も予想していたのだろう、すかさず――


「まだだァ!」


今度は右手を地面につけ重心を移動させながら体を回転させ、蹴りが空ぶったままの勢いを利用してもう片方の足を、俺の死角へと楕円を描きながら伸ばしてくる――!


俺は、相手の素早い重心の変更に関心しながらも、今度は少し大きめに距離を取る。


その最中、相手の顔が得意げになっていたのを俺は見失わなかった。




「はははは、さすが、さすが! そうこなッくッちゃな!」


相手は体制を崩しながらも両手を地面につけ、手に力を込めた。



(―――! まずい、くる!)


 

相手は両手に力を籠め、手をばねの様に使い、俺の方向に飛んでくる――!


俺はすぐさま、軌道を計算して回避を試みる――が、間に合わない!



「くっ!」


回避が間に合わないと判断した俺は、咄嗟に防御体勢に入ったものの、傷を負ってしまった。




だが――。


「……ははは、やっぱり効かねぇか……」


どうやら、この程度の傷しか負わせられなかったことを悔やんでいるらしい。


悔やむのも無理はない。相手は危険を承知で先手を取ったのだ、チャンスは一度しかなかった。


だから、さっきの一撃で、ある程度の隙を生み出せるくらいの傷は与えなければならなかった。


(たしかに、傷は負った。だけど、怯むほどじゃない)


現に、相手は体勢を崩しているのに対して、俺は戦闘態勢に入っていた。



――ここから先は殆ど、一方的だった。





◆◆◆




「――…はあぁ、まーた負けちまった、何でそんなに強いんだ? チートくせぇ」

戦闘用小箱ファイティングカプセルと呼ばれるものから出てきたスタイルのいい、優男は開口一番そう言った。



「お前は落ち着きがなさすぎるんだよ。だから要所要所でミスが出たりする」

同じく戦闘用小箱ファイティングカプセルからでてきた中肉中背の眼鏡をかけた男は苦笑しながら答えた。



「にしたってよぉ、俺たち人間だろ? ミスぐらいするって」

「まぁ、そうだけどさ」

「でも、和久かずひさはミスしないじゃねーかよ?」

「俺はホラ――、こいつを愛してるし」



戦闘用小箱ファイティングカプセル現実戦闘リアルファイトを指さす。


リアルファイト――。

ファイティングカプセル同様、安易でふざけたネーミングだと思うが、ゲーム性がピカ一なもんで人気がある。


少し詳しく説明するとリアルファイトっていうのは最近はやっている格闘ゲームだ。

さっきのカプセルに入って目をつぶれば、ゲームが終わるまでバーチャル空間に移動してバトルできる、ってなゲーム。

殴る感覚や、殴られる感覚、全部リアルに感じれるっていう素晴らしいゲームだ。。

ゲームのキャラの身体能力はユーザーに依存しているので、プレイする人がいればいるほど、キャラの個性は広がっていく、ってのもおもしろい。

カプセルから出たら傷は消えてるし痛みはない。もちろん生身より身体能力は格段に上がってるし、現実で喧嘩するのと比較してみると、やっぱりゲームの方がいい。

  

最近は友人の和樹かずきとゲーセンに篭ってコレばっかりやっている。


 

「俺だって愛してるっつーの。けど、愛でなんとかなるようなゲームじゃねーでしょうが」



和樹は一見、モデルみたいな体系に見えるが、服の中にはすごい筋肉が隠れている。

だから、ゲーム内の和樹はパワータイプって感じなんだろう。

実際、和樹の殴りをモロに食らえば、俺なんて一発で倒れそうなもんだ。

一方で、力任せのプレーをしてしまう欠点もあるが……。 

 

「……それにしても、やっぱコレはおもしれーな。何時まで経っても飽きねぇ」

「俺も相当やってるけど、お前の場合いつ見てもやってるもんな?」

「まあな。しかも利用料金は月額利用料だけだろ? 本当、サイコーだ」



リアルファイトはゲーセンでは珍しく利用料は定額制になっている。しかもその定額料はあまり高くない。どうやって利益を出してるのか疑問に思うぐらいだ。



「っつっても、科学の進歩はすごいよなー。こんなの出るなんて、一年前まで想像もしなかったわ」


それについては、不思議な点が多い。バーチャル空間に人が移動できる技術はたしかに、すでに確立されてはいる。

けど、こんなにすぐ実用に持っていけるはずがない。なんせ、バーチャル技術の特許の申請から半年しか経っていなかった。費用も莫大な物になるはずだ。

……普通ならそうなのだが、発売から一年経っても、いまだ事故などは起こっていないし、発売元メーカーはしっかりと利益をあげているらしい。



「ま、でも。楽しいし、安いんだし、あんまり気にしないほうがいいか。事故だってまだ起こってないしさ」

「はあ…、和樹は相変わらずだな」

「いいんだよ、俺はこれで。というか、もう一ゲームしていこうぜ?」



和樹の心の移り変わりの早さに苦笑しながら

――それもそうだな、なんて、俺は無意識に心に言い聞かせていた。

 

 

 

 

 

 

 




ゆっくりになるかもしれませんが頑張って更新します。

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