はよ、来い。
冷静に考えれば、人形しゃべってるから禍剣さんもしゃべるのも充分可能性はある。俺の想像力不足だ。
人形がとにかく興味津々だ。
「早速だが、魔王に会ったことはあるか?」
「無い。そちらは?」
「わしもだ。指令はどうやって受けていた?」
「最初から私の中にひとつだけ。国を滅ぼせ。」
「おお、わしは勇者を殺せ。だったぞ!ちなみに成果はどうだった?」
「5個。」
「おお、やるなぁ。わしは最初で最後だったからな。 なははははは!」
誰も突っ込まないの?
国を5つ滅ぼしたってさらっと言いやがりましたよ。
あれ、俺が異常なんですかね。この空間では俺だけ異常なんですかね。
「して、「主」とは?」
「居心地が良さそうだったから勝手に入った。私を上手に使ってくれるから。」
「ほぉ。」
「………。」
「………。」
なんですかね。何で黙るんですかね。
「わしも入れそうか?」
「大丈夫。多分。」
俺の体ですけど?あと、多分てやめてくれません?感覚的にいけますけど。取り込むつもりだったけど、俺の体なんですけど!
一つ察しが付くのは禍剣が「出して」と言ったことだ。
恐らく、取り込めば俺の支配下に置くことができる。
「行くところ無いから入れてくれんか?人形以外で入れるのお前さんだけなんだ。」
「トカゲ人間は?」
「恐らく自我が消える。」
「嘘だな。剣が取り付いていた奴は自我が戻っていた。」
「それ、違う。私が入っていたのは魔剣の方。人間は魔剣に操られていただけ。私は魔剣に力を貸しただけ。」
「…あの魔剣はどんな物で、あそこでお前は何をしていたんだ?」
「あの魔剣は1人に代償を支払わせる変わりに、魔剣を持つ者を感情を持たない殺戮を繰り返すモンスターにさせる。私は魔剣に枷をかけてその切り替えを私の一存でできるようにした。そして、戦争が起きる度に枷を緩めて私の能力を併用させて、皆殺しにしてきた。国ごと。あそこでは寝てた。」
えげつないな。
「寝てたとは?」
「魔王がいなくなったのが分かった。だから、私は命令を聞く必要は無くなった。でも、私が存在する理由は国を滅ぼすため。だから、最後に魔剣に取り付かれている所有者の国を滅ぼした。そして、魔剣に任せてそこで眠ってた。もう覚めることなんて無いと思ってたら主が来て噛まれて起きた。」
禍剣さん、寝てなかったら俺、もしかして八つ裂きにされてた?怖すぎる。
「そうか。話が逸れてすまなかったな。話を戻す。お前はどんな能力を持っているんだ?」
「わしの能力はさっきも話したと思うが変化だ。自在に何にでもなれるし、対象に触れてさえいればその対象も変身させることができる。ただし、重さは変わらない。」
これは、来たのではないのか?今一番欲しい能力じゃないか?てか、魔王幹部チート過ぎるやろ。それを倒した勇者たちはマジで超人だな。
「人間になれるか?」
「ああ、も「採用。」
「うぇ?」
「早く来い。」
「お前さん、そんなに人間になりたいのか?」
「当たり前だろ早くしろ。」
「まだ、細かい説明「後で聞いてやる。」
「………。」
「来るなら来い!」
「さっきまでの疑いはどこへ行ったのやら。」
人形のその言葉が最後だった。人形から出てきたのは禍剣の時とは違い、白い霧だった。そして、俺のことを包み込んだ。
……………
………
……
懐かしい匂い。
入ってくる感覚。
知ってる感覚。
足りてない。けどあと少し?




