魔王山荘にて(その2)
「まぁ理屈はどうでもいいや。こうやって色が付いている建物ってのも面白いな。花やフルーツみたいだ」一応コウは納得する。
「それぞれの土地にはそれぞれの色がある。それを建築にも生かしていくって考え方もあるんだよ」クニオが言った。
「それは馴染むな」
「コウはたまには良いこと言うな。歳の功だね」いや、ダジャレのつもりは無かったがたまたまそうなった。コウは照れているのか、少し怒っているのかクニオの頭を軽くぴしゃりと叩いてから続ける。
「クザの温泉場の方の1階のオープンスペースは、馬車も停留するようになって偉い人気らしいな。一番人が来そうなところなのに何も作らなかったってのは変わってるよな。外からつうつうだし…」
「あれはね、ピロティって言うんだよ」そう言ってからクニオはコルビーの方をチラッと見た。
「ふーんよくわからないけど、あれは壁が無いからどこからでも入れていいな。天井があるから雨が降った時も濡れないで済むし…しかしあっちの建物もここみたいに塗装したほうがいいんじゃないか?」
「クザの方は材料も天然のものだから、塗装をせずに変化を楽しむのもいいと思うんですよ。材料が劣化したら棟梁たちが交換もしてくれますし…ここは色々と政治的な問題があるので、維持管理が楽な様に塗装しましたけどね」コルビーが言った。
「適材適所ってやつか」コウが返した。
「しかし最近ビフロンスの奴を見かけませんね。彼がどこで何をしているのか師匠はご存知ですか?」コルビーはクニオに聞く。
「うん、最初は一緒に塗料やらコーティング剤を作っていたんだけど、段々僕のプランニングが無くても自分だけで塗料が合成できるようになったんだ。更に塗料を作るだけではなく塗る事にも楽しみを見出したみたいで、色んなところで塗まくってるみたいだよ。あんまりなんでもかんでも塗りまくったら良くないとは言ったんだけどね」そう言いながらクニオは笑った。
「凝り性の彼らしいです」そう言ってコルビーも笑う。
「しかし魔王城では便所と風呂を見なかったから、魔族が全部人間サイズに擬態できるって知らなかったな」コウが言う。今回転移ゲートを設置するにあたって、どれぐらいの大きさのものまで転移できるようするかでかなり話し合った。魔族の中には人間に比してかなり巨大なものも存在するからだ。しかしコウが言った通り大柄な魔族は人間サイズにまで小さくなることができた。
「この世界はヒューマンスケールでできているんですよ」コルビーが言った。この世界の成り立ちを知ってしまったクニオとコルビーには、もうその理由は分かってしまっている。人間の作った世界なので、スケールの単位は人間をよりどころにしているのだ。




