ハポンの酒場にて(その5)
そうクニオははるばるハポンまで行くならば、その研ぎ師という人に自分の刀も研いでもらいたいと思っていた。ハポン地方の中では初めて訪れたクスでも、研ぎ師を探しあてて訪ねてはみた。一応研いではくれたのだが、これはなかなかの業物なので、クニオの適当な研ぎ方では刀が可哀そうだと怒られてしまった。
ここハポン以外では研ぎ師というジョブは聞いたことが無いというと、研がなくても半永久的に切れ味を保つ方法があると教えてくれた。但しクスにいたその研ぎ師には無理だという。ここから北のキートという場所に行けば、自分の師匠筋に当たる人がいる。彼は研ぎ師でもあるが鍛冶師でもあって、その人ならばその加工が可能であるし、この刀を数段上のものにしてくれるだろうと教えてくれた。
キートは盆地で質のいい地下水があり、おいしい日本酒ができるという話もあって、コウとグレゴリーはそこに食いついた。コルビーはコルビーでハポン地方の文化には深い関心があるらしく、キートへ行く事に賛成するだけではなく、歩いてゆっくり移動しようと提案してきた。旅費なら心配しなくていいと言う。どうも本当にお金持ちなのかもしれない。そりゃ元というか将来の魔王なんだからあり得る話だ。
とにかくそんな事で、道中日本酒とハポンの文化を堪能しながら、クニオたちはゆっくりと歩きでキートへ向かっていた。旅程も終わりに近いと言ったところで遭遇したのが先ほどの騒ぎだった。その後店にあった他のテーブルも、いくつか同じように改造してくれと店主に頼まれた。結局店の半分ぐらいのテーブルを同じように改造してしまった。随分と年月が経って、このテーブルはKC-1と呼ばれ高値で取引されることになるのだが、ひとまずその話は置いておこう。