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シンデレラと魔法使いと。

掲載日:2026/04/22

 わたしは普通の貴族の令嬢だった。

 でも――――

 父が、わたしの継母を連れてきた。二人の義姉を連れてきた。

 母と父とわたしで写っていた家族写真は母の場所に継母が、義姉たちとともに写っている。

 そして、父がいなくなる。

 気づけば家族写真に写っていたのは、わたし、継母、義姉二人だった。

 使用人のように仕事をする。

 閉じ込められたことさえある。

 戸を必死で叩いて、「出して、出して」と言っても帰ってくる言葉は「駄目よ」ただ、それだけ。

 わたしは、なにか悪いことをしたのだろうか?




 数年の月日が過ぎた。

「早く準備しなさい、シンデレラ」

 義姉がわたしを呼ぶ。いつのまにか、わたしの名はシンデレラ(灰かぶり)になっていた。

 その程度、別に構やしないけど。

 わたしが義姉のドレスを着せると、わたしはとっとと「終わりました」と言って掃除を始めた。

 義姉はわたしがドレスを着せている間、ひたすら自慢をしていた。

「アタシ、今日は王城で開かれるパーティに行くのよ。あなたはきっと無理でしょうけれどね」と。ヘッタクソなおほほほと笑いが少し面白かった。

 思い出して、わたしはふっと笑う。

 パーティ?わたしには関係ないわよ。


 夜になって、部屋で休もうと思い、本を読み始めた時、自然と窓に目が行ってしまった。

 わたしの瞳に明るく照らされた秀麗な城が映る。

 あーあ。ここには王太子がいるのよね。いい服着て、美味しいもの食べられる。そして、義姉たちはあそこに行けるのだ。

 ふいっとわたしは視線を本に戻す

「本当に、泣くつもりなんてなかったのに」

 頬をつたる涙が気持ち悪くて、腕で乱暴に拭う。

「本当は、パーティに行きたい」

 本心を吐露しても、何も変わらない。ただ、溢れ出る涙の量が増えるだけ。虚しいくらいに泣いても、それこそなにも生まないし変わらない。

 わたしは再度窓を見る。すると部屋の中に女性がいた。夜空のような黒い髪と、透き通った海のような碧い瞳――そして暗闇に溶け込むマントを、わたしは見た。

 彼女はわたしをみると、ふっと笑い、言った。

「願いを言ってみな。魔法使いである、私が叶えてやろうぞ」

 脳が、揺れる。

 ――何を、言っているの?

 訳がわからなかった。でも、縋りたくなってしまった。

 わたしは彼女に言った。

「パーティに、行きたい」

 魔法使いは容易いことのように、言う。

「構わないとも」と。

 これはなんの冗談だろう。

 彼女はわたしに魔法をかけてくれた。

 ボロボロの服が美しいドレスになる。

 最後に、彼女はガラスの靴をくれた。

「なぜガラスなの?」

「…………割れそうだよな」

「ええ」

 わたしが頷くと、彼女――魔法使いはわたしをまっすぐに見る。魔法使いの赤い唇が動き、言う。

「だが、綺麗だろう」

 ふっと、初めて彼女が笑う。

「割れたら意味ないでしょ、魔法使いさん」

 彼女は右手の人差し指を左右に振る。

「ちっちっち〜。私の魔法で強化した。だから大丈夫なんだ」

 楽しそうに、言う。

「君の名は?」

 魔法使いがわたしに訊く。

「わたし?わたしはリン………いや、シンデレラよ」

「シンデレラ?灰かぶり、か」

 彼女は顔を顰めた。

 わたしはそんな彼女に安心させるように言う。

「ふふ。わたし結構この名前気に入ってるのよ。だって、灰かぶりってことは、わたし、それだけ頑張って仕事してるってことでしょう?」

 そんなわたしをみて、魔法使いは小さく笑う。

「そうか……シンデレラ。『魔法』は十二時にとけてしまう。だからそれまでにここに帰るんだぞ」

 わたしにそう忠告してくれた。

 わたしは「ありがとう」と彼女にいい、彼女が魔法でつくった馬車に乗って城に向かった。

 綺麗な城が近づいてくる。

 ――わたしは、今城に向かっているんだ…………

 そう思うと、嬉しくてたまらない。

 城に着いたら、招待状を見せて入る。宮殿は恐ろしい程綺麗だった。一流の壁画、一流の音楽。全てが揃う場所で――わたしは王子さまに出会った。

「僕と、踊ってくれないか」

 姉のやっていたレッスンを思い出して必死に踊った。わたしは一度だけ彼と踊って、十二時の鐘と共に、姿を消す。

 楽しくてたまらなかった。

 ドレスが消えても、思い出は残る。

 ――ガラスの靴は、片方消えてしまったけれど。

連載も書いてます。


↓リンクです。


https://ncode.syosetu.com/n4082ma/


「手紙の魔女」


〜あらすじ〜


 ある山の上にある質素な家。そこには手紙の魔女と呼ばれる女性がいた。魔女は毎月訪れる配達員の少年から手紙を受け取り、全ての手紙に返事を書く。時には差出人のもとへ赴き、謎や事件を解決していく。


 いつしか彼女は手紙の魔女と呼ばれるようになる。


 この物語は手紙の魔女メイと、配達員の少年、その同級生の少女たちによる異世界ミステリー。


 よろしくお願いします〜

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