進路変更
あれから、2週間。
おい、誰だよ人形に話しても良いって言ったの。起きた直後から寝る直前まで話してるぞ。
俺は景色に精神を少しでも逃がすことで事なきを得ているが、なぜダリと禍剣さんは大丈夫なんだ?特殊な訓練でも受けているのか?
「すごいだろ!?」
「!……あ、ああ。そうだな」
この突然同意を求めることで、相手の精神を逃がさないというテクニックまで使ってきやがる。
「ところで、今は全体のどれぐらいを話したんだ?」
「1/3だ」
「おう、そうか」
「続けるぞ」
また喋りだした。あと4週間とか王都についても続けるつもりかよ。旅は順調だから、あと2日ぐらいでつくんだぞ。これは、何としても止めねば。
「な、なぁ。話の途中で申し訳ないんだが、もう少しで王都に着くだろ?それで、王都について聞きたいことがあるんだが良いか?」
「ん?良いぞ」
このチャンスを俺は逃がさない。一方的に話を聞くだけというのは苦痛だが、キャッチボールが成立してるのなら幾分か、いや、惚気を聞かなくて良いだけにかなり状況は良くなる。質問を絶やすな。
「王都で有名な物ってなんだ?」
ここから話を広げる。答えたことに対し、さらに質問を展開することで、会話を絶やさない。
「うーん、一番を上げるなら「勇者」だな!」
「……勇者生誕の地か?」
あれ、なんか、忘れていることがある気がする。
「ああ、そうだ。勇者討伐しに行くみたいで、当時のドキドキが蘇るな!なははは!」
「ダリ。勇者は国王になったりしたか?」
「ああ。魔王討伐後にローデンズヘルトの姫と結婚して国王になった」
「そうか。じゃあ、その国行くの中止で」
「「「え?」」」
はい。全員分のえ?頂きました。ありがとうございます。
行ったら絶対ばれるよ。完璧に忘れてた。もう会うこと無いわ。サヨナラ。って記憶のゴミ箱に入れるの早すぎたわ。ゴミ箱ひっくり返すはめになったわ。
「すまない。恐らく、その国に知り合いがいてな。もし、会ったらもろもろばれる上に最悪その場で両断される」
「とんでもない奴と知り合いだな!なははは!」
「その知り合いってのが勇者だ」
「「「は?」」」
うん、反応は理解できる。
「確か、勇者が自分でローデンなんてらの王女だか何とか言ってたような気がする」
「なははは!勇者に顔を覚えられてる程度、わしの能力でどうとでもなるわ!大丈夫だ!」
「勇者はそれで問題ないと思うんだが、もう2人危ない奴がいる。そいつらは恐らく変身していても見破ってくる可能性がある」
「じゃあ、どうする?」
「別の町へ行く。ダリ、ここから別の大きめの町へはどれくらいだ?」
「4週間だ。」
マジか。
俺らについての情報収集がしたいから、一度王都まで行き、ダリに外で隠れてもらって俺だけ入って短時間で帰ってくるという手もある。それとも、危険行動を止めてそのまま次の町へ向かうか。2択だ。
「……すまないが、次の町へ行こう。危険すぎる」
「なははは!安心せい!わしが退屈しないように話してやるわ!」
どうあがいても、茨の道らしい。
「ダリや剣は良いのか?」
「ああ。レーベの話しは聞いていて飽きない。」
「主が、行くところに行く。」
人形、レーベって名前だったのか。
「じゃあ、進路変k……」
後方から、馬の足音。数は10。馬や乗員の服装から騎士だ。
先頭の騎士がこちら視認すると後ろに合図を送る。同時に、騎士たちは抜剣した。
追手だ。




