5話 今の時点での目標
そんな誰も気にしちゃいないどうでもいい話より私の現実である。私の現実はどうやらゲーム的なものに成り代わってしまったんだから、それに順応する必要がある。
しかしながらできることにこれまで制限がかかってしまうと今からでも父親を殺したほうがいいのではないかと思ってしまう。
父はステータス的には武将でも文官でも行けるし、弱くもない。ただ今の、4歳になって間もない私より弱い。ちっちゃいけど今の私は素早い野生動物より高いステータスを持っている。野生動物は重さ20キロほどでも80キロの成人した人間に勝てるのだ。
人間は脳を発達させ過ぎてしまって、筋力やら何やら弱いことこの上ない。それでもこの世界にはスキルがあるので地球の人間より弱くはないが、父の戦闘術は槍術とかもあるけど、総合しても20が二つもある私よりは劣るはず。
しかし父には大事な役割がある。
なぜ暴君は、残虐な統治者は長く統治できるのか。それは彼らに反発するものを押さえつけて政府を回せる力があるからだ。
人類の歴史は反発するものと回すものの対立でもある。そして統治者は回す側にして、回すためにはどう動いているのかに対してのルーチンワークを知っており、それを体現する必要がある。
それがたとえ不条理に満ちたものであったとしても、一度回り始めた力はそう動くように出来ていて、そこに誰が座ろうが力の本質は変わらない。
回すのはぶっちゃけ誰でもいい。誰でもいいけどそこに座っている人がそこにしがみついて離れないようにしているだけだ。
それを無理やり引きはがすと空白ができてしまう。この空白を埋めようと周りの力が空白に殺到し、ぶつかり合う。これをパワーバキュームという。
父が今の時点で死んだらパワーバキュームが生まれる。その混乱状態はまだ幼い私にとっては好ましくない。
『アルガリータ戦記』において戦乱のきっかけとなるのは前皇帝が崩御し、父が権力を掌握することから始まる。
それはなぜかというと、別に父に反発しているというより、私が嫁いだのが皇太子ではなく、皇太子は父が毒殺するから。
これに反発するいくつかの貴族家を皇帝の権限で粛清する。もちろん父が裏で操っているのは明白だが、それを指摘しても誰も彼を止められない。
最初に父を打倒するために反乱軍が組織され、半年の間最初の内戦が勃発するも父はこれを制圧。反乱軍側は敗退してかなりの貴族が粛清の対象となったけど、それを拒否し独立を宣言することで戦乱の世に突入する。中央では下手に特定の勢力に向けての遠征軍を組織できない、そうしたら別の勢力がたたきに来るかもしれないから。同時に地方では中央を崩せるほどの兵を動員できるわけでもない。
それに、戦乱の世になってしまったわけだからもう帝都を攻略するくらいですべてが丸く収まるわけでもない。
今はまだ前皇帝が存命中ではあるけど。
まだ36で若いのに病にかかっており、顔色があまりよくないのは一見しただけでもわかる。
あれでもこれから15年も生きるものだから不思議。
優柔不断を絵にかいた性格ではあるけどどの派閥にも肩入れせず、政治が乱れないようにはしている。
ただ重要な決断ができず、結局皇太子が毒殺される結果を招いてしまった。
ミッドウッド家は政略結婚を繰り返していくつものの金鉱山を所有することができた。つまりマネーの力が半端ない。そのお金を軍資金に北方遠征に出向いて北方の蛮族を撃退して宰相の座に。
いまだに金鉱山は健在で、たったの3歳の子供のお小遣いが平民が3か月働いて稼げる金額になっているという。
家庭教師を減らしてほしいところだけど。このくらいの年の子供って、普通に外で燥いだり土いじりをしたりと遊ぶように出来ているのに、本当にひどいものである。
闇魔法をスキルブックとスキルの宝珠だけで40にあげちゃう計画が早くも頓挫しそう。まだ未来の操り人形皇帝の婚約にはなっていないのはいいけど。