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2話 宰相の父と潜在能力


パンと殴る音で目が覚める。ああ、また親父が買って来た奴隷を殴っている。奴も前世の私のように肥満体で、若い奴隷を買ってきたら殴るけるの暴行を加えることが大好きだった。

父は若い男の上に馬乗りになって顔が陥没しても殴り続けた。

「奴隷の、分際で、息をするな、死ね、死ね、ゴミが、くそが、死ね、死ね」

あれではもう父が殴りながら言っての通り死ぬだろう。

あんな暴力的な人間がよく宰相なんて勤まるものだ。

それにしても、前世で思ったせいなのか記憶が戻るのがやけに早かった。まだ私は3歳である。

鏡を見なくても記憶があるので自分がこれからどんな運命を辿るようになるのかわかる。

私の今世での名前はタイグリッサ・ミッドウッド。名門ミッドウッド家の一人娘である。

この世界は、『アルガリータ戦記』という、私がオタクだった時前世でさんざんプレイしていた戦略シミュレーションゲームと酷似していた。

内容はこう。

ある帝国が滅びを迎え、内戦が勃発。いくつものの勢力が現れては消える、要するに戦国時代の異世界版。

そして私の父、エンネール公爵は自分の娘を皇帝に嫁がせてから国を乗っ取るというか、昔からよくあったものだけど、好き勝手にしようとする最低最悪のクズ野郎である。例えるなら三国志の董卓のような人物だ。残虐で武にもそこそこ優れており、副官は呂布のように強い。ただ董卓と違って最初から帝国を後ろから牛耳っていた実力者だけど。

と言っても別にラスボスではない。戦略シミュレーションなので、何ならかなり序盤でも狙って落とすことができる。ただ難易度的にはちょっと高め。保有している兵隊の数が多いし精鋭の皇帝の近衛隊を相手にする必要があるから。

近衛隊の隊長さんもかなり強い。

けど変態チックな羽目プレイとか、主人公を火力特価に育ててから速攻で隊長さんだけ叩くとか、いろいろやりようはあった。

と言っても相性が悪い主人公もいるし、そもそも距離が離れている場合もあるので序盤のやられ役にはならない可能性のほうが高いと思う。

主人公は四つの勢力から選べる四人の見目麗しい男女。男二人女二人である。

この中で比較的にスタート場所が帝都デカルナに近いのは冒険者エリオットと錬金術師アウリーナ。

エリオットは23歳のマッチョ系のイケメンで、猪突猛進タイプ。最初の拠点は帝都から街二つ離れた迷宮都市カルデリア。彼が率いる軍には突撃系のコマンドに補正がある。

アウリーナは25歳の理知的なタイプの美女で、策略家タイプ。最初の拠点は港町フィンダロッサ。彼女が率いる軍は経験値補正を受けて早く成長する。

帝都を序盤にたたくルートにするにはいくつかやり方があって、エリオットに迷宮踏破のコマンドを実行し、最奥にある迷宮のコアを入手、そこで迷宮のコアからエンチャントされた武具をたくさん手に入れることができる。それを兵に装備させると一騎当千までは行かなくとも、パラメーターがかなり上昇するので近衛隊の正面撃破もそう難しくない。

ただ主人公に迷宮の踏破をさせると、狂人度が上がって後で狂人度が高いと登用できない武将と文官が増えるのである。

狂人度というのは『アルガリータ戦記』にあるシステムの一つで、主人公が凡人の線を超えて何かをやらかすたびに増える。住民を虐殺するとかね。

そうすると名君しか好きになれない系の武将とか文官が登用できない。その代わりに何かしらの強みを手に入れることはできるけれども。

狂人度はあまり上がらない初心者向けの主人公もいる。それがアウリーナ。理性的な判断を優先するのでそもそも選択肢として住民を虐殺するとかが出ないのだ。

しかし、まあ。彼女は豊かで経済的に発展した港町出身なのもあって、借金を回して傭兵を雇用できるんだけど、これを返済できないと一つのターンが丸々借金返済のためにたくさん働いた、という文章と共に消費されてしまうデメリットがある。

そして彼女は序盤から最強ランク一歩手前の傭兵も雇用できるんだけど、それで何とかやりくりして帝都を攻略できちゃう。

それからの借金返済のためにターンがかなり消費されるという反動はあるけど、帝都はいろいろうまいのだ。

そのうまいものの中には私ことタイグリッサ・ミッドウッドも入っている。宰相は問答無用で処刑されるけど、タイグリッサは父親に従順に従うだけの、自分を持ってない心の中が空っぽの武将である。

そう、文官ではなく武将。

彼女は実は全キャラの中で一番闇魔法レベルの才能限界値が高い。『アルガリータ戦記』魔法を含むスキルレベルは特殊なアイテムを使うか修練を命じて上げることができるが、それにも才能に限界値がある。

それもキャラごとに別々に設定されていて、例えばエリオットの場合は剣術と馬術レベルの才能限界値は50。初期レベルは12でそこまで高くはないけど最大が50なのでエリオットは作中最強の武将になれるのだ。しかし彼の錬金術の限界値はたったの6。なので彼は軍にポーションを納品できる錬金術師にはなれない。

アウリーナは当然だけど錬金術の才能限界値が50。剣術は21で平均より少し高いくらい。

タイグリッサ・ミッドウッドの闇魔法の才能限界値も50。初期値はたったの1なので使ったこともないのがわかる。

私も初期のプレイでは普通に闇魔法育てずに武将として普通に育成した。そもそも武将になる条件がちょっとあれなので手を出したのもいくつか周回をした後だったんだけど。周回ボーナスがん積み状態で初めて手に入れた彼女は、なんというか。

うん。

エロかった。

衣装はレースとフリルがたくさんついたひらひらの黒いゴスロリドレスの上に茶色のコルセットをつけており、腰まで伸ばしていた髪は切ってセミロングに。

ボリューム感のあるわがままボディは正面を描いた作画からも如実に現れる。

ゴスロリドレスはちょうど太ももの上までのサイズ、足はブーツを履いている。手首から先と絶対領域だけが艶めかしい、露出度の低い服装に彼女のポイントとなるうつろな目に腰にはレイピア。

彼女を登用する前はイベントシーンなどで繊細に刺繡された豪華なドレスを着ていた彼女が登用してからの衣装と髪型を変えてクールな雰囲気をまとったときギャップでやられたのは私だけではないはず。

それで普通に彼女を育てながら普通に運用していたんだけど、ある動画で天下平定RTAでタイグリッサ闇魔法ルートを選ぶ人が多いって聞いてから好奇心で見てみたらそれはもうすごかったのである。

闇魔法は敵にデバフ効果を与える役に立つけど地味そうに見えるけど、これがカンストすると化ける。

強力過ぎて、公式チートとまで呼ばれていた。難易度がイージーモードになってしまうと。

ただ闇魔法を50まで上げた状態で彼女に依存したプレイをすると狂人度がカンストしてまさに闇の帝国になってしまうという…。ちなみに彼女は男性キャラを主人公に選んだ場合だけ登用できるのでアウリーナは使えない。

それはなぜか。女性キャラだとコマンドに同性相手には結婚が選べないから。

皇帝を殺すと結婚できて、彼女を武将にすることも出来る。

空っぽなので、結婚して愛してあげないと自らは動かない。

まあ、普通に帝都は持ってるだけで収入があるし、皇帝を手中に収めると皇帝派の武将や文官を三顧の礼なんてすることなく簡単に手に入れられるので、帝都を序盤に攻略するのは女性キャラでも悪い選択ではない。

それで肝心の闇魔法カンストの時に手に入れるスキルの名は。



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