決着?
禍々しい何かを纏った鎧は剣を振りかぶるとその場で、剣を振った。
すると、禍々しい色の斬撃のようなものが飛んできた。
避けると、そのまま飛んでいき、壁に当たり、霧散して行った。
当たった時に音がしなかった事から、斬撃に威力は無さそうだが、色的に状態異常か何かを引き起こしそうだ。
攻撃手段として使ってる事から、当たって良いことは無さそうだ。
一呼吸置いて、鎧は斬撃を連続で放ってきた。
かなり正確に。
そこそこ早いが、難なく避ける。
鎧は斬撃を放ち続ける。
避け続けていると、この鎧がただのポンコツなのではないかと、思えて来てしまった。
斬撃を放って来るのは良いが、先読みした攻撃が、一切来ない。
そこにいるから、そこに斬撃を放つ。ただそれだけ。
そう思わせておいて、油断をさせようとしてるのか、ただポンコツなのか顔が見えないため分からない。
だが、壁を突破する方法は思い付いた。
そろそろ、終わらせようと思う。
単調な攻撃をかいくぐり、鎧の剣の攻撃範囲まで接近すると、案の定、鎧は剣を振りかぶり、振り下ろしてきた。
最小限の動きで避け、口で振り下ろされた剣を咥え、前足で鎧の背中を踏み潰し地面に押し付け、腕を引きちぎる勢いで剣を引っ張った。
すると、思ったより簡単に剣は鎧の手から離れ、奪い取ることができた。
すぐに鎧のもとから離れるが、鎧は動き出す素振りを見せなかった。
予想通り、剣が本体だったようだ。
後は、この剣を壁に思い切りぶつけて、どっちかが壊れることで脱出できるはずだ。
壁に向かいながら、「自分が人間だったらなす術なく死んでたなー。」などと思っていると、いきなり剣から禍々しい何かが吹き出し、全身を包み出した。
ヤバいと思い、剣を放り投げるが何かは体に纏わりつき、離れない。
地面を転げ周り、何とか落とそうとするが落ちる気配がない。
オワタ。と思い、諦めモードに入り力を抜くと、視界すらも禍々しい何かで、包まれた。
………
……
…
何かが入って来るような感覚があった。
全身に。
染み渡るように。
不思議な感覚があった。
知ってるような、懐かしいような。
けど、何か足りない。
………
……
…
気が付くと、夜が明けかけ、夜の空に日の光が混ざっていた。
寝ていたようだ。
……気絶の方が正しいかもしれない。
何か、体調に、体に異常はないか確かめたがこれといったものはない。
結局、何だったのかは分からないが、悪い物では無かったようだ。
起き上がり、周囲を見渡すとスケルトンがいた。
何をやってるのか近付いて見てみると、足元には鎧があった。
スケルトンは、おもむろに膝をつき、うつ伏せの鎧を仰向けに寝かせると、しばらくその鎧を見ていた。
そして、鎧の手を握り、動かなくなってしまった。
「お前にとって大事な人だったのか?」
スケルトンは微塵も動く気配を見せなかった。
わふわふ言ってるだけで、なにを言ってるか分からないと思うが何かアクションを起こして欲しかった。
もう、スケルトンはこの場を離れない気がした。そして、同時に俺はこの場所にいるべきではないと感じた。
この廃墟の町は一通り探索できた。中々趣のある廃墟だった。そして、祈りを捧げるスケルトンがいた。
今、この瞬間、初めてこの世界に来て良かったと感じたかもしれない。
朝日が差し込み、周囲を照らす。
俺はこの町を出ることにした。




