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おかしいだろ。
ファンタジーってもんじゃ収まらんぞ。
どうやったら、人形とトカゲ人間が夫婦関係になるんだ?
いや、突っ込むのは止めておこう。聞きたくない。絶対にアホほど長い話を惚気ながら聞かせられるに決まってる。絶対に聞きたくない。
「夫婦ってことか?なら、俺に取り込ませて良かったのか?人形の中でなら二人っきりで静かに過ごせたんじゃないか?」
「ああ、だが消されてしまっては意味が無いだろう?」
「話が見えん。」
「追手が来ると言うことだ。」
「姿は見られていないぞ。」
「お前さんはアホか?映写水晶ぐらい300年前からあったぞ?」
監視カメラあるのかよ。
人間いないと思って禍剣使ってしまったぞ。どうしてくれるんだ。てか、穴もそのままだな。
俺、魔王軍関係者で指名手配じゃん。間違ってないけど。
ほとぼりが収まるまで森の奥地に隠れるのが無難だな。
…いや待て、木を隠すなら森だ。変化の約4秒を1日1回しのげば、町にいる方が人間の動向も探れて一石二鳥だ。それで行こう。
「町に行くぞ。」
「お前さん、話を聞いていたか?」
「トカゲ人間「ダリだ。」………ダリを人間に変えて、それのペットとして町に潜伏する。俺らを、魔王側を探知する能力とかないよな?」
急にイケメンボイスで割り込んでくるの止めて欲しい。
「無い。とも言いきれぬ。教会の奴らに気をつけさえすればその案も悪くは無い。だが、お前さんの変化は1日で切れるがどうするのだ?」
「一度町を出て、隠れて再度変身を行う。普通の犬だったら出入りしようが誰の記憶にも残らないだろう。一番近い、出来れば大きい町はどこだ?」
トカゲ人間、ダリが端的に答える。
「ローデンズヘルトだ。」
「でかいのか?」
「この大陸では1番だ。」
「そこまで大きな町ならわざわざ外に出る必要も無くなるかもな。さっさと向かおう。どれぐらいかかる?」
「馬車で1週間、徒歩で3週間だ。」
「目立たないように俺は常にこの姿を維持する。移動は徒歩だ。何か他に意見がある奴は?」
「主の意のままに。」
「わしは無い。」
「無い。」
新しい場所に向かうのは心が浮わつく。
だが、何か忘れている気がする。まぁ、3週間もあるんだ。そのうち思い出すだろう。




