出会い2
近付いてきた兵士の一人に対し、女は懐からナイフを取り出し兵士の首に突き立てようとする。
しかし、兵士の一人に振り下ろす前に手首を捕まれもう一人の兵士からみぞおちに一発をもらいナイフを地面に落とされる。
「がっ」
女は短く空気を吐き出し、膝をついた。
少女も捕まり、取り押さえられている。
そして、兵士は女の髪をつかんで顔を上げさせ、何かを言い聞かせるように言った。
すると、女の反抗的な顔が絶望に染まった。
そしてみっともなく何かを叫び、何かを懇願した。
少女も何をされるのか理解したのだろう。抵抗するが、男の力にかなうわけもなかった。
当の俺はほくそえんでいた。
待っていた。恩を押し売りするのに完璧な状況だ。
俺は草むらから、大量に獲物を食べ成長した大型犬よりも巨体になった姿を露にする。
そして、女を捕えていた男の首を折り、体を兵士の一人に投げつける。
兵士は亡骸と一緒に吹き飛ばされる。
他の人間は一切状況を飲み込めていない。
一人に体当たりをかます。その瞬間兵士の剣を口で抜いた。
兵士はかなりの勢いで吹き飛ばされ木に衝突し動かなくなった。
そして回転を生かし剣を少女を捕まえている兵士に投擲。
反応できなかった兵士は首を撥ね飛ばされ、立ったまま絶命。
最後に死体と一緒に吹き飛ばされた兵士の元に行き、ようやく視認した、俺の姿と仲間の死体を見てパニックに陥る。
俺は容赦なく首を折った。
後で食べよう。
さて、残るは女と少女だ。
どちらも呆然として動かない。
それは、そうだろう。3秒間の出来事なのだから。
先に、気がついたのは女の方だった。
近くに落ちていたナイフを拾うと、少女に駆け寄り
俺の方に手を向け何かを呟きはじめた。すると、0.5秒ほどで魔方陣ぽいものが形成され、その後1秒で迸る雷撃が俺に向かって放たれた。
俺はビックリしたが、魔方陣が浮かび上がった時点で何かをしてくるのは分かったので、難なく避けることができた。
どうやら、俺自身ではなく俺の足元を狙ったようだ。激しい雷撃音、衝突音と共に土煙があがりしばらく視界が遮られた。
しばらく耳が使い物にならなくなったが、しばらくすると元に戻った。
そして、土煙が晴れると女と少女の姿は消えていた。
まあ、想定通り、完璧だ。
今の俺は兵士よりも下卑た笑いをしていただろう。