要塞
町並みはまさにファンタジー。中世ヨーロッパって感じだ。
やはり、科学的な面では発展はしていなさそうだ。
町の人はほとんどが人間であるが中には獣人や魚人っぽいのもいる。これはそれぞれの種族の国とかありそうだ。
こちらはこちらで観察していたが、町ゆく人たちも俺のことを見てきた。
それはそうだ。こんなにデカイ犬が檻に入って運んでこられたら目立つし珍しいだろう。
大きな通りを進んでいくとデカイ建物が見えてきた。
だんだん、嫌な匂いがしてきた。いや、殺しに来ず、捕獲という点だけでもう俺にとって良いことは起こらないことは、明確であった。
どのタイミングで脱走を図ろうか。やはり、夜が良いだろうか。
脱走のタイミングを考えている間に俺を入れた檻はデカイ建物に入って行った。
入って見るとデカイ建物だと思っていたがこれはいわゆる要塞と言っても過言ではない気がする。
まず外から見えていたのは壁の外壁で壁面に内側に向けて大砲のような物が何門も設置されている。
中の敷地にはにいくつかの建物が存在していた。気がついたことは明らかに要塞の外の町と内側の建物のたてられた目的と年代が違うということだ。
ざっくり簡単に説明すると、外側の町は新品華やか住み心地優先、内側の建物は古い無骨壊れない重視という感じだ。
大体どんな場所に運ばれるのかは予想はついた。
一際大きな建物が4つあったがそのうちの一つの建物に俺の檻を引いて馬牛たちは入って行った。
………
……
…
はい。闘技場でした。
オークションで売られると思っていました。
俺の他に傷だらけの滾ったモンスターが沢山いる。うるさいし臭い。
檻に体当たりしているモンスターもいるが檻に触れるたびに結界のようなものが輝いている。
多分俺がつれてこられたここはヘビー級の分類だと思われる。ここに来る前に幾つもの檻を目にしたが、他はコボルトやゴブリン、オークなど3mは越えない奴らばかりだったがここにいるのは俺と同じで10mを余裕で越える大きさだ。
しかし、数は少ない。俺を含めて4匹だ。
一匹目は亀だ。ワニ亀に近い形をしている。動かない。
二匹目は猿だ。手足が長く、風貌はオランウータンににている。座って動かない。
三匹目は猪だ。体当たりしてガッシャガシャやって血が出てる。うるさい。
で、四匹目が俺。犬。ただし10m以上。
寂しい動物園かよ。
しかし、猪がうるさすぎる。体当たりするたびに結界が光り輝き猪の体を傷つけている。
多分、俺の檻にもあるのだろう。恐らく電気柵のようなものだろう。
死に至ることは無さそうだが、ものは試しだ。
でも、やっぱり怖いから、禍々しい剣、名前が長いから禍剣で最初に触ってみようと思う。
誰もいないのを確認してからすこしずつ禍剣を近づける。
「そういえば、生命体にしか反応しないんじゃね?」とふとよぎった瞬間
バキンッ サラサラサラ
割れた。 結界が。
「ざるやん。」
鉄に触れることが出来たので触ってみると、太さの割に案外曲げることができそうだ。
「俺をただのモンスターと思ったのが間違いだったな。愚かな人間よ。フハハハ。」
優越感が半端じゃない。もう、人間じゃないので言いたい放題だ。最高。
脱出しようと檻の隙間を広げようとした瞬間だった。
「~~~~~~~~~」
話し声が聞こえた。
ヤバイ!見られたか?
キョロキョロして人間の姿を探すが、人影は見えない。
ハッキリと人間の話す声が聞こえたが犬の聴力のせいか?
「~~~~~~~」
もう一度聞こえた。次は、方向がわかる。猿のモンスターの方からだ。
普通なら「キャァァァ、シャベッタッァァァァ。」となるところだが。何分、ここの言語が理解できない。音的にはアムディアやフェリスが話していた音に似ている。
いつの間にか、体当たりの音もしなくなっていた。この部屋の全員が俺を見ている。
怖いんだが。
「~~~~~~」
もう一度、猿が話しかけてくる。
俺は分かりやすく首をかしげる。
次に猿は檻を指差し始めた。
ようやく理解した。「この結界壊してくれ。」って言っているのか。
俺は首をふる。すると、猿は檻の地面をおもいきり手で叩きつけ怒りを露にし、また、なにやら必死に話し出した。
何言ってるのか分からんかったけど。
言ってることが全く伝わってないと気づくと猿はうなだれてまた座って動かなくなった。
猪はその猿の姿を見てまた体当たりを再開した。
亀は首を引っ込めてしまった。
こいつら、何らかの知性を持ち合わせているのか?
普通獣は人間が話すことはないし、反応なんてしない。なんか、鳴き声発してるぐらいにしか感じてないはずだ。
俺、一人で逃げようとしたが、これは使えそうだ。
人間のもつスキルという不安定要素が分散しそうだ。まあ、今の俺はドラゴンにも負ける気はしないが。
決まりだ。こいつらも出そう。
禍剣を出してそれぞれの結界を破壊しようとすると、檻が動き出した。
誰もいないのに動いている。
大量の人の気配が近づいてくる。
「これは、出番じゃね?」
闘技場初出場。




