「あ」
騎士は、こちらに近付くにつれてだんだんスピードを落とし、手前5m程度で停止した。
「私は、騎士団長アルド·ワーグナー! 旅の者とお見受けする!」
声でけぇ。てか、旅の者に抜剣して近付いてくんな。追手と勘違いしたじゃねえか。剣しまえや。
「そうだ。なにようだ?」
声ちっさ。ダリの声小っさ。
「その犬! 背負った毛皮! エスト村でグレーベアーを狩った旅の者だな!?」
「そうだ」
「武器はどこだ!?」
「なんのだ?」
「グレーベアーを狩った時のだ!」
「グレーベアーは罠でこr「否!!!」
「グレーベアーの致命傷は首への後方からの剣による刺傷!騎士に隠し事は重罪になる!!言え!!!」
……あれ、これ詰んでね?
グレーベアーは討伐証と毛皮を採った後、俺が掘った穴に死骸をダリに投げ込んで埋めて貰った。
恐らく、騎士団の奴らは司法解剖したのだろう。
で、戦闘か、逃走か。 ………逃走だな。
「ダリ。近くの森に逃げるぞ。」
人間と戦うのは避けたい。
「早く言「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
団長の声を何かの断末魔のようなものでかき消した。発生源は近くの森の方。
「団長!団長!」
「なんだ?」
騎士団長が腰にあるアイテムポーチから小さな水晶を取り出し、それに向かって応答する。視線は俺らから離れない。
「魔猿帝です!森に魔猿帝が あ、あ、うわああああああああ!」
通信が切れるとほぼ同時に、森で土煙と爆音が上がり地響きが起きる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
恐らく、マエンテイなるものの鳴き声だろう。
危かった。このまま森に逃げていたら、挟撃にあっていた。この団長、ちゃんと追手してたわ。
「副長、指揮権を一時、譲渡する。部隊を立て直し、魔猿帝を討伐してこい。俺は、こいつを始末してから行く。」
「了解。」
副長が8人を率いて森へ向かって行く。
それを確認した団長が剣を鞘にしまった。
「まぁ、少し話そう。」
意味が分からなかった。 が、話し合いに応じようとした。
「あ」
完全に知覚外からきた。ぐちゃぐちゃで、上から、血塗れの、空から、死体ガ、オレノ、メノマ……。




