炎上中
脱出は、簡単だった。
誰もいなかった。門をぶち壊すのも簡単だった。
町は大惨事で、遠く離れたこの丘でも炎の明るさで町の方向が良く分かる。
ここでいいだろう。
俺は口に咥えたトカゲ人間を落とす。
どちゃっ、といってトカゲ人間が落ちる。
すまん。涎まみれにしてしまった。
「Gdgujhg※@?」
トカゲ人間は、すぐさま起き上がるとキョロキョロし、俺に何かを言ってきた。
いや、分からん。
とにかく、こいつには俺が強化できる可能性を持つ何かを知っているはずだ。
何とかお互いに意志疎通をとって聞き出さねば。
どうしようか考えていると、トカゲ人間が町の方向へいきなり走り出した。
俺は慌ててトカゲ人間の前に出て止める。
怒ったように何かを言うがやはり分からん。
家族でも残してきたか?
俺は闘技場のすべて回って檻を壊した訳ではない。
残念だが、あの大火事では生き残りなどいないだろう。
要塞の中だったら、ほとんどが石で建物ができていたから燃えずに残っているかもしれないが、生きている可能性は低いだろう。
というわけでお前が戻っても意味は無いし、行ったところで人間にやられるだけだ。
すると、腕を出して腕時計のようなものを見せてきた。
続いて町の方を指差し、いかにも町行かなければということを主張してくる。
良く見てみると、時計のように文字はかかれておらず、針のような物しかついていない。
その針は、町の方を示している。
そして、注意深く匂いを嗅ぐと懐かしい感じはトカゲ人間ではなく、その腕についている物からすることが分かった。
ゴツい手錠を壊した時に懐かしい感じが強まった理由が理解できた。
つまりだ。
え、戻るの?
これ、戻んなきゃいけなんじゃない?
俺の強化案件、現在進行形で燃えてるの?
は?
待て、落ち着け。
あの大火事に突っ込んで行けば焼け死ぬだけだ。
人間の存在を舐めてもいけない。
いや、しかし、要塞内であれば燃えていない可能性はまだある。トカゲ人間をつれていけば、正確な位置が分かるからパッと行ってパッと帰ってくれば良いんじゃないのか?
俺の足なら余裕のはずだ。
それと、あれだけの火事だ。人間は避難しているはずだし、俺が通ってきたところは誰もいなかったから、そこから侵入すれば人間と接触はしないはずだ。
行くだけ行ってみる価値はありそうだ。
ふと気がつくと既にトカゲ人間は町に向かって走って向かっていた。
俺はトカゲ人間に追いつき、咥えて空中に放り投げ、背中に乗せると町に向かって疾走した。




