1980/11/6/01:14
2036年、新型コロナウイルスの解析を1975年のデビット・ボルティモア博士に依頼した俺は、その依頼した足でそのまま5年後の1980年に飛び、研究の成果を訊きに行った。
2036年でもコロナは健在である。そう、他ならぬアメリカ内戦から始め第三次世界大戦で世界の医療は崩壊したのだ。
そこで白羽の矢が立ったのが、ウイルス研究の第一人者、デビットボルティモア博士だ。
俺のいた2036年にはもう大規模なウイルス研究は行える施設がない。
ウイルスと戦争で荒廃した世界の再生にはコロナの無力化は必須だ。
コロナウイルスは致死率は高くないが変異しやすい。
そのことがワクチン開発を頓挫させた。
俺はタイムマシンのあるエリア51空軍基地内部の一室で、タイムマシンに乗り込み、タイムトラベルを敢行した。
タイムマシンの概要は明かせないが、疑似ワームホールを利用したもので、時間移動中はかなりのGに耐えなければならない。
1980年にたどり着いたというアナウンスを聞き、外部カメラで周囲を確認した俺はタイムマシンの扉を開けて、外に出た。
「やあ、タイター。また会えたね」
1980年のタイムマシン管理員、マイク・ウェールズがコーヒーを淹れている最中だった。
「よう、マイク。コーヒータイムかい?」
「君が来るのを待ってたよ。デビット博士もまっているだろう。君も一杯どうだい?」
「いただこうか」
俺がそう答えるとマイクはコーヒーをもう一つ作り、僕のためにパイプ椅子を出し、座るように促した。
そこにCIA、正確にはECIAのエージェント、ウイリアム・バーンズが入ってきた。
「五年前の報告書どおりですね。ジョン・タイター大尉」
「5年ぶりか、君にとっては。僕は残業中だがね」
「まるでジャップだ。あなたのワーカーホリックぶりは。これ、ECIAからの報告書です」
「読もう」
俺はコーヒーを片手にそれをつぶさに読んだ。
俺、というより未来のアメリカ帝国皇帝ヘンリー・オズワルドが依頼したアンプルの作成の報告書と量産状況、他には難解な化学式などが書かれている。
「カルフォルニアにはいつ?」
「今日、と言いたいが、何時だ? このアメリカは」
「1980年、11月6日の深夜1時です」
「午後3時にセットしたんだがな、11月5日の」
セットした時間に到着していないということは、それだけ世界線がまたズレたということだ。
「アンプルの回収は明日にしよう。マイク、軽くつまめるものはないか?」
「僕のディナーの残りならある」
そう言うとマイクはバーガーキングの包みを渡した。
乾ききって冷えたハンバーガーの包みを解いてかぶりつく。
これこそアメリカ、これこそハンバーガーだ。