第1楽章:音との出逢い
静岡から引っ越してきました、浅野玲央です」
小さな声で自己紹介すると、教室のざわめきが一瞬だけ止まった気がした。
ちらりと見たクラスメイトの視線が自分に向いているのを感じ、胸の奥が少しざわつく。
まだ少しそわそわして、胸の奥が落ち着かないまま席に腰を下ろす。
そっと深呼吸をして、自分の心を落ち着かせた。
授業が始まると、
隣の席の男子が小さく声をかけてきた。
「俺、大地。よろしく」
その自然な笑顔に、
張り詰めていた空気がふわりと軽くなる。
緊張は消えないけれど、ほんの少しだけ肩の力が抜けた。
――だけど。
授業が進むにつれ、黒板の文字よりも、
自分が“よそ者”みたいに感じる気持ちの方が
気になった。
みんなはもう、この学校の空気を吸い慣れていて、僕だけがまだ立ち位置を見つけられていない。
昼休みになっても、その違和感は薄れなかった。
大地は他の友達のところへ行き、
僕はひとりで教室を出る。
廊下を歩くと、
どこからか風に乗って音が流れてきた。
遠くて、細くて、でもなぜか耳に残る音。
“音楽室の方…?”
足がふと止まる。
なんの音なのか、どんな人が鳴らしているのか、それすらわからない。
でも、胸の奥がかすかに動いた。
この学校で、まだ知らない誰かが奏でている“音”。
理由はわからない。
ただ、その小さな響きが、僕の不安をほんの少しだけ薄めていく気がした。
――気づけば、僕は音のする方向へ歩いていた。




