幼馴染のギャルにチョーカーを着けたら様子がおかしくなった話
Twitterでギャルの謎チョーカーが話題になってたので書きました。
「ふ~ん? 大虎、こういうおっぱい大きな女の子が出てくる漫画好きなんだぁ」
「勝手に本棚漁るなよっ!」
「え~? 別にいいじゃん、減るもんじゃないし。それに、見られて恥ずかしい漫画を棚に飾る方が悪いんじゃなぁい?」
「それは、お前が急に家に来たからだろ……」
「ぷぷ~、ほらすぐ顔真っ赤にしちゃってぇ~。ちっちゃいころから変わんないよねぇ~」
きゃっきゃっと面白おかしく笑いながら、幼馴染の花島茜は放課後帰りの制服姿のまま、俺のベッドを占領して漫画を読み始めた。
堂々と我が物顔で寝転がって見せる茜の姿に呆れながら、俺は仕方なく勉強机に向かいなおし、試験勉強の続きをする。
「で、なんで急に俺の家にやってきたんだ」
「ん~? なぁに? 幼馴染の家に突然来ちゃいけない理由なんてあるの?」
「学校の勉強なら、教える暇なんてないからな」
「あっはっは! 大虎、ほんと勉強好きなのは昔からだよね~! 高校も、なんか偏差値? がすっごいところ通ってるんだっけ? えらいね~。私、試験の勉強なんてしたことないよ~」
「……」
話がかみ合わず、はあ、と俺はため息をつく。
俺と茜は、いわゆる幼馴染だ。同じ病院で同じ時期に生まれたことがきっかけで母親同士仲良くなったのだが、俺の母は真面目を地で行くような手堅い人。一方で茜の母は今を楽しむタイプの派手なママギャル。そんな全く正反対な二人がどうして今でも一緒に遊びに行くくらい仲が良いのか甚だ謎だが、ともかくも幼いころの俺と茜は顔を合わせる機会が多かった。
『あっはは~! だいと、はしるのおっそーい!』
『ぜえ、はぁ……あ、あかねちゃん、まって……』
遊ぶ時もいつだって茜が主導権を握り、俺はそれについていくことだけで精一杯だった。
俺と茜は母親の血筋に正直に育ち、茜はとにかくやんちゃで目立ちたがり。母親譲りの眩しい端麗な顔立ちと快活な性格で、男女問わず人気者だ。
一方の俺はというと引っ込み思案で陰気な気質。地味な顔立ちと頼りない体格で、教室の隅っこでこそこそしているのがお似合いな日陰者。
『大虎~! 一緒にプール行こ~!』
そんな根暗な自分に、茜は当然のように遊びに誘ってくる。それがだんだんと居たたまれなくなって、誘いを断ることが多くなった。
中学校で学校が別々になった頃にはめっきり会う機会が無くなり、そのまま関係は自然消滅するものとばかり思っていたのだ。
それが……
「はぁ~、やっぱり大虎の部屋はおちつくなぁ~」
高校に進学した途端、急に家に遊びに来はじめたと思ったら、部屋でダラダラと俺の漫画を読みふけるようになった。
そっちはそっちでギャルの友達と仲良く遊んでろよ、と言いたくなる気持ちもあるが、ウチの母親はというと久しぶりに遊びに来た茜を大歓迎してしまっており、無下に追い返すこともできない。
なので俺は、茜が心地よく漫画を捲るページの音が耳に入りながら勉強をするしかなかった。
「ね~、大虎、これ次の巻ないの~?」
ごろん、と俺の方に寝っ転がえりながら甘えたような口調で言う茜のほうを、面倒だなと思いながら振り向くと――
「っば、ばっ……お、お前っ……!」
茜の緩んだ制服の胸元が見えてしまい、俺は思わず顔を伏せてしまった。
「ん~? あ……あーっ! 大虎、すけべぇ♪」
胸元を手で隠して軽やかに声を上げながら茜は、耳まで赤くした俺を指さして笑っている。
「お前……せめて、胸元のボタンくらいは締めろよ」
「だって、ボタン締めると苦しいじゃん?」
「いや、そういうことじゃなくてさぁ……」
油断しきった茜のむっちりとした胸の谷間と、かすかに映った黒いブラのレースが頭の中を支配してしまい、もう勉強どころじゃない。
(それに、制服着崩しすぎだし、スカート短すぎだし……。茜の学校の校則、どうなってんだよ……)
正直、茜が時折足を組みなおす度に短い丈のスカートが捲れ、いろんなものが露になってしまわないかとひやひやして仕方がない。頼むから勉強に集中させてくれ。こちとら将来というものがあるんだよ。
「大虎のとこの学校ってスカート長いよね~、あれって校則で決まってるの?」
「決まってるよ。違反したら、生徒指導室でみっちり説教される」
「うわ、きびし~。じゃあ、私みたいに髪染めるのなんて絶対無理じゃんね」
茜は俺の枕に後頭部を預けながら、自分の指で染めた髪先をクルクルと弄っている。窓から差し込む昼間の太陽に、そのこげ茶色の髪がまるで琥珀色の宝石のように光り輝いている。
「そうだよ。一発停学」
「へ~、そうなんだ。大変だねぇ」
俺の学校には、茜みたいなギャルはいない。みんな真面目に校則を守って、毎日勉強をして一流大学に進学するために日々勉強に励んでいるのだ。
茜のように長いつけまつげやリップを付けるような生徒は誰一人としていない。
「ウチの学校さ~、大虎みたいに真面目に勉強してる子誰もいないから、大虎見てると新鮮でおもしろ~い」
「ああ、そうかよ」
さぞ面白かろうよ、と心の中で舌打ちしながら必死に英単語帳に集中しようとする。
「ん~、ふぁぁあ……」
なのに、時折気の抜けるような茜の声が妙に色気あるように聞こえてしまい、スカートや制服がこすれる音、そして自分の臭いが染みついたベッドに顔をうずめたりゴロゴロとしているのを見ていると、集中なんてできやしない。
「……あの、さぁ。俺、試験がそろそろ迫ってるから、一人にさせてほしいんだけれど」
我慢の限界とばかりに、思い切って茜に言ったが……。
「すぅ……すぅ……」
いつの間にか茜はあおむけになりながら眠ってしまっていた。足を開いて胸元がはだけたあまりにも無防備な体勢で眠るものだから、うかつに近寄れもしない。
「はあ、もう……」
漫画読んだり揶揄ったりして、かと思えばすぐ寝落ちする。まったく、どこまで俺の部屋で好き勝手やるつもりだよ。
とはいえ、眠ってくれているのなら好都合だ。今のうちに勉強を進めてしまおう。
……そう、思っていた時だった。
コロン。
雑に立てかけていた茜の鞄が倒れる音がした。
「ああ、もう。適当に置くから……」
そう悪態つきながら鞄の方を振り向いて――鞄から、何かがこぼれ落ちているのを見かけた。
それは、まるで、ペットの首に嵌めるためにあるようなもので……。
◇◇◇
「ふぁ〜、よく寝たぁ」
空が夕焼けで染まる頃までぐっすり寝ていた茜は、呑気に腕を伸ばして起き上がった。
「ん〜、あ、大虎、まだ勉強してる〜。すごいねぇ」
目をぱちぱちとさせながら、茜は俺の方を見ている。
「そろそろ暗くなるから、帰れよな」
「……はぁい」
どこか不満げな声で答える。好き放題やって気持ちいいくらいに昼寝しておいて、これ以上何がお望みなんだよお前は。
「じゃあ、また来るからねぇ。あの漫画の最新刊、買っといてねぇ」
そうしてベッドから起き上がって、茜が自分のカバンを探していた時だった。
「あっ!?」
突然、茜は大声を出したのだ。慌てるように鞄に駆け寄って座り込む。俺は椅子から立ち上がって、茜を見上げるような形になる。
「なんか変な虫でもいたのか?」
「……あ、い、いや……そ、その〜……」
茜は、自分の鞄と俺を交互にみている。なんだよ、そんなわけのわからないカラフルなアクセサリーが無限に付いてるファンシーな鞄と俺の仏頂面な顔なんて、見比べるまでもなく似てないだろ。
「……み、見た……?」
「何を?」
「あ、い、いや……そ、その……なんと言うか……」
「別に、鞄の中身なんて見てないぞ」
鞄を漁られたと思われているなら流石に心外だ。
「あ、い、いや、そうじゃなくて……」
首元を掻きながらいつまでもモジモジとしているものだから、やたらと気にする茜の鞄の方を見た。
倒れたのを壁に立てかけて直しているくらいで、他に手を触った形跡はないはずだ。
ただ、鞄の口からちょっとだけ覗いて見えているものがあった。
「……あー、あの首輪か。あれは探ったわけじゃなくて――」
こぼれたのをそのまま鞄の中に入れたつもりだったが、ちょっとはみ出てしまっていた。なるほど、それだけ見ると俺が鞄の中を探ったように見えてしま――
「くっ、首輪じゃないもん!」
「うわっ」
「あっ……ご、ごめん。大きな声、出しちゃって」
「いや、別にいいけど」
「わ、私も……鞄開けっぱなしだったのが悪いし……」
ふう、と茜は気を取り直したか、
「ふ、ふん……あ、あれ、チョーカーって言うんだよ? 大虎、知らないのぉ? ギャルはみんなアレ付けてるんだよ?」
雑にギャル知識マウント取り始めた。
俺はさっきまで使っていた英和辞典でchokerと調べる。首飾りの意味と出てきた。なるほど、首を絞め上げるchokeに由来しているのか。
「それは確かに初めて知った」
「ふ、ふぅん、学校にギャルの友達なんていないんだからしょうがないよねぇ〜」
「で、それ、ペット用のじゃないのか」
「ばっ……バカぁ! ちゃんと人用のだよ!」
茜はふんふんと鼻息を荒くしながら、そのチョーカーと呼ばれる首輪見たいな代物を手に取り俺にこれ見よがしに見せつけてきた。
「ほ、ら! ちゃんとファッション性のある、アクセサリーなんだから!」
まるで両手で差し出すように見せるチョーカーを改めて見分する。黒い薄手の革に、おそらく正面用なのだろうハート型に形取られた光沢のある飾りがあって、その後ろはベルトと同じようなバックルになっていた。止め金があって、革にはいくつか穴が開いている。一度止め金を穴に入れてしまえば、しっかりと拘束されるようになっている。
……いや、愛玩動物につける首輪にしか見えないが? 大型犬には無理な大きさかもしれないが、例えば小型犬くらいなら……。
「ね!? おしゃれでしょ!? だ、大虎の学校は真面目な女の子ばっかりで、これ付けてる子はいないでしょ〜」
そりゃいないけども。
「ふ、ふふ。なぁにどうしたの、そんなに恥ずかしがった顔して」
「いや、恥ずかしい顔してるのはお前だろ」
「……は、恥ずかしくなんてないもん! ばか! ばか大虎!」
「ち、ちょっと大声出すなって。お母さんに聞こえて何か勘違いされたら面倒だろ」
「……大虎のばか」
不貞腐れてそっぽを向いてボソッと言う。
「なによ、本当はドキドキしてるくせに……」
「で、これ、いつも学校で着けてるのか?」
「っ……! あ、当たり前、じゃん!」
「へぇ」
とはいえ、特段首輪、じゃなかったチョーカーに興味があるわけでもなかった。
「……あれ、大虎、き、気にならないの?」
「何が?」
「だ、だからその……チョーカーに」
「いや、特には」
「なんでよっ!」
「なんでよって言われても」
なんだか不機嫌に頬を膨らませている。ああ、もう、面倒くさいな。こういう時はどうするんだったっけ。
あー、小学校の頃とか、なんかアクセサリーを身に着けて『どう? どう?』とかうざいくらいに感想聞きに来てたっけ。
そういうときに、なんといえば茜は満足してくれたっけ。
……思い出した、あの言葉だ。
「まあ、可愛くて似合うんじゃないのか?」
それを言った途端、茜がチョーカーを指で咥えるように口元で握りながら、肩を丸めてつぶやく。
「……ほ、本当に?」
「うん。わんこみたいで可愛いと思う」
「っ……!? わ、わん、こっ……!?」
今度は目を見開いて俺の方を睨んだ。ぐううぅ、と唸り声みたいな音が口から洩れている。せわしないなぁ。
座り込んで上目遣いしているから、本当にペットか何かみたいに見えてしまう。
「だ、だからっ……! ペット用の首輪じゃないってばぁ……!」
首輪じゃないとは言うものの、さっきチョーカーが鞄から見えていたことにかなり動揺していたところを見るに、本当は首輪みたいで恥ずかしがっているんじゃないか? そんな考えが浮かんでくる。
確かに、ペット用の首輪を人間が装着するのは、なんだか妙に恥ずかしいなとは思う。
首輪なんてどこにでも売っていて、ペットを飼う人間なら当たり前のように使っている、別に恥ずかしくともなんともないものなのに。
「あ、ああぁー! ほ、ほら! 大虎も恥ずかしそうな顔してるー! や、やっぱり、ドキドキしてるんだぁー! 女の子が首輪してるって想像して、興奮してるんでしょ!?」
「いや別に興奮はしてないけど」
「し、してるもん! だって、鼻の下伸ばしてるし! や、やーい、やーい! 根暗男子! 私以外女の子と関わる機会のない男の子―!」
いつもよりも強引だし、言いくるめ方も『根暗』だの、普段は絶対使ってこない言葉を飛ばしてくる。
……無理にでもマウントをとろうとする茜に、ちょっとイラっとしてきた。
「チョーカーが恥ずかしくて、無理して毒吐いてるだけだよねー! ほんと、大虎は恥ずかしがり屋なんだから――」
なので、反撃することにしてみた。
別に暴力とか振ろうとか最悪なことをするつもりもない。同じ土俵に立って口喧嘩するつもりもない。
「じゃあ、今からそのチョーカー着けてみろよ」
「……えぇ!?」
いやそこ驚くところじゃないだろ。
「だって、お前はそれをおしゃれだって思ってるんだろ? じゃあ、それを着けてみたらいいだろ。で、それを着けたお前を俺が直視できれば、特にお前のチョーカーに興奮も何もしてないってことが判るだろ」
「そ、それ、はぁ……」
「チョーカー着けられないのか? やっぱり嘘じゃん」
「う、嘘じゃないもんっ……! この、このぉ……暫く会えなかった内に、なんだか男っぽいこと言うようになっちゃって……生意気だぁ……」
とか言いながら、茜はチョーカーをためらいがちに触りながら、すっかり怖気突いてしまっている。
これ、もしかして学校で装着してるって言う話も嘘なんじゃないのか?
「おい、早くしろよ」
「ま、待ってってば……! ば、バックル外すの、む、難しいんだから……!」
確かにマニキュアをしている指先では、小さいバックルを緩めるのも一苦労だろう。
あわあわともたついている様子に、見ているだけでそわそわとしてしまう。
「そんなにバックルが外せないなら、俺が外すか?」
「えっ……だ、大虎が……?」
「お前よりかは確実に爪は短いから、すぐに外せるだろうよ」
「っ……うぅ」
茜はより一層顔を赤くしながら、観念するようにチョーカーを差し出した。
実際に手に取ると、革の質感がかなりマットだ。頑丈で、きつく締めすぎると圧迫感を覚えることだろう。
「よいしょっと」
俺はバックルを外した。ぶらん、とベルトの部分が自由になる。
……使用感がまるでないくらいに革が硬かったのは気のせいだろうか。
「ほら、外した」
俺は茜にチョーカーを返そうとする。これでもう後は着けるだけだ。
「……」
なぜか茜は逃げ場を無くしたかのような顔で俺の方を見つめてきた。本当になんなんだ。
「ほら、着けろって」
「じ、じゃあっ……! じゃあ、大虎が私に着けてみてよ!」
「は?」
「だ、大虎の方が恥ずかしがってるに決まってる! だ、だから……わ、私にチョーカーなんて着けようと思ったら恥ずかしさで逃げちゃうに違いないもん!」
どういう論理の組み立て方をしているんだ、茜は。目も焦点が合わず、すっかり混乱している様子だ。
「ほ、ほら! 固まってる! 恥ずかしいんだー!」
いや、これは茜の無理筋な言い分を前にどう反論したらいいものか悩んでいるだけだが。
「大虎が恥ずかしがったから負け! 私の勝ちー!」
とか言いながら茜が俺からチョーカーをぶん取ろうとしてきた。
ので、
「あっ」
俺はチョーカーを持った手を背中に回した。掴もうとした茜の手がむなしく空を切る。
「な、なに、なに!? だ、大虎の負けじゃん! だ、だから返してよっ!」
「今からお前にチョーカーを着ければいいんだよな?」
「え」
「ほら、後ろ向け」
俺はチョーカーを今一度見せつけ、U字型の開口部を茜の首元に見せつける。
「……あうう」
逃げ場を失い、茜は唇をキュッと閉めて震えていた。どうした? と俺が問い詰めようするのを察知してから、茜は観念したように、おずおずと背中を向ける。
「……大虎の、くせにぃ……」
恨めしそうに呟く茜に、俺は尋ねる。
「その前に、いつもはどの穴で止めてるんだ?」
「え、あ、えっと……ど、どの穴だった、かなぁ……あははぁ……」
「……」
「……」
見るからに羞恥で湯気が立ち込めるくらいに、茜の体はほてってしまっている。近づくだけでじんわりと茜の汗が手に染みつくかのようだ。
「じゃあ、着けるから、髪の毛上げて」
「……はぃ」
茜は背中まで伸びる髪の毛をゆっくりと纏め、ポニーテールを作るような位置にまで上げた。両手で掲げて、自分の体を無防備に晒している。
元々ボタンを外していた胸元のおかげで制服の襟も緩んでいて、首元は何も遮るものはない。
茜は頭を下げ、俺に無防備なうなじを差し出した。髪の毛のつけ根と、白い肌がくっきりと露になる。
「……うぅ」
さて、じゃあ嵌めるか――と、俺はチョーカーを広げて、へたり込む茜の真後ろに座る。
間近にいると、化粧っぽい匂いだけでなく、じめっとした茜の汗の匂いとフローラルな茜の体臭が香ってきた。不思議と、不快感はない。むしろ、幼い頃茜に引っ張られるように公園で遊んでいた日々を思い出し、懐かしささえ込み上げてくる。
それに、茜のうなじも毛穴や産毛が目立たず、滑り心地が良さそうで、思わず見惚れてしまった。
この穢れのない無垢なほどに白い首元に、この黒く無骨な革を嵌めることに、少なからずとも動揺する自分がいることに気がつく。
(……いや、何を迷っているんだ、俺。ただ、チョーカーを、着ける、だけだ)
「……」
茜はいつのまにか正座をして、羞恥を堪えるように目を瞑っている。
そんな茜のしおらしい姿なんて、初めて見たから――
胸が、弾んだ。
この弾みはどの感情から生まれたのだろうか。
喜怒哀楽の、どれかのはずだ。
怒、ではない。哀、でもない。
じゃあ、あとは喜と楽しかない。
と言うことは俺は……
(今のこの状況を……楽しんでるのか?)
なんでだよ。何も、何も楽しくないだろ。ふざけんな、俺。
頬が、焼けるように熱い。
「……ね、ねぇ、な、なんで、黙ってるの……」
茜は不安そうにこちらを振り向こうとしている。両手を上げた状態で痺れているのか、腕をくねくねと動かしている。
背中から見た茜は意外と細く、その肢体がふらふらと揺れる様を見て、動揺してしまう。
あれ? 茜って……こんなに、華奢だったっけ。
「ね、ねえってばぁ……」
「や、やる、よ! 前向いてて!」
俺の言葉に茜はびくっとする。
「……すまん。つ、強く言いすぎた」
「う、ううん……だ、大丈夫」
再び沈黙が流れる。
な、なんだ、なんだこの雰囲気。
こんな無言の空気が続いたことなんて、これまでなかっただろ。
(ああ、もう、くそ)
俺は意を決し、もう一度息を吸って吐いて、茜のうなじを見て狙いを定める。
カチャ。
金属のバックルと留め金が触れ、高い音が鳴る。それに茜は肩を震わせた。
怯える子犬を相手にするみたいだと思った俺は、茜を犬だと見立てることにして緊張をほぐすことにする。
犬に首輪をしてあげるのと一緒のことだ。
「……やる、ぞ」
俺の言葉に、茜は従順に頷く。
ハート形のアクセサリが前になるように茜の頭上にチョーカーを向け、それを、ゆっくりと下におろす。
自然と、茜の頭と俺の顔が接近し、さっきまで昼寝していて汗ばんだ頭皮の匂いが鼻をくすぐる。
その汗の匂いが、どうしようもなく無性に可愛く思えた。
「……あぅ」
茜の目の前にチョーカーが現れ、浅い吐息が漏れる。
普段見ているような外側の革ではない、内側の革を見て、これからソレが、自らの首に嵌められるということを、否が応でも思い知らされる。
それが茜は怖いのか、強く目を瞑る。
「触れる、ぞ」
茜の髪に手が当たらないように気を付けながら、俺はチョーカーの正面を、茜の小さな喉仏に添える。
「ひゃっ」
ハートのアクセサリの感覚は冷たかったのか、茜は思わず声が漏れ出てしまう。
「……一旦、腕、おろして」
茜が腕を上げている状態だと、ベルトを首の後ろまで回せない。
「……うん」
茜は言われるがまま腕を下し、俺はベルトを茜の首側面にゆっくりと這わせる。
もう一回髪上げて、と俺が言うのを待たずに、茜は自分からたくし上げた。茜の頭と腕の間を、俺の手が通るような形になる。
「ありがと」
俺は自然と、褒めるように茜に囁いた。
「う……ん……」
茜が生唾を何度も飲み込む音が聞こえる。
茜には、自分の首がじわじわと、チョーカーの革で拘束されていくのを感じていることだろう。
無機質で冷淡で、冷酷さえ思える黒い革が、まるで喉を支配するかのように、茜に侵食してゆく。
はあ、はあ、と、茜の呼吸が荒くなる。そのたびに喉が揺れ、それが抵抗とばかりに革を押し戻そうとする。
それを俺は、まるで躾けるかのように、革を内側にちょっとだけ、ほんのちょっとだけ締め込んでいく。
「あぅ……うぅ」
ささやかな抵抗を咎められ、茜は荒くなる呼吸をなんとか必死に抑えようとする。
「痛く、ないか?」
革を這わしているだけで痛みなんてないのは分かり切っているのに、なぜかそれを聞いてしまう。
「だい、じょう、ぶ」
茜はおとなしく応えた。
「だから……つ、つづ、けて、いい、よ」
俺は無言で、チョーカーのバックルをうなじまで滑らせた。
これで後は、バックルを締め上げるだけだ。
「どれくらいで締めたらいいか分からないけど……とりあえず、指一本分くらい、余裕あればいいのか?」
「……たぶん」
俺は、茜のうなじに人差し指を添えた。
うなじは、風邪を引いたみたいに熱かった。今の茜の頭は茹で上がっているんじゃないかと思えるほどに。
きめ細かで、たおやかな細い首と柔らかさが、指先に伝わる。
「……じゃあ、締めるぞ」
俺は人差し指分の余裕を持たせた状態で、バックルに革を入れた。この状態だけでも十分に首に拘束感が伝わるのか、茜は身を強張せた。
「おい、本当に大丈夫なのかよ。もっと緩めた方がいいんじゃないのか」
俺がそう譲歩するが、茜は謎の負けん気を見せる。
「だい、じょうぶだって。だって、ち、チョーカーが、ゆるゆるだったら、変、でしょ」
いや、変かどうかはわかんないけども……。
「じゃあ、いいんだな」
俺はそれだけ了解を取って、革に開いているちょうどいい位置にある穴を探す。
人差し指ではちょっと入りきらないが、小指程度の隙間ならピッタリと嵌りそうな穴を見つけた。
これで、いいか。
「締めるぞ。顔上げて」
「は、はい」
茜は顔を上げた。そうして、ちょっとだけ喉元で緩んでいた革が、急にぎゅっと喉を締める。
「うっ」
茜は少し苦しそうな声をしていたが、ゆるゆるは嫌だといったのはそっちのほうだ。俺は構わず留め金を、穴に入れる。
「うっ……うぅ」
小指分の余裕を持たせたはずだが、茜の首は一寸の隙間もなくピッタリと嵌った。呼吸をすると少し苦しいかもしれないが、その分革がある程度伸縮するから、少なくとも呼吸困難になることはない。
ただ、どう足掻いてもチョーカーの感触からは逃れらないようになっているが。
「はぁ、はぁっ……」
茜の熱い吐息が、閉じた部屋に充満する。
「……そして、こうすれ、ば」
俺は余った革を小さい輪のキーバーで留めた。
「……完成、したぞ」
そう言うと、茜は手を震わせながら、首に鎮められたチョーカーの感触を指先で恐る恐る確かめる。
「んっ……んぅ……」
指でちょっと強く引っ張っても、絶対に外れない。
頑丈な革は茜の首の自由を堅牢なまでに封じていていて、自分の体なのに、大切な器官であるはずの喉に、茜は触ることすら許されない。
それがもどかしくて、茜は途方に暮れた様なため息をつく。
「んっ……、はぁ、はぁっ……」
茜は何度も何度も首を動かしては、決して外れることのないチョーカーの拘束を確かめていた。
「で、その……首は、苦しくないのか?」
「……え!? あ、う、うん……」
俺の存在をすっかり忘れてしまうくらいにチョーカーに夢中になっていたのか、茜は俺の方を振り向かずに、恥ずかし気に首を垂れた。
「……ちょっと、だけ、苦しい、けど……でも、呼吸を、整えていれば……じっとして、いれば……痛く、ない、よ」
それを聞いて一応安心した。
「で、初めてチョーカーを着けた感想は?」
「……」
躊躇いがちに、茜は告白する。
「……なんだか、ふ、不思議な、き、ぶん……。本当に、ぺ、ペットに、な、なっちゃった……みたい……」
「やっぱり、初めてだったんだな」
その言葉に、茜はバッとこちらを振り向いた。
目を見開いて、顔を真っ赤にしながら俺を糾弾するように眉を曲げている。
「ひ、ひっかけなんてずるいじゃないっ!」
そして俺は、茜のチョーカーが着けられた姿を、真正面から見た。
普段は勝ち気で俺のことをとにかく振り回す茜の首に、ハート形のアクセサリが喉仏の位置で冗談みたいに輝いている。
そのチョーカーを着けたのは、俺自身だ。
俺が、茜の首を拘束したのだ。
愛玩動物が装着されるような、代物を。
そう思うと、なぜだか無性に、
「……な、な、なに、なに、よぉ」
俺は、茜のことが、
「可愛いな。お前」
愛くるしく思えて仕方がなかったのだ。
「は……は、はぁっ……!? か、可愛い、とか、い、いうな、ぁっ……!」
茜は恥ずかしさが限界を超えてしまい、慌ててチョーカーを解こうする。だが、後ろに回したバックルを手の感覚だけで解くのは予想以上に難しい。
もたもたとする間に、後ろ重心になった体が――
「あっ」
すってんころりんと、真後ろに転倒してしまった。
「お、おい、危ないっ!」
壁にぶつからないだろうかと慌てて立ち上がった俺は、あおむけで倒れる茜を見下ろす格好になった。
俺が仁王立ちで開いた両足の内側のくるぶしに、倒れ込んだ茜のスカートが触れる。
そして茜の乱れた制服の上着に視線が映り、確かなふくらみを持つ胸部、そして……がっちりと拘束されたチョーカーと、俺を見上げて今にも泣きだしそうな顔で目線をそらす、茜の顔があった。
「み、ない、で……」
「……初めてだったんだろ、チョーカー。なんで、嘘ついたんだよ」
意地の悪い質問だな、と俺は自分でも思う。
だが、これまで散々揶揄ってきたのだ。今日のこの時くらい、果敢に反撃しても罰は当たるまい。
「……それ、は」
茜は片手で口元を、もう片方の手で首を隠しながら言う。
「……が、学校の、とも、だちが……みんな、チョーカー、つ、着けてるのに……わ、私だけ、は、恥ずかしくて、着けられないの……知られたく、なかった、から……」
なんて子どもっぽい言い訳だ。
「だからって、俺のことをチョーカー知らないって悪口言うのは違うだろ?」
「……ごめん、なさい」
茜からこんなしおらしく謝れたことなんて、初めてのことだ。
俺は調子に乗ろうとする内なる自分を何度も何度も心の中で黙らせながら、下種な言葉を吐かないように気を付けながら、しかし確実に茜を追求する。
「それで、なんでチョーカーを着けるのが、そんなに恥ずかしいんだ?」
「それ、は……」
手で隠しているようだが、茜の紅潮した頬の色はその細い指同士の隙間からはっきりとわかる。
「だ、だって……」
「だって、なんだよ」
きゅぅ、と茜は小動物みたいな鳴き声を上げながら、白状する。
「……ち、チョーカーって、く、首輪、みたいで……そ、その、わ、わんちゃん、みたい、じゃない……」
私、ペットじゃないのに……と、消え入るような声を漏らした。
なるほど、自分が人間ではない存在になってしまうんじゃないか、と思ったというわけか。
わんこみたいだね、とか、子猫ちゃんみたいだね、とかは、プラスに捉えれば表情豊かで愛嬌がある、と捉えることもできるはずだ。
だが、首輪みたいなアクセサリーを装着することで、自ずと想起してしまうのだろう。
支配、飼育という上下関係としての意味合いを。
もちろん、好き好んでチョーカーを着けるギャルたちにはそんな上下関係なんて意識することもないだろう。
なぜなら、自分が飼育される側だとは思いもしないのだから。あくまでこれは自分を際立たせるファッション。それ以上でもそれ以下でもない。
おそらく、首元に目立つチョーカーがあることで自然に顔に視線が集まる他、視覚的に首が細く見えるような効果があるのだろう。
チョーカーの材質によっても、フリルならフェミニン系に、メタル系ならクールで近寄りがたいミステリアスなイメージ、など……相手に見せたい印象をより強く意識させることもできるはずだ。それを好んで、ギャルたちはチョーカーを着けているに違いない。
だが、茜は、チョーカーのファッション的な優位性よりも先に、羞恥が勝ってしまったのだ。
主従関係としてのモチーフの雰囲気を敏感に感じ取ってしまった結果、チョーカーを装着することをためらった。
「う、ううぅ……う˝ぅーっ……!」
茜は機嫌を損ねた犬のように呻き、気が付けば目元が涙で緩んでいた。
チョーカーを身に着けた姿を長いこと見られることがよっぽど無理なのだろうか、今にも泣きだしそうな顔をしている。
さすがにこれ以上は意地悪すぎるかと思い、俺は茜を開放してあげることにした。
「ほら、外してやるから。起きろって」
俺は茜に手を差し伸べる。
その手を、茜は目をそらしながらもしっかりと、ぎゅっと、力強く握った。
おそらく一生懸命握ったのだろう。だが、その力は想像以上に、か弱かった。
「よいしょ、っと」
片手で軽く茜を起き上がらせてしまえた。それに茜もびっくりしているのか、俺の腕を見て目をぱちくりとさせている。
「だ、大虎って……ち、力持ちなん、だ、ね」
お互いに立ち会って向かい合って、茜は指をもじもじとさせている。
「ほら、後ろ向いて」
「は、はい」
本当に主従関係が出来上がってしまっているんじゃないかと錯覚しながら、俺は茜のチョーカーのバックルを、できるだけ優しく解いてあげる。
解放されたと同時に、ほぅ、と、茜の吐息が漏れた。チョーカーの感覚を思い出す様に、しきりに自分の手で首周りをさすっている。
「……分かったら、これから陰気だとかなんだとか言って、俺をからかうんじゃないぞ」
これ以上勉強の邪魔をしてくるな、と釘を指す。
「じゃあ、今日はもう、帰りな」
気が付けばもう外は暗い。帰り時間を心配してか、母親がここから歩いて数分もしない道だというのに車を出す準備をしている頃だろう。
「あの」
茜がこっちを振り向かずに、言う。
「……チョーカー、着けてないの、と、友達の中で、わ、私だけ、なの……」
「……それが?」
「だ、だから……ち、チョーカー、つ、着けたい、けど……じ、自分じゃ、そ、その……ち、ちゃんと着けられない、って、いう、か」
そんなことはないだろ、と思わず口に出そうとしたが、俺の方を振り向いた茜の表情は、どこかおかしかった。
あれだけ恥ずかしい目に遭って、散々な思いをしたはずなのに。
なぜか、
茜の顔は、
笑っていた。
「……これから、毎朝……家に行くから……大虎が、チョーカー……着けて……って、言ったら、へ、変、か、な……」
俺にチョーカーを嵌められていく感覚を思い出しているのか、目を細めながら、俺に希っている。
「わ、私、だと……こ、怖くて、ぴっちり締めること、で、できなくて、ゆるゆるになっちゃうけど……。でも、大虎なら、ちゃんと、さ、最後まで、締めあげて、くれる、から……」
表情筋が弛み、熱い視線を俺に向けている。
よほどチョーカーに締め付けられる感覚が気に入ったのか。
上下関係を妙に気にしていたのは――無意識の内に、誰かに従いたいという悦びを持っていたからか。
そしてそれが、俺がいることで、その欲求が甘く満たされることで、その心地よさに酔いしれるからか。
その答えを求めるのを、追及するのを、俺は止めた。
それを知ってしまったら、きっと俺は――素面ではいられなくなってしまうから。
◇◇◇
その日を境にして、茜は毎朝俺の家にやってくるようになった。
「大虎~! まだ家出る準備できてないの~!?」
「分かったって……だから朝から大声出すなよ」
私室から聞こえてくる茜の大声を聞きながら、俺はなんとか支度を終えて私室を出る。
玄関では、茜と俺の母親が何やら楽し気に雑談していた。
「大虎ってほんと朝弱いからお母さん大変ですよね~。あんまり夜中まで勉強するの良くないですし~」
茜の軽口に、母親が楽し気に同調する。茜ちゃんが毎朝来てくれるようになって、寝坊しなくなったのよ! とか言ってにやりとしている。
母親にしてみれば、幼馴染の女の子が毎日迎えにやってくる、なんていう光景は実にほほえましく見えるのだろう。
「あ、大虎~! おっそ~い!」
茜は俺を見てからかうように頬を緩ませている。そして、あ、と茜は楽し気に指さした。
「大虎、寝ぐせ!」
言われて俺は、ぴょこんと髪が立っているのに気が付いた。顔を伏せながら指で梳かす仕草に、茜も母親もくすっと笑っている。
「はあ……じゃあ、行ってきます」
「行ってきま~す!」
母親に見送られながら、俺たちは玄関を出た。
「……さて、と」
その瞬間、さっきまで陽気な顔をしていたはずの茜は、俺の囁く声で体を強張らせる。
誰も周りに人がいないことを確認してから、俺はいつもの物陰に茜を連れていく。
「じゃあ、出して」
「……う、うん」
茜は鞄を開け、おずおずと黒いチョーカーを取り出した。
そしてそれを、両手で俺に差し出す。
あの日から、なし崩し的に決まったルール――毎朝、俺にチョーカーを”着けてもらう”こと。
そしてその時は必ず、敬語で。
「き、今日も……お、お願い、し、します」
口元は戸惑いながらも、目が甘く蕩けている。羞恥と快感がない交ぜになった表情で、俺に媚びるように見つめていた。
「分かった。背中向けて」
茜は背中を向け、誰にも見つからないように俺に体を寄せた。俺は優しく、しかししっかりと緩みなく、茜にチョーカーを嵌めた。
「ほら、できた」
そうして茜は正面を向いて、ルール通りの口上を述べる。
「ありがとう、ござい、ます……」
その逃げ間のない締め付けすら甘美に思えるのか、心地よい痛みの電流を味わうように口を半開きにし、目線が泳いでいる。
「……おい、おーい。目、覚ませ」
パンと俺が手を叩いたら、茜は夢から覚めたかのように目をぱちくりとさせた。
「……あ、は、は。そ、それ、じゃ、いこっか~!」
茜はいつもの調子を何とか取り戻すように、先に歩き出す。それに俺は「やれやれ……」と肩を竦めながら続く。
こうして晴れて茜は、友達と同じようにチョーカーを着けることができた。
そう。ただ、それだけの話。
なのに、どうしてだろうか。
「……ん」
一緒に歩く道中、茜は時折、首の締め付けを味わうようにチョーカーと首の隙間に何度も何度も指を挿れては、悩まし気に息を震わせている。
そして、チョーカーと俺を交互に見ながら、頬を緩ませていた。
それはまるで、支配と従属の官能的な関係に虜になったかのような――激しい衝動で燃え盛る篝火のように。
「……ねえ、大虎」
茜は、胸をときめかせながら、言うのだった。
「大虎が、よかったら……、いろんな、チョーカー……試しても、いいかな……? リングが、付いている、の、とか……さ……。ち、チェーンが、付いてる、のも……あるんだって……。そ、それを、大虎に着けられたら、ど、どうなっちゃうんだろう、ね……」
茜は際限のない欲望に取りつかれるように、熱い眼差しを俺に向ける。
もしかしたら、これは良くないことなのかもしれない。これ以上は、堕ちてはいけないところに堕ちてしまうのかもしれない。
だが、俺は、欲しがりな茜に、手を差し伸べた。
「……いいよ」
だって、俺たちはただの幼馴染だ。別に、ペットと飼い主、だなんていう関係なんかじゃない。
だから、これは普通のことなんだ。
ギャルの幼馴染に、チョーカーを着けるだけの話のはず、なんだ。