宿屋(馬小屋)
日が沈むと同時に宿がある村に着いた。
宿は他の家屋よりも大きく、看板も出ていたためすぐに見つかった。
ダリは宿屋へ、俺は馬小屋に。この世界の犬は外が基本らしい。宿屋に俺が入ったら床が抜けるのは目に見てるからいいけど。別にいいけど。
チクショウ。料理の臭いがする。腹は減ってないが、料理が恋しい。
馬小屋に入ると1頭だけ馬がいた。目が6つある。この世界標準らしい。ずっとこちらを見ている。ためしに念話を仕掛けてみるが特に反応無し。
村を軽く散策したが特に気になったこともない。村に入る前に森の中で1日一回の変身をしてきたため、特にやることはない。寝るだけだ。
藁の臭いに包まれて寝ようとしたとき、人形が話しかけてきた。
「お前さん、ちょっと聞いても良いか?」
「どうした?」
「お前さん、異世界人かと聞いたら、そうだ。と答えたな。なぜ犬になったんだ?」
「私も少し、気になってた。」
禍剣さんも入ってきた。
「さぁ?気がついたらこのなりだ。こっちが聞きたい。人間を犬にする呪いとかあるのか?」
「ある。が、お前さんはその類いではない。呪いだったらわしがすぐに分かる」
この世界恐いわ。呪いとか冗談で言ったけどあるのかよ。まぁ、異世界だしあるか。
「勇者たちの話を聞くと、多分人間のままこの世界に来てるよな」
「そうだな。奴らは神の啓示によってこの世界に呼ばれたらしい」
なにそれ。神とかヤバすぎる。超常の存在じゃん。まぁ、異世界だと当たり前か。
「てことは、その神に聞けば何で犬になったのか分かりそうだな」
「なははは!お前さんが神と話せるだけ徳を積んでるとは思えんがな!」
「そうだな。どちらかと言うと邪神が悪い話を持ち掛けて来そうだ」
「違いない!なははは!」
「そう、ですね。主が積み上げてるのは屍ですから。」
実際にそうだし、禍剣さんが言うの恐すぎる。
マジで来そうだからやめて欲しい。
「お前さんは、わしらに何か聞きたいことは無いのか?」
「特に無いが、出てきたら……、そういえば、王都に行ったら教会の奴らに気を付けなきゃいけないんだろ?どの程度気を付ければ良いんだ?」
「かなり前の事しか分からんが、奴らは異端だと感じる物全てを異端だと騒ぎ立てるんだ。町の住民はうんざりしていたが、上級神官ほど直感は本物だ」
宗教か。地球にいた頃は神が実在していたら世界は既に滅茶苦茶になってるだろうから存在しないと考えていたが、この世界では実在するらしい。しかも、実在するなら信仰の対象を見失ったりすることもない。勇者が啓示を受けて魔王討伐を果たしたのなら勢力はさらに拡大していると考えられるため、信徒はそこらじゅうにいると考えて良いだろう。神官ぽい奴がいたら要注意ということだ。
「わかった。聞きたいことは以上だ。」
「そうか?わしのような奴とダリの関係気にならんのか?」
「王都への道中に聞くよ。今日はもう眠い」
「そうか、じゃあ明日聞かせてやろう!」
「ああ、おやすみ」
絶対に聞きたくない。その話題話して1日で終わるのか?
まぁ、ラジオ感覚で聞いてやろう。どうせ歩くだけだ。




