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犬かよ  作者: oz
54/62

「あ」

 騎士は、こちらに近付くにつれてだんだんスピードを落とし、手前5m程度で停止した。


 「私は、騎士団長アルド·ワーグナー! 旅の者とお見受けする!」


 声でけぇ。てか、旅の者に抜剣して近付いてくんな。追手と勘違いしたじゃねえか。剣しまえや。


 「そうだ。なにようだ?」


 声ちっさ。ダリの声小っさ。


 「その犬! 背負った毛皮! エスト村でグレーベアーを狩った旅の者だな!?」


 「そうだ」


 「武器はどこだ!?」


 「なんのだ?」


 「グレーベアーを狩った時のだ!」


 「グレーベアーは罠でこr「否!!!」


 「グレーベアーの致命傷は首への後方からの剣による刺傷!騎士に隠し事は重罪になる!!言え!!!」




……あれ、これ詰んでね? 


 グレーベアーは討伐証と毛皮を採った後、俺が掘った穴に死骸をダリに投げ込んで埋めて貰った。


 恐らく、騎士団の奴らは司法解剖したのだろう。



 で、戦闘か、逃走か。 ………逃走だな。


 「ダリ。近くの森に逃げるぞ。」


 人間と戦うのは避けたい。




 「早く言「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」




 団長の声を何かの断末魔のようなものでかき消した。発生源は近くの森の方。



 「団長!団長!」

 

 「なんだ?」


 騎士団長が腰にあるアイテムポーチから小さな水晶を取り出し、それに向かって応答する。視線は俺らから離れない。


「魔猿帝です!森に魔猿帝が あ、あ、うわああああああああ!」


通信が切れるとほぼ同時に、森で土煙と爆音が上がり地響きが起きる。


 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」


 恐らく、マエンテイなるものの鳴き声だろう。


 危かった。このまま森に逃げていたら、挟撃にあっていた。この団長、ちゃんと追手してたわ。


 「副長、指揮権を一時、譲渡する。部隊を立て直し、魔猿帝を討伐してこい。俺は、こいつを始末してから行く。」


 「了解。」

 副長が8人を率いて森へ向かって行く。


 それを確認した団長が剣を鞘にしまった。

 「まぁ、少し話そう。」


 意味が分からなかった。 が、話し合いに応じようとした。











「あ」













 完全に知覚外からきた。ぐちゃぐちゃで、上から、血塗れの、空から、死体ガ、オレノ、メノマ……。














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