依頼受注
エスト村についた。
家の数はざっと十数軒。人口30人程度。農村だ。
明らかなよそ者ゆえに、村人の視線が痛い。
「依頼はどこから受けるんだ?」
「町だと掲示板だが、こういった小さな村では村長から依頼を受けられる。」
ダリはすぐ近くの村人A、おばちゃんに話しかけに行った。
「人形、通訳してくれ。」
「人形ってわしか?」
「そうだ。名前があるのか?」
「はぁ~、まぁ、好きに読んでくれ。」
ダリが近付くとあからさまにおばちゃんは嫌悪感を表した。
「この村にゃ、宿屋はないよ。隣村にならあるからそっちに行きな。」
「すまない。ローデンズヘルトに入国するには幾らかお金が必要だと聞いた。村長から依頼を受けたいのだが村長はどちらに?」
「あんた、冒険者かい?村長の家は向こうだよ!」
めんどくさそうに指を指した。他の家よりちょっとだけ大きい。…気がする。
「ありがとう。」
田舎は排他的なイメージが強いが、ここはその典型だ。
「話は聴いていた。行こう。」
戻ってきたダリにそう伝えると、そうか。と短く答え、村長の家に歩いていった。
「人形、分かりやすくて頼もしい。これからも頼む。」
「そうか?なはは!任しておけ!」
これまで言語の壁にストレスを感じていたが、それが遂に解放された。大きな一歩だ。ちなみに人形が結構ちょろいと思ったのは秘密だ。
少し遅れて村長の家に付くと既にダリは村長と外家に前で話していた。
「村長、受けられる依頼はないか?」
「えーと、何だっけな~?かなり前から、何かが出て住民に森に行かないようと言っとったけど、な~んだっけな~。」
村長は杖を付き、曲がった腰に片手をあて、もう片方の手を顎にあて首を傾げていた。何か、期待できそうにないな。
「じいちゃん、グレーベアーだよ。」
奥から、少年が家から出てきて村長の代わりに答えを出した。
年は、14、5才とみた。
「おお、バート。そうじゃ、そうじゃ。グレーベアーじゃ。もし、討伐してくれるなら銀貨4枚じゃ。どうだ?」
「グレーベアーは中級、Eランク相当の依頼だ。銀貨100は最低だ。」
この村長、めちゃくちゃ吹っ掛けてるな。
俺だったら、そんなことは知らずに依頼を受けてたな。
「この村にそんな金はない! よって、銀貨4枚じゃ。」
頑なだな。これは、こちらから提案するべきだな。
俺はダリのすぐ足元まで来るとダリに話しかけた。
「ダリ、ついでに幾らか肉を取って来てやるから買い取れと伝えろ。」
「なぜだ?」
「かなり前からグレーベアーが出て森に入れていない。つまり、狩りができていない。と言うことだ。住民や、目の前にいる少年も痩せている奴ばっかりだ。グレーベアーの討伐じゃ腹は膨れん。住民にとってはそちらの方が利益になる。」
犬生史上、最速でしゃべった。
「どうする?この村からの依頼はこれだけじゃぞ。」
魔法範囲はかなり絞っている。村長には聞こえていないため、村長はダリが迷っていると思ったのだろう。
「ついでに肉を取って来ると言ったら幾らで買い取って貰えるんだ?」
「ほう、…………1kg銅貨400枚でどうじゃ?」
「ああ、それで良い。」
「ただし、買い取るのはグレーベアーの討伐が条件じゃ。」
「わかった。」
依頼受注完了。欲を言えば交渉なんてせずに、さっさと受けたかった。この世界ではこれがデフォルトなのかもしれない。交渉は俺の不得意な分野だ。




