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異世界建築士の弟子  作者: 十三岡繁
道中にて
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道中にて(その2)

「ヒュドラはまぁまぁ強いだろうけど、このあたりの冒険者でも何とかなるだろう。何で数年も放置してるんだ?」コウは飲み干してしまった酒の器を逆さまにして、名残惜し気に底をのぞき込みながらそう言った。


「いや、そのヒュドラはなかなかの大物なんですよ。昔通りががった勇者様が地中深くに封印してくれたんですが、数年前にあった大きな地震がきっかけで地上に出てきてね。なぜか魔法攻撃が効かないらしい。そんな話は前は無かったみたいなんですがね…。あいつは体には毒があるから、魔法が効かないとなるとなかなか退治が難しいらしいんですよ」店主が説明する。


「ヒュドラは九つある首を一気に潰さないとすぐに再生しますからな。しかも最後の一本は不死身に近くなってしまう。毒もあるし物理攻撃だけで倒すのは確かに厄介でしょうな」珍しくグレゴリーが真面目な事を言っている。


「まぁ討伐目的でなければ、回り道をした方がいいでしょうね。酒も入っちゃいましたし…もちろん退治してもらえれば私をはじめ、町の人は大変助かりますが…」そう言って店主はコウの方をチラッと見た。コウのジョブクラスはBでレベルもそんなに高くないという設定になっている。設定というのもおかしいがギルドのデータもそう改ざんしている。この店主は、この少女のなりで酒をこよなく愛するエルフから、きっと何かを感じ取っているのだろう。酒飲みを大勢見てきた酒屋の店主の勘は侮れない。


「まぁ遠回りするのも面倒だし、ちょっとは人の役にでも立っていくか?」そう言ってコウは他の三人の顔を見る。もちろん反対する者などいるわけもない。

「ありがとうございます。これはほんの気持ちばかりですが…」店主はカウンターの下から1本の酒を取り出した。


「この『かめれい』という酒はキートではなく、もう少し西で作られていますが、精米歩合80%とは思えない素晴らしい酒です。高いものではありませんがどうぞこれをお持ちください」


「精米歩合ってなんだ?」コウはクニオの方を見る。

「日本酒は仕込みの時に、米を削るんだよ。削れば削るほど雑味が無くなって旨くなると言われている。上等な酒になると半分以上削ることもある。でも削る量を少なくして、それでも美味い酒を作ろうとする酒蔵もあるんだよ。みんなが飲める安くてうまい酒が造れるからね」クニオは元居た世界での日本酒の話をそのまましてしまった。でも多分同じじゃないかという確信もあった。


「日本酒ってそんな勿体ないことしてるのか。その『かめれい』ってのも凄いな。酒飲みみんなを幸せにしたいという心意気がいい」いや、お礼に酒がもらえそうだという空気を、敏感に感じ取るコウも十分凄いなとクニオは思った。

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