壁
巡回を終えたスケルトンはまた木を背に座り、動かなくなった。
日は沈みかけており、周囲を赤く照らしている。
俺は早速鎧のところへ向かうことにした。
………
……
…
鎧は相変わらず同じ格好、同じ姿勢でそこにあった。
日は沈み周囲は藍色になってきた心なしか急激に温度が下がった気がする。
用事を済ませ、さっさと引き返すのが好ましいだろう。
というわけで、投石開始。
人間のように手を使って投げることができず、石を口に咥え投石する形になるのだが、やはり難しい。
距離はおよそ20mだ。
もう少し近付きたいが何かあった時に確実に逃げられる距離が欲しいため、この距離にしている。
全く当たらないため、無心で拾っては放ってを繰り返しているとついに一つだけ当てることに成功した。
ガンという音が短く響いた。
それだけだった。
が、それを確認すると俺は全力で離脱を図った。
俺が投げていたのは人間の頭より少し大きい位の瓦礫だ。感覚的に20kgはあった。
それを放物線を描くように投げていたのだからそこそこの威力はある。
それが当たったにも関わらず、鎧は姿勢を崩すことはなかった。
それと、音だ。
これも感覚的な問題だが瓦礫が当たったときに出た音だが鎧の中に何かが入っている感じがした。
何も入っていなければもうちょっと響く。
後は、ただならぬ気配だ。吹き出したという表現で相違がない。
っっっ!
俺はブレーキを掛けた。
次の瞬間、空から勢いよく剣が進行方向を塞ぐように降ってきた。地面に突き刺さると、またとなりに剣が降ってきてどんどん壁を形成していった。
振り向くと、鎧は禍々しい剣を片手に浮いていた。
剣の壁は鎧を中心に展開されている。
俺の頭をよぎったのは、一騎討ちの闘技場だ。




