シンデレラと魔法使いと。
わたしは普通の貴族の令嬢だった。
でも――――
父が、わたしの継母を連れてきた。二人の義姉を連れてきた。
母と父とわたしで写っていた家族写真は母の場所に継母が、義姉たちとともに写っている。
そして、父がいなくなる。
気づけば家族写真に写っていたのは、わたし、継母、義姉二人だった。
使用人のように仕事をする。
閉じ込められたことさえある。
戸を必死で叩いて、「出して、出して」と言っても帰ってくる言葉は「駄目よ」ただ、それだけ。
わたしは、なにか悪いことをしたのだろうか?
数年の月日が過ぎた。
「早く準備しなさい、シンデレラ」
義姉がわたしを呼ぶ。いつのまにか、わたしの名はシンデレラになっていた。
その程度、別に構やしないけど。
わたしが義姉のドレスを着せると、わたしはとっとと「終わりました」と言って掃除を始めた。
義姉はわたしがドレスを着せている間、ひたすら自慢をしていた。
「アタシ、今日は王城で開かれるパーティに行くのよ。あなたはきっと無理でしょうけれどね」と。ヘッタクソなおほほほと笑いが少し面白かった。
思い出して、わたしはふっと笑う。
パーティ?わたしには関係ないわよ。
夜になって、部屋で休もうと思い、本を読み始めた時、自然と窓に目が行ってしまった。
わたしの瞳に明るく照らされた秀麗な城が映る。
あーあ。ここには王太子がいるのよね。いい服着て、美味しいもの食べられる。そして、義姉たちはあそこに行けるのだ。
ふいっとわたしは視線を本に戻す
「本当に、泣くつもりなんてなかったのに」
頬をつたる涙が気持ち悪くて、腕で乱暴に拭う。
「本当は、パーティに行きたい」
本心を吐露しても、何も変わらない。ただ、溢れ出る涙の量が増えるだけ。虚しいくらいに泣いても、それこそなにも生まないし変わらない。
わたしは再度窓を見る。すると部屋の中に女性がいた。夜空のような黒い髪と、透き通った海のような碧い瞳――そして暗闇に溶け込むマントを、わたしは見た。
彼女はわたしをみると、ふっと笑い、言った。
「願いを言ってみな。魔法使いである、私が叶えてやろうぞ」
脳が、揺れる。
――何を、言っているの?
訳がわからなかった。でも、縋りたくなってしまった。
わたしは彼女に言った。
「パーティに、行きたい」
魔法使いは容易いことのように、言う。
「構わないとも」と。
これはなんの冗談だろう。
彼女はわたしに魔法をかけてくれた。
ボロボロの服が美しいドレスになる。
最後に、彼女はガラスの靴をくれた。
「なぜガラスなの?」
「…………割れそうだよな」
「ええ」
わたしが頷くと、彼女――魔法使いはわたしをまっすぐに見る。魔法使いの赤い唇が動き、言う。
「だが、綺麗だろう」
ふっと、初めて彼女が笑う。
「割れたら意味ないでしょ、魔法使いさん」
彼女は右手の人差し指を左右に振る。
「ちっちっち〜。私の魔法で強化した。だから大丈夫なんだ」
楽しそうに、言う。
「君の名は?」
魔法使いがわたしに訊く。
「わたし?わたしはリン………いや、シンデレラよ」
「シンデレラ?灰かぶり、か」
彼女は顔を顰めた。
わたしはそんな彼女に安心させるように言う。
「ふふ。わたし結構この名前気に入ってるのよ。だって、灰かぶりってことは、わたし、それだけ頑張って仕事してるってことでしょう?」
そんなわたしをみて、魔法使いは小さく笑う。
「そうか……シンデレラ。『魔法』は十二時にとけてしまう。だからそれまでにここに帰るんだぞ」
わたしにそう忠告してくれた。
わたしは「ありがとう」と彼女にいい、彼女が魔法でつくった馬車に乗って城に向かった。
綺麗な城が近づいてくる。
――わたしは、今城に向かっているんだ…………
そう思うと、嬉しくてたまらない。
城に着いたら、招待状を見せて入る。宮殿は恐ろしい程綺麗だった。一流の壁画、一流の音楽。全てが揃う場所で――わたしは王子さまに出会った。
「僕と、踊ってくれないか」
姉のやっていたレッスンを思い出して必死に踊った。わたしは一度だけ彼と踊って、十二時の鐘と共に、姿を消す。
楽しくてたまらなかった。
ドレスが消えても、思い出は残る。
――ガラスの靴は、片方消えてしまったけれど。
連載も書いてます。
↓リンクです。
https://ncode.syosetu.com/n4082ma/
「手紙の魔女」
〜あらすじ〜
ある山の上にある質素な家。そこには手紙の魔女と呼ばれる女性がいた。魔女は毎月訪れる配達員の少年から手紙を受け取り、全ての手紙に返事を書く。時には差出人のもとへ赴き、謎や事件を解決していく。
いつしか彼女は手紙の魔女と呼ばれるようになる。
この物語は手紙の魔女メイと、配達員の少年、その同級生の少女たちによる異世界ミステリー。
よろしくお願いします〜




