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小さなダンボール箱がはじめて届いた日のことを覚えている。
玄関を開けたら、扉の横の壁に置かれていたその箱に宛先はなかった。
外に出るには少し邪魔になるため、ひょいと持ち上げて玄関の中へ。
まだ少し、時間に余裕がある。
中身が気になった私は、この中に送り状でもいい。
せめて手紙か一筆箋でも入っているのを期待していた。
通常の宅配の場合、手紙(封書)を入れるのは法律でも禁止されている行為。
しかし、一筆箋の1枚、もしくは封筒ではなくファイルに挟んで入れるなら許されているけど……
宛て名がないということは、誰かが直接届けにきたということを意味している。
業者を通した宅配の荷物ではないため、手紙(封書)をいれても違法にはならないと思ったから。
互い違いで閉じられたその箱の蓋を開けてみると……
帯封のされていない現金が詰まっていました。
そして期待していた一筆箋や手紙、送り状すらも入っていなかった。
差出人も分からなければ、送り主も分からず。
一先ず、時間ギリギリになってしまったため、この不思議なダンボール箱をクロス組みで蓋をした私は慌てて出かけた。
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帰宅したら、出かける前と同じ場所に同じ大きさのダンボール箱が置いてありました。
玄関を開けて中に入れる。
うーん、私宛てで良いんだよね?
ふたたび組み合わさったダンボールの蓋を開くと……こちらにも一万円札が。
新札と旧札が混ざっているものの、やはり帯封がなく使用感がある。
しかし前回同様、送り状も入っていないから確信が持てず。
とりあえず、今朝届いた箱も含めて2箱を玄関に置いたまま室内へ。
手洗いや着替えなどを済ませた私がテレビをつけてから始めたのは、お札をまとめることだった。
性格上、こういうのは放って置けない、というよりは「どんだけ入ってるんだろう」という好奇心の方が大きい。
警察に届けるにしても、正確な金額は必要になる。
仕事で大金を扱ったことあるけど、ここまで多いと実感がわかなくなる。
まるで人気ゲームのようだ。
料理やお菓子づくりで使っているビニール製の手袋をしたのは、紙幣で手が汚れるのを避けるため。
近くにはウェットティッシュも用意した。
床に新聞紙を敷いて、その上にダンボールを置いた。
まず新札と旧札に分けてから、10枚ずつの束にしていく。
10枚目を二つ折りにして9枚の上から被せる形だ。
それを10組つくって、輪ゴムで一括り。
これで100万円の束が完成。
最初の箱に入っていたのは2,800万円弱。
次の箱は3,000万円+α。
これって本当に拾得物(落とし物)で処理していいのだろうか。
テレビでは地域のニュースが流れている。
しかし、現金が奪われた、なくなった、落とした、置き忘れた。
そんな話はついぞ流れることはなかった。
現金は事件性がないと考えていいだろうか。




