洞窟にて(その4)
ドラゴンに言われた通り洞窟の中にはコルビーとクニオだけが入った。領主の話の通り入り口付近から見慣れない鉱物の塊がゴロゴロと転がっている。鑑定能力を使うまでもなくそれがアダマンタイトであることがコルビーにもクニオにも分かった。
少し進むとすぐに外からの光は届かなくなり真っ暗になってしまった。コルビーは暗くてもまわりを視認することができるが、クニオには何も見えない。そこでなけなしの魔力を使い、生活魔法である『暗がりを照らす魔法』で明かりを灯して進んだ。
洞窟の中は特に魔物が出るわけでもなく、思ったほど深くも無くて1時間ほど歩くとやや大きな空洞の空間にたどり着いた。空洞の中央に進むとあかりの魔法の届く足元以外は暗闇に包まれている。
「私にはこの暗闇でも先が見えますが、どうもここで洞窟は終わりの様です。この空間は完全にアダマンタイトで囲まれていますね」そう言うコルビーにクニオは
「アダマンタイトは二かけらでいいんだから、帰りに入り口付近で拾って帰ろう。それはいいとしてここが行き止まりという事は、ここに何かがあるんだよね」と言った。
「確かに見回してもアダマンタイト以外には何もありませんね」まわりが視認できるコルビーがそういうのだから、そうなのだろう。
その時二人の頭上に、何の前触れもなく光の塊が現れた。黄色味がかっていてそれほど強い光ではない。ただ周囲が真っ暗闇であるのでそれなりの存在感を放っている。それはゆっくりと下に降りてくる。ある程度近づいてくるとその光の中心となっているものの輪郭が分かるようになった。それは光を帯びた、小さな人型の体に羽が生えたフェアリーだった。フェアリーは二人のやや前方に留まるとこちらを見て、いやその眼球は光の中でも黒く塗り潰したかのように真っ黒である。とにかくこちらに顔を向けて話し始めた。
「よくぞ来たな…とかいう堅苦しい挨拶はまぁいいとして、色々と聞きたい事があるんだよね?」荘厳な雰囲気には似合わずフェアリーの声はかん高く口調はフランクだった。
「まず、あなたは何者なのか?」先にコルビーが問いかけた。
「うーんとね。エンシェントアニマって言うんだけど、長いからアニちゃんでいいよ。世界のことわりを知る存在とでも言えばいいのかな?」口調と内容の大きさが釣り合っていない。
「この世界の神という事ですか?」今度はクニオが聞いた。
「神っていうか、うーんこの世界を作ったという事ではそうとも言えるかな」
神かと問われて否定をしない。この世界を作った…いきなりの話でクニオは面を食らってしまった。
「あなたがこの世界を作ったんですか?」クニオが聞き返す。
フェアリーは少し間を空けてクニオの問いに答える。
「クニオはここでは転生者だと思ってるよね。前世の記憶だと思っているのは何世代も前のものだから知らない言葉だと思うけど、この世界はメタバースと言って仮想現実なんだよ」確かにメタバースという単語はクニオは初めて耳にするものだった。しかし仮想現実という言葉は理解ができた。フェアリーは話を続ける。
「私たちの世界では科学技術がやたらに発達しちゃってね。科学なんてとどのつまりは、世界は何なのか、自分達はなんなのかって話なわけだけど、その結論が体は意識の入れ物に過ぎないっていう事になってね。肉体を捨ててメタバースに意識を移植する人が増えたんだ。で、たまーにこの世界で意識を移植する前の、それも何代も前の前世の記憶が蘇る人がいて、その人が自分を転生者だって思い込んでるんだよね」
クニオは驚いた。ここから見れば異世界だと思っていた前世の自分の世界は、どうもこの世界のベースになっているらしい。いや、そう言った意味ではここは異世界ではなく、元居た世界の延長上にある未来ともいえる。
「私もその転生者だと思い込んでいる人間の一人なんですか?」クニオはフェアリーに聞く。




