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異世界建築士の弟子  作者: 十三岡繁
工房にて
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工房にて(その4)

 その夜は大宴会だった。この島の名はタリヤ島というそうで、ズワ湖は湖面上の魔力と魔素を拡散してしまうが、湖上に点在する島には逆にその魔力が集積しているそうだ。なので各種付与を伴う鍛冶仕事にはうってつけの環境で、サダヒデはここで今は5人の弟子に教えている。ユキヒラは現在の所一番弟子で、剣の腕も弟子の中では一番らしい。


 コウとグレゴリーは地場産の作物を使った料理に、サダヒデが用意してくれた名酒『まつとも』でご機嫌だ。酒が飲めないコルビーは、つまらなそうかと言えばそうでもない。


「師匠、この囲炉裏というのは室内で火を焚いても酸素が不足することはないのでしょうか?」コルビーは色々なところを観察して、様々な事をクニオに聞いている。

「茅ぶき屋根の上の方には換気用の穴が空いているんだよ。建物内の気圧は一定なのに外気は地面付近より上部の方が気圧は低い。上方に排気口があった場合、上部では空気は中から外に引っ張られて、地面付近では逆に外の空気が中に引きこまれる。それで自然と下から上への空気の流れができるんだ。更に建物内空気が温まって外気より密度が下がると浮力も働いて現象が加速する。これは煙突効果といって、パン焼き窯や暖炉についている煙突と同じ理屈だよ」クニオの説明にコルビーはうんうんと頷いている。


 物理学というものがこの世界にあるのかは分からないが、もの凄い理解力だ。もしかしたら彼は将来物凄い建築家になるかもしれない。いや、なるのは魔王だったか。宴会はその日の深夜まで続いた。



 翌日キュリオシティーズ四人のうち三人は二日酔いで、頭を抑えながらキートの領主の居城へと向かってタリヤ島を後にした。サダヒデは紹介状だけでは不安だと言って、領主と面識のあるユキヒラもお供につけてくれた。ここから領主の居城、すなわちキートの中心部までは歩いて二日ぐらいの距離である。


「いやーみなさん、よく飲まれますね~。『まつとも』はいくら飲んでも残らないことで有名ですが、あれだけ飲めばそうなるでしょうね。師匠も大概大酒飲みですが驚きました」そういうユキヒラも結構飲んでいたはずだが、元気はつらつと言った感じだ。三人は朝起きたときからこの状態だったので、出発は昼近くになってしまった。


 途中から馬車に乗れる感じでもないし、どの道途中で一泊することになるだろう。また、サダヒデの紹介状やユキヒラの仲介があっても、着いたその日に会ってもらえるとも限らないし焦る必要はどこにもない。


 クニオにとって、楽しめることは大いに楽しんで、ゆっくりと生きるというのが今のポリシーだった。コウやグレゴリーの影響も多々あるのだろう。前世の制約が多い世界でも、それはそれで楽しく生きていたような気はする。ただ『ゆっくり』の部分が抜けていたなと振り返ってしみじみ思う。

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